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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『銀の匙 Silver Spoon』[日本公開:2014年3月7日]

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●Introduction
 週刊少年サンデーで連載され人気を博しテレビアニメ化もされた荒川弘のコミックを、『麦子さんと』などの吉田恵輔監督が実写映画化した青春ドラマ。北海道の農業高校に入学した主人公が、酪農実習や部活に苦悩しながらも仲間たちと絆を深め、農業をめぐる理想と現実のはざまで葛藤しつつ命の大切さを学んでいく。主演は、アイドルグループSexy Zoneの中島健人。共演には広瀬アリス、市川知宏、黒木華、中村獅童など多彩なキャストがそろう。

 受験失敗をきっかけに、北海道の大蝦夷農業高校へ入学した八軒勇吾(中島健人)は、同級生のアキ(広瀬アリス)や駒場(市川知宏)のように明確な将来の展望を抱けない自分に違和感を抱きつつも、酪農実習や部活に奮闘していた。北海道の大自然と動物たち、そして個性豊かな仲間に囲まれ、これまで経験したことのない生活を送る中で八軒は戸惑い、悩みながらも自分の進むべき道を見つけ始めるが……。
[日本公開:2014年3月7日]

コメント(1)

 「恋愛も友情も、親との葛藤もあって、ユーモラスでウエルメードな作り。でも、薄味で食い足りない。「ふーん」と思って終わる。」という毎日新聞の映画評通り、さらりと終わる作品でした。『ばしゃ馬さんとビッグマウス』毒気のある登場人物同士のぶつかり合いを描いてきた吉田監督にしては、毒気のないところが気になります。
 もちろん主人公の八軒を原作以上に、現代の都会暮らし青年に近づけて、等身大で描いているところはいいと思うのです。でも、原作の八軒というのは「バカヤロウ、肉は正義だ!」と雄叫びをあげて、クラスメートの先頭に立っても並々と肉が盛られたスカイツリー豚丼に突進していく肉食男子の激しい一面をもった奴。もし監督が『土竜の唄』の三池監督なら、もっとゴツゴツした肉食男子ぶりが強調されたことでしょう。何となく、草食男子でなよなよしている八軒の都会っ子ぶりのほうが強調されてしまいました。

 もう一点気になることは、家畜との向き合い方、個人農家の苦境に八軒父子の確執まで、欲張りすぎて深みがもう一つ感じられませんでした。
 主人公の成長物語に絞りながら、酪農家のやりがいや経営的な苦労、そして精魂込めて育てている家畜に対しての愛情と、同時にやがて訪れる出荷時での「経済的生産物」としての割り切り方の描写については、原作のエッセンスをうまく抽出しているとは思います。そして八軒がリタイアした受験戦争やその後の競争社会と、結果が全てという家畜の世界が重なって見える対比も面白いと思えました。さらに食肉解体場面をギリギリまで見せ、家畜の命を巡る現場をキチンと描かれているところにも、酪農の現実を逃げることなく見せてくれたと思います。けれども、それらをトータルでつないだとき、中途半端さを感じてしまったのです。例えば、クラスメートの駒場の実家の借金が原因で離農することに巻き込まれて、アキも可愛がっていた馬を手放さなくなったときも、割と淡々と描かれてしまいました。
 現代の酪農の問題にも例えば牛乳の単価が1リットル87円にしかならなくて、これではえさ代を払ったら、利益にならないというような切実な問題にも触れてはいます。でも
実際の酪農家の実態はもっと深刻で危機的な状況にあることまでは深追いしません。
 またそんな危機にあって、原作では八軒も悩み、「豚肉ファンド」を立ち上げるなど酪農の未来を変えようとするところまでは踏み込みませんでした。
 くわえて、ヒロインのアキとの関係も友達以上・恋人未満で、ラブコメまで踏み込みませんでした。だから、見終わったとき何が伝えたかったかということが、いろいろあって印象に残らなかったのです。あくまで続編前提で作られているところがアリアリなんですね。

 それでも演技面では、八軒を演じる中島健人の主人公の成長に合わせた表情の変化にメリハリを利かす演技は、良かったです。中高一貫の進学校から、いきなり農業高校の畜産学科に、何も考えずに進学してきた八軒の戸惑いぶりから、次第に酪農に本気になっていくところには、説得力のある演技でした。
 またそんな八軒を支えて、酪農や馬術に本気にさせるアキを演じるは、広瀬アリスはヒロイン役にふさわしく、可愛さが際立っていました。中島のほか、同級生役にも存在感があり、中村獅童、石橋蓮司、西田尚美らが要所を締めます。実力派の脇役が揃っているため、ギャグもばっちりで思わず笑えるシーンも満載。これなら原作を知らずとも、肩に力を入れずに楽しめることでしょう。

 もう一つ本作を評価したいところは、酪農高校の日常のリアルティにこだわっているところ。いかにも農業とは無縁そうな若手俳優が、堂に入った手つきで牛の肛門に手を突っ込んだり、乗馬も障害までこなすところは、何気なく撮っているけど、慣れるまで大変だっただろうと思います。特に広瀬は、クライマックスのばん馬レースも迫真の演技で実演して見せました。ばん馬はサラブレッドの2倍近い大型馬なので、演じている広瀬も怖かったでしょう。

 要所に挿入される酪農高校周辺の風景も雄大で、彼らの奮闘ぶりに華を添えていました。でもちゃんと青々と茂る草木に家畜の排せつ物が写っているんですねぇ(^^ゞ

 最後に、酪農高校っていいなあと思ったのは、ベーコンの調理など自分で大量につくって、クラスメートと一緒に校庭でがっつくこと。あんな感じで大勢で食べるとおいしさも格別ですね。八軒が作ったベーコンは、可愛がっていた「豚丼」というブタのなりの果てで、そう簡単に割り切れるものかと思ったのです。可愛かったブタでしたからね。でも、作っているときは、ベーコンの香りがスクリーンから伝わってきて、お腹がぐぅとなりました。人間って、残酷な生き物ですね(^^ゞ

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