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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『彼女について知ることのすべて』 [2012年5月19日公開]

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●Introduction
 すばる文学賞受賞作家・佐藤正午原作の人気小説を、瀬々敬久監督作品の脚本を執筆、監督作として『ラザロ』『行旅死亡人』などを手掛けた鬼才・井土紀州が映画化したエロス・ノワール。ある地方都市を舞台に、男と女の切ない絆を描いた、激しく切実なラブストーリー。激しい性描写や暴力の連続が、悲劇的なカタルシスを演出すると共に、回想形式で語られるストーリーが失われた愛の追憶の残酷さを醸しだす。ヒロインを迫真の艶技で演じ鮮烈なスクリーンデビューを果たしたのは、元「王様のブランチ」レポーターとして知られる笹峯愛。その相手をバイプレーヤーとして活躍する三浦誠己が演じ、どこか頼りなさを漂わせる平凡な男性を好演している。

人気作家、佐藤正午の同名小説を「行旅死亡人」の井土紀州監督が映画化したエロス・ノワール。平凡な生活を送っていた学校教師が、1人の女との出会いをきっかけに、運命を狂わせてゆく。出演はNHK連続テレビ小説『あぐり AGRI』などの他、舞台などで活躍する笹峯愛、「アンダルシア 女神の報復」の三浦誠己。

その夜、男はピストルを片手に1人、車を走らせていた。実家暮らし、親の車に女を乗せて、時々、女の家に転がり込む……。何不自由なく一生を平凡な教職員で終えるはずだった鵜川(三浦誠己)は、それまで無縁だった世界にいた。何が彼をそこまで追い詰めたのか……。同僚の美千代(赤澤ムック)との結婚を漠然と考えていた鵜川の前に現れた1人の女、メイ(笹峯愛)。彼女は美千代の学生時代の後輩だったが、美千代は露骨に嫌悪感を見せる。メイの何が彼女にそこまで嫌悪感を抱かせるのか?鵜川は興味本位から、美千代とは正反対のメイに惹かれ始める。手のひらに運命線がなく、暗い影の付きまとう女メイ。訳有りとは知らずに愛したその日から、何かが狂い始める……。ある日、鵜川の前に一人の男が現れた。メイの恋人だと名乗ったその男は、口では決して相容れぬ、残酷な人間だった。彼の出現を機に、2人の世界は一変する。刑務所から出所したばかりの昔の男に束縛されるメイと、その男に恐喝され、友人を裏切ることになる鵜川。愛し合うメイと鵜川は、疼く身体を重ねる度に、身も心も破滅に追いやられてゆく。そしてメイの手のひらに、あるはずのない運命線が静かに現れた時、2人の未来に惨たらしい殺人計画が浮かび上がってくる。メイの選んだ衝撃の決断とは。絶望の果てに見出すのは、愛か死か……。
[2012年5月19日公開]

コメント(1)

 ポルノ映画と紙一重の濡れ場が続く、男と女の物語。メイという魔性の女に出会ったために、平凡な教職員で終わるはずだった主人公の鵜川の人生が、人を殺すところまで追い込まれていくという物語。
 メイに興味本位に近づいた結果、刑務所から出所したばかりの昔の男に因縁をつけられてしまう結果に。ただよくわからないのは、その後この男の恐喝に屈してしまうまでは理解できるものの、完全にいいなりになってしまうのは、少しリアルティを感じさせませんでした。恐喝の末路として、鵜川は生活資金まで巻き上げられてしまうのですが、すると男は鵜川に友人の競輪選手を呼び出して、八百長を持ちかけることまで強要してしまうのです。当然話を聞いた親友も呆れて去ってしまうのですが、なんでこの親友も警察に恐喝として訴え出ようとしなかったのか、疑問に残りました。
 少し全体的に、演出側の予定調和な展開が目立ちます。

 ふたりの将来どころか、部屋に軟禁されて毎日の安全にも不安を感じるようになったふたりは、男の殺害を計画することになります。
 そして冒頭のピストルのシーンとなります。果たして、小心者の鵜川は男を殺すことができたかどうかが、一つのヤマ場でした。

 自首した鵜川は、出所後偶然メイと再開します。
 階段で目と目が合うものの、無言ですれ違う鵜川とメイ。お互いが、まるで赤の他人のように、階段の上下で距離が離れていくカットを見せられたとき、きっと監督はこの別れのワンシーンを撮りたくて、本作を組み立てたのだなと思えました。きわめて映画趣味的なシーンなのです。
 修羅場をくぐった鵜川とメイの関係なら、無言で別れるはずもありません。結局は、監督の美学を押しつけられているような感じがしました。

 ところで本作の収穫は、ヒロインのメイを演じている笹峯愛の演技力が凄いんです。脱ぎっぷりも、大胆な濡れ場も凄いのですが、何と言っても場面ごとにカメレオンのように変わる表情。あるときは、虫も殺せないような少女のような可憐さを見せれば、濡れ場では、まるでSMの王様のように、男を思いどうり翻弄し、自分のとりこに絡め取っていくのです。
 昔の男の前では、DVに打ち震えるか弱い女性に転じ、殺人現場では血を恐れない、修羅の形相を浮かべる。まさにシーンごとに別人に変身してしまったかと思うほどの変わり様を演じてくれました。彼女の今後の活躍を多に期待したいと思います。

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