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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレアリ】『ムーンライズ・キングダム』 [2013年2月8日公開]

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●Introduction
 おかしいのにどこか切ないコメディを作り続ばめんはているウェス・アンダーソン。その新作の舞台は、まだ古き良きアメリカの雰囲気が残る1965年。駆け落ちした12歳の少年と少女が島の中の忘れられた道を通り、2人だけの入り江へ向かう。それを追跡する大人とボーイスカウトの仲間たち。おとぎ話のように進む子供たちの冒険物語と、平行して描かれる基本的には善良だがどこか愚かな大人たち。レトロかつスタイリッシュな映像は、どのシーンもまるで絵本をめくっていくような遊び心がいっぱい。いつもとは異なる役柄のブルース・ウィリスは、「ここ数年で一番の演技」とアメリカで評判だったという。確かに同じ警官役でも、ジョン・マクレーンの対極がここにある。

 60年代を舞台に、ある小島で起きた少年少女の逃避行と彼らを追う大人たちの騒動を描く「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」のウェス・アンダーソン監督作。出演は「ダイ・ハード」シリーズのブルース・ウィリス、「アメリカン・ヒストリーX」のエドワード・ノートン、「ロスト・イン・トランスレーション」のビル・マーレイ、「ファーゴ」のフランシス・マクドーマンド、「フィクサー」のティルダ・スウィントン。

 1965年、アメリカのニューイングランド沖に浮かぶニューペンザンス島。12歳のスージー・ビショップ(カーラ・ヘイワード)は、厳格でお堅い父ウォルト(ビル・マーレイ)と、口うるさくいつもせわしない母ローラ(フランシス・マクドーマンド)、そして3人の幼い弟たちと海沿いの大きな屋敷で暮らしていた。趣味は本を読んで自分だけの世界に浸ることと双眼鏡での観察。ある日、スージーはその双眼鏡で母とシャープ警部(ブルース・ウィリス)の密会を目撃する。同じ頃、ウォード隊長(エドワード・ノートン)率いるボーイスカウトのキャンプ地では、隊員の一人が置き手紙を残して姿を消す事件が起きていた……。1年前、ボーイスカウトの活動で劇を観に行ったサム・シャカスキー(ジャレッド・ギルマン)と、カラス役で出演していたスージーはわずかな言葉を交わしただけで惹かれ合い文通を開始。1年にわたる手紙のやりとりを通して密かに駆け落ちの計画を練っていた。草原で落ち合った二人は“3.25海里 潮流口”を目指し愛の逃避行に出る。手つかずの自然が残ったその美しい入江を“ムーンライズ・キングダム”と名付けた二人は、海に飛び込み、絵を描き、本を読み、夢を語り合い、ダンスを踊り、初めてのキスをする。翌朝、二人がいなくなったことに気付いた大人たちは右往左往。娘を誘惑したとウォード隊長に食って掛かるビショップ夫妻だったが、ボーイスカウトの少年たちによって二人は見つかり、離ればなれにされてしまう。だがサムの両親は里親で「変わり者のサムはもう引き受けられない」と言い、福祉局(ティルダ・スウィントン)の説明によると、問題児のサムは少年収容所に戻される可能性が高いという。長年トレーラーハウスで孤独な生活を送ってきたシャープ警部は、身寄りのないサムを預かり、男同士で愛について語りあう。そしてスージーも自分の思いを初めて母親に打ち明ける。サムをのけ者にしていたボーイスカウトのメンバーたちも同情するようになり、ウォード隊長に内緒で二人の駆け落ちを手助けすることに。やがてスージーとサムは、小さなボートを漕いで島からの脱出を図るのだが……。
[2013年2月8日公開]

コメント(1)

 物語の舞台は1965年、米ニューイングランド沖の小さな島。ボーイスカウトのサムと家出をしたスージーは、秘密の場所を目指して駆け落ちします。大人たちを巻き込んで、島中の人々がふたりを捜しはじめるというのがメイン。

 おかしいのにどこか切ないコメディを作り続けているウェス・アンダーソン監督作品。それだけに「小さな恋のメロディ」の変奏曲ともいえるような10代の男女の淡い恋の物語でも、アンダーソン監督の手にかかると、まるでお伽話の世界を覗いているかのようなメルヘンにしまいます。悪人なしで閉じる結末もじつに気持ちがいいし、そんなハートウォームな雰囲気を、出演者たち(実は、なにげにビッグスターが多数出演している)が童心に返って実に楽しそうに演じていて、見ている方も心地よくなります。

 ともすれば、駆け落ちを巡るドタバタになり易いところを、ほどよくケレン味を押さえて、登場人物たちに感情移入してしまいやすい作品になりました。
 最近こころがささくれている人にはぜひお勧めしたい作品です。きっと眠っていた豊かな情感がこみ上げてくることでしょう。

 さて、お伽話みたいに見える仕掛けてとして、アンダーソン監督は様々な仕掛けが施されています。郷愁を誘う色調の映像、魅惑的な自然のロケーションもさることながら、人形の家のようなスージーの自宅、男の子的なものをぎゅっと集めたスカウトのキャンプ、つつましい島唯一の交番。次第に映画の舞台が箱庭みたいに見えてくるのです。
 そして駆け落ちしたふたりが向かった小さな入江で、そこを「ムーンライズ・キングダム」と名づけ、愛の王国を営みはじめ場面は、まさに思春期のままごとの世界。初めてキスを交わすところや、スージーが胸を触らせようと導くところが、初々しいのです。
 箱庭といってもチマチマしたものではありません。映画冒頭、耳に飛び込んでくるブリテンの「青少年のための管弦楽入門」のように、一つ一つ緻密に計算された映像が積み重なって、アンダーソン監督ならではの叙情に満ちたアンサンブルを奏でるのでした。それだけ登場する少年少女たちののロマンチックでみずみずしい心情描写も素晴らしかったのです。

 しかし、周囲が二人を放っておくはずはなく、島をめぐる大いなる追っかけの果て、「ムーンライズ・キングダム」は見つけられてしまい、ふたりは別々に。ところがここで見せる、サムのボーイスカウト仲間たちの友情が素晴らしい!あれほど嫌っていたサムだったのに、でもやっぱり仲間の窮状はほっとけないと一致団結し、サムとスージーを引き合わせて、再び駆け落ちさせるのでした。
 ふたりの捜索網は拡大し、隣の島のボーイスカウト本部を巻き込んだ大掛かりなものとなります。そこへ嵐がやってきて、島全体がパニックに。ここからの逃走劇は、なかなかハラハラさせる冒険劇に変わっていきました。
 追っ手が迫るなか、嵐の海に命懸けで飛び込もうとするふたりを、シャープ警部が自分を信じてと止めます。そしてサムに放ったひと言には、そこまでこの孤独な少年のことを思っていたのかと胸が熱くなりましたねぇ。さすが「ここ数年で一番の演技」とアメリカで評判になっただけのことはあります。駆け落ちの顛末も凄く後味のいいものでした。

 さて、本作はエドワード・ノートンが、あり得ないような冴えないボーイスカウト隊長を演じていたり、なかなか本人と気付かないほどイメチェンしてシャープ警部を演じたブルース・ウィリスが出ていたりと、さりげなく大物が出演しています。けれども彼等は個性を主張せず、アンダーソン監督の作り上げた世界に強調しているところが見事でした。それでいて、トップスターならでは演技力が物語にぐっと効いているのです。

 2時間のお伽話は、短編に思えるほどあっと終わり、あれよという間にエンディングクレジットを迎えます。このエンディングロールは、なかなかデザインと音楽に凝っているのでた最後までお見逃しなく!

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