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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『阪急電車 片道15分の奇跡』 [ 2011年4月29日公開 ]

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●Introduction
片道わずか15分のローカル電車を舞台に、そこに乗り合わせた人々の悲喜こもごもの人間模様を綴る群像劇。『フリーター、家を買う』の有川浩のベストセラー小説を、これが劇場用映画デビューとなる『結婚できない男』の三宅喜重が監督。出演は「ゼロの焦点」の中谷美紀、『ライアーゲーム』の戸田恵梨香、「眉山」の宮本信子。

ある日、結婚式に出席したOLの翔子(中谷美紀)は、花嫁と見間違えるような純白のドレスで現れ、新郎新婦を唖然とさせる。それは、彼女の復讐だった。会社の同僚でもある婚約者を後輩に寝取られた翔子。別れ話を切り出してきた婚約者に出した条件が、結婚式への出席だった。新郎新婦を尻目に、颯爽と披露宴会場を後にした翔子。帰宅途中の電車で、好奇の視線を集める彼女に老婦人が声をかけてくる。その老婦人とは、曲がったことの嫌いな時江(宮本信子)。孫の亜美(芦田愛菜)と電車に乗っていたところ、純白のドレスに引き出物というチグハグないでたちの翔子が気になって、声をかけたのだった。女子大生ミサ(戸田恵梨香)の悩みは、恋人カツヤ(小柳友)のDV。2人で同棲するための物件を見に行く途中、電車に乗り合わせたドレス姿の翔子のことを話しているうちに口論となり、カツヤが降りてしまう。それを見ていた時江が吐き捨てた“くだらない男ね”という言葉で、ミサは別れを決意するが……。セレブ気取りの奥様グループに嫌々付き合っている庶民派主婦の康江(南果歩)。今日も高級レストランでのランチに誘われ、胃痛を我慢して出かける。電車内で傍若無人に振舞う奥様グループに肩身の狭い思いをしていた康江は、“おばちゃんってサイテー”という、ミサからの厳しい言葉を耳にして、急激に体調が悪化してしまう。地方出身で都会の雰囲気に馴染めない大学生の権田原美帆(谷村美月)と圭一(勝地涼)。ある日、電車の中で出会った2人だったが、その距離は近づくのだろうか……。大学受験を控えた女子高生の悦子(有村架純)は、人はいいがアホな社会人の竜太(玉山鉄二)と付き合っている。下校時の電車内で友人たちから進展状況を問い詰められるが、プラトニックな関係は保ち続けていた。だがある日、高校の担任から第一志望の大学は難しいと言われ、自暴自棄になって竜太とラブホテルに向かうが……。
[ 2011年4月29日公開 ]

コメント(4)

 宝塚〜西宮北口間を約15分で走る、
 えんじ色の車体にレトロな内装の阪急今津線。
 その電車に、さまざまな“愛”に悩み、
 やりきれない気持ちを抱えながら、
 偶然乗り合わせただけの乗客たちがいた

 まずは、プロローグが記録的に長いのです。主要登場人物が各駅ごと1名ずつ八駅八名。登場するごとに人物紹介していくので、全員紹介し終わるまでに30分もかかりました。 こんな展開で、どう収束するのか気になりましたが、関西テレビの社員監督さんは、見事に8名が絡んでいく話を紡ぎ上げ、感動のラストを作り上げたのです。
 こういう主人公が複数のオムニバス的な作品は、今までいいと思ったことがありませんでした。『いぬのえいが2』は単なる羅列だし、洋画の『ニューヨーク、アイラブユー』では、各エピソードの終わりの登場人物が、次の話にちょこっと登場するだけで、どれも話として物足りなさを感じてしまっていたからです。
 本作もパスしていましたが、マイミクさんの熱心なお勧めで、劇場で見てきました。そんなに深い話ではないのですが、こう〜じわぁぁぁっと心の琴線にふれてくる登場人物の演技に次第に涙腺が緩んでしまい、涙があふれて止まらなくなってしまいました。
 本作のレビューの多くを見ると、「電車の中で乗客同士がこんなに濃く混じり合うなんて、嘘くさい!」との酷評が蔓延しています。しかし、一つ一つのエピソードは、あり得ない話ではないと思うのです。但し、それを集めて2時間のドラマに凝縮してしまうと、嘘くさく感じててしまうのも仕方ないことでしょう。でもでも、そんな嘘くささを超えて、宮本信子や中谷美紀の名演技に引き込まれ、思わず映画の虚構の世界で、感動してしまったのでした。
 ホントに長ーいプロローグのあと、語られる中谷美紀のナレーション。それが、とても素敵でした。
 「こんなにたくさんの人々の中で生きていても、名前も知らない人たちは私の人生に何の影響ももたらさないし、私の人生も誰にもなんの影響も与えない。世界なんてそうやって成り立っているんだ………そう思っていた。」
 映像は、道行く数多くの群衆のなかで、中谷演ずる高瀬翔子が孤立し、観客に語りかけるスタイルです。沢山の人に囲まれて暮らす都会に住む刹那を淡々と語りかけてくるのでした。しかし、そんな翔子の心を癒すかのように、映画は偶然に乗り合わせた乗客たちが、少しずつ影響し合い、運命を変えていく様子を描きます。まるで仏教で言う、人と人とは仏性で無意識に繋がっているのだということを、分かりやすく語りかけるかのように。
 都会で暮らしていると、隣の人の顔さえ知らないのが普通です。でも、その見ず知らずの人が、落ち込んでいる人や困っている人を、突如労ってくれたら、どんなに救いになることでしょうか。たとえ嘘くさくても、こんな話があったらいいなぁと思わせてくれるところに、まぁ涙が滲み出てくる秘密があるのでしょうか。

