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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『エヴァの告白』[日本公開:2014年2月14日]

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●Introduction
マリオン・コティヤール、ホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナーらが豪華共演を果たした人間ドラマ。より良い人生を求めてアメリカに移住してきた女性が、さまざまな出来事に振り回されながらもたくましく生き抜く姿を映し出す。監督は『アンダーカヴァー』でホアキンと組んだジェームズ・グレイ。社会の裏側で、決して諦めることなく前進するヒロインのりんとした強さが胸を打つ。

1921年、エヴァ(マリオン・コティヤール)と妹マグダ(アンジェラ・サラフィアン)は戦争の影響で情勢が不安定な祖国ポーランドを離れ、ニューヨークに到着する。だが、入国審査で医師に肺病と診断されたマグダは隔離され、二人は離れ離れに。入国を拒否されたエヴァは、ブルーノ(ホアキン・フェニックス)という見知らぬ男性のおかげで強制送還を免れる。
[日本公開:2014年2月14日]

コメント(2)

 不幸な身の上の主人公の女性が、運命に翻弄されつつ、生き別れた妹を救出するため、娼婦に身を落としながらも、懸命に生きる姿。それと、そんな主人公エヴァを愛したため苦しむ男の悲しみが胸に迫る作品でした。
 身寄りもない戦時のポーランドから着の身着のまま逃れてきた主人公が、入管で結核のため隔離されてしまった妹を取り戻すためには、とにかく資金が必要だったのです。
 そのな彼女にねぐらと仕事を提供したのが、とある劇場で支配人をしていたブルーノでした。ダンスだけの収入では、妹を取り戻す資金が稼げず、ブルーノはエヴァに売春を提案します。妹のために渋々引き受けるものの、敬虔なクリスチャンだったエヴァはその日から自らの信仰との狭間で苦悩するように。一方、ブルーノもエヴァに売春を提案したのも、決して自らの儲けのためだけでなく、少しでも早く妹の救出を願うエヴァのことを思っての苦渋の決断だったのです。台詞では一切語られませんが、ブルーノの表情には、現実問題としてそうすることしかないではないかという切羽詰まった気持ちが、浮かんでいました。
 エヴァは、入管で追い返されそうになっていた自分に声をかけて、賄賂を使ってアメリカ国内に入れてくれ、仕事まで斡旋してくれたブルーノに感謝しつつも、自分を売春婦にまで貶めたことを決して許そうとしなかったです。でも女心は複雑です。ブルーノがエヴァに近づこうとした、いとこで旅のマジッシャンのオーランドに嫉妬して、ケンカとなり警察に捕まった時、早朝からずっとブルーノ釈放を待ち続けたエヴァでした。そして、その間ブルーノがいないことをいいことに、オーランドはエヴァを口説こうとします。けれども彼女は、妹のそばにいたいからといって、オーランドとの旅回りをやんわり断ってしまうのです。きっと、エヴァはブルーノを恨む気持ちと、感謝し愛する気持ちが入り交じって、本人も混乱していたことでしょう。
 ブルーノもその気持ちが痛いほど分かっていたから、愛する気持ちを抑え込むしかありませんでした。その分、オーランドが言い寄ってくることにはどうにも我慢ならなかったようなのでした。そんなブルーノが、エヴァの本心を聞いてしまう決定的な場面に遭遇してしまいます。悩めるエヴァは、教会に飛び込んで告解に臨みます。それがタイトルの『エヴァの告白』となるわけです。自分が犯した貞操を犯した罪、そしてアメリカに向かう途中で盗みを働いたことを懺悔したエヴァは、自分は地獄に堕ちるしかないと告白します。そして、そんな境遇に追い込んだブルーノのことが教会の教え通り許すことができないで苦しんでいると語ったのです。密かにエヴァの後を追って、教会で潜んでいたブルーノは、よせばいいのにエヴァの告解を聞いてしまうのです。その時の台詞にはなかったけれど、愛する人から言われた本人は、相当なショックだったことでしょう。
 平静を装ったブルーノでしたが、ラストでエヴァと妹の逃走を手助けし、別れのときになったとき、自分がいかに酷い人間で、エヴァのことを利用して儲けようとしたのか、こんな自分のことなど忘れて、さっさと妹と逃げろと言い放つのです。でもこれ大嘘なんですね。ブルーノは妹の救出資金を作ろうと、エヴァの稼ぎは使わずに貯め込んでいたのです。エヴァのこれからのために男の見栄を切って別れようとするブルーノの雄叫びのような物言いには、切なさに涙してしまいました。
 罪を犯して警察に追われる身となってしまったブルーノだけど、なぜそれほどまでに愛するエヴァと一緒に逃亡しようとしなかったのか。哀愁溢れるラストシーンが必見です。
 ただ気になるところもあります。エヴァの薄幸さは、『レ・ミゼラブル』のファンティーヌに匹敵します。ファンティーヌに比べて、悲しみや苦しみがイマイチ深刻に伝わってきません。
 母国で暮らしていた頃戦争となり、本人の目の前で両親が敵兵に首を切られて殺されてしまったとエヴァは語ります。それから命からがらで、アメリカ行きの船に乗り込んだもの、船内はすし詰め状態。食べるものもなく、空腹のあまり人のものを盗んだら、見せしめで集団レイプされてしまったそうなのです。そしてやっとの思いでアメリカに着いたら、妹の結核が発覚。迎えに来るはずの叔母もきていなく、危うく強制送還になりそうに。探し回って叔母とあえるものの、叔母の夫から疎まれて不法滞留者として警察に突き出されてしまう…とまぁ、次から次へ不幸が襲ってくる人生を送ってきたのがエヴァでした。 気丈に振る舞っているエヴァには、本作では描ききれなかった苦悩がもっとぎっしり詰まっていたはずです。

 けれども本作がいいところは、そんな逆境にも深刻にならないことです。エヴァは娼婦になっしまった境遇にも涙こぼさず蕭々と受けとめたのでした。決して諦めることなく前進しようとするエヴァの打たれ強さに救いを感じずにはいられない演出となっているところには好感が持てます。

 だからこそもう少し告解のシーンはリアルティが欲しかったです。エヴァの経験したこととその罪悪感の強さから察するに、あんな感情がこもった懺悔のシーンでも、まだ信仰を持つものとして物足りなさを感じます。きっと監督自身がも心からの懺悔の経験がないからでしょう。例えば『ミリオンダラー・ベイビー』や『グラン・トリノ』で演じられるイーストウッドの真剣な懺悔のシーンと比べると、一目瞭然です。これは小手先の演技では誤魔化しようのないてとで、信仰の強弱が演出の違いに出てしまうのは仕方がないのかもしれません。
 但し、エヴァを演じるマリオン自身も泣いたというぐらいの感動作であることは間違いありません。

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