 いい話は、いっぱい出てきます。なかでも名演技なのは宮本信子演じる萩原時江。原作でも神かがっていましたが、超能力として思えないくらいの洞察力で、中谷美紀演じる翔子の事情を見抜いて、悩みを聞き出そうとします。翔子は、ほぼウェディングドレスと見まごう衣装で、婚約者を略奪された腹いせに、結婚式へ「討ち入り」に参加した帰りでした。事情を聞いた時江は、ひと言「いい気味」と言ってのけます。そして「気の済むまで怨みなさい。それまで同じ職場に居続けなさい。」とも。
 人生の機微も重ねた風格のある時江の言葉だから、重みを感じます。まして「あなたの思ったとおりで、いいのよ」と思いもかけない言葉を、赤の他人から言われると、どんなに自分が救われるものでしょうか。往々にして知人からは、「復讐なんか止めて、諦めるべきだ」と言われるのがオチですもんね。そんな言葉なんかよりかわですよ!
 ああ!文字数の制約で触れられないのが残念至極。でも、このやりとりに先立つ、時江と天才子役の芦田愛菜演じる孫の亜美との、「なぜ犬を飼うことができないの」というやりとりも絶妙でした。
 時江によって気づかされた翔子は、恩返しをするかのように、電車や駅で出会った人を助けていきます。ひとりの人が、ささやかでも幸福のタマゴを産み落としていくと、ピーヒーと幸福のヒヨコが孵っていき、周りのひとの心も幸福に染めていくのですね。
 そして、時江に勧められて小林駅で途中下車した、翔子は人の息づかいが漂う街の魅力に惹かれていきます。このシーンを見ていると、婚約者を寝取られた恨み心では、絶対にこの街の素晴らしさを感じ取ることなんて難しかっただろうと思うのです。でも時江のひと言で、くるりと人生観を変えてしまった翔子にとって、駅に飾られた子供の絵を見ただけでも幸福感がこみ編み上げてくるのでした。幸福な感じって、与えられるのを待ってても、悲しいことばかり続くもんですね。翔子のように、自分から小さな幸福に気付いていかないと、人はずっと幸福になれないものなのかもしれないなぁ〜と感じさせられるシーンでした。

 その翔子が、恋人から暴力を受けている戸田恵梨香演じるミサと関わるところや、同級生からいじめに遭っている少女と関わるところも、じわ〜と泣けてくる名場面が続きます。
 その他に、女子高生の悦子から、恋人の竜太がエッチに誘われたとき、一見アホキャラの竜太が毅然と「お前にとって最高にいいと言える日にしたいんだ」と、きっぱり撥ね付ける台詞にもグッときましたね。

 谷村美月が演じる女子大生の美帆と勝地涼が演じる同じ学校の圭一は、それぞれ学友がどん引きするくらいの野草オタクに軍事オタク。そんなオタク同士の純朴な好奇心が寄り添う姿は、可笑しくもあり、なかなか素敵です。特に美月ちゃん、可愛いですぅ〜(^^ゞ
 こんなふたりのクリスマスの夜のエピソードは、微笑ましく思えました。友人から美帆へ贈られてきたプレゼントの中身は、何とコンドーム。ふたりは赤面しつつも、神妙な面持ちで、圭一がせっかくだからそれを使わない?と切り出します。すると、これまた恐る恐る正座に組み替えた美帆が、御直をしながら、よろしくお願いしますと神妙に答えるところが、何とも二人らしいなぁと笑えました。
 ちょっとシリアスになりかねないこんなシーンも、『のだめカンタービレ』のような感情をアニメで表現するした映像が加わるので、一段とユーモラスに伝わってくる洒脱さがこの作品の持ち味でしょう。

 最後に人助けばかりの印象の強かった時江でしたが、そんな時江も電車の中で出会いが用意されています。きっと孫の亜美と共に、ヤッタね!と思わず心の中でVサインしてしまうことでしょう。

 往路は10月の設定で8駅8話で伏線を張り、春になる3月の復路8駅8話で完璧に伏線を回収する形式のお話。全部をご紹介できないのがとても残念です。あとは劇場で、「嘘くさ〜い!」とダメだししながら、じわ〜りたらーっ(汗)と涙をたっぷりお流しくださいませませ。

 エンドロールには、劇中に登場しなかったシーンも登場。その意味するものに、ご注目を!

追伸
 スタッフ・出演者の殆どが阪急電車沿線ないし、居住体験のある人ばかりが選ばれています。そんなこだわりが画面から滲み出ていましたね。愛菜ちゃんも西宮市出身です!
●余談1
 鉄道オタクにとっては、阪急今津線が西宮で南北に分断されたことに悲劇性を感じてしまいます(^^ゞ

●余談2
 さて、エンドロールに突如映し出される、石を積み上げて文字にした『生』という文字が気になりますね。これは『生』オブジェと呼ばれるものです。エンドロールにも団体名が露出されていました。
「生」は宝塚および阪神復興のシンボルであり、そして東日本大震災に遭われた方々へのお見舞いと激励のメッセージでもあるそうです。

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