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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『生き残るための3つの取引』[ 2011年4月29日公開 ]

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●Introduction
 韓国社会の汚職や腐敗、警察組織における事件捜査の裏側を生々しく描き、本国では280万人を動員する大ヒットを記録した社会派クライム・サスペンス。
 犯人捏造に手を染め、次第に泥沼にはまり込んでいく刑事と、事件を追求しながらも企業と癒着している検事――生き馬の目を抜く組織社会で、生き残るためにもがく男たちの姿が悲しく切ない。
 驚きのラストには、衝撃だけでなく、そうせざるを得なかった男の哀しみが漂い、観る者の共感を呼ぶことだろう。主人公の刑事チョルギを演じるのは、演技派として名高い『黒い家』のファン・ジョンミン。これまでは心優しい素朴な青年のイメージが強かっただけに、本作での汚れ役ぶりにファンは驚かされるだろう。彼と敵対する検事を、『クライング・フィスト』のリュ・スンボムが熱演する。各々の思惑が絡み合う、命懸けの戦いに血がたぎる。他に、「オガムド 五感度」のファン・ジョンミン、「クライング・フィスト」のリュ・スンボム、「黒く濁る村」のユ・へジン。
 監督は、『相棒 シティ・オブ・バイオレンス』の韓国の奇才、リュ・スンワン。

 全国民に衝撃を与えた女児連続殺人事件。警察は検挙に失敗、被害者は増える一方だった。ついには大統領までが事件に直接介入するが、警察は有力容疑者を誤って射殺。上層部はその事実をもみ消そうと犯人をでっち上げ、事件を終わらせようとしていた……。警察庁の広域捜査隊チェ・チョルギ(ファン・ジョンミン)は、優秀だが学歴がないという理由で昇進できずにいた。二人きりで生きてきた妹の亭主は定職に就かず、夜ごと遊んで浪費するばかり。その義弟が、建設会社から多額の現金を受け取っていたことが警察内部で発覚、チョルギは身分証を剥奪される。その夜、上司から昇進を条件に女児連続殺人事件の犯人でっちあげを命じられたチョルギは、家族や仲間を考え悩んだ末、前科者の中からイ・ドンソクを容疑者役として選びだし、裏組織の男、新興建設会社社長チャン・ソック(ユ・へジン)に、3日以内に犯人に仕立てあげるよう取引を持ちかける。一方、検事のチュ・ヤン(リュ・スンボム)は、資金提供を受ける不動産業界の大御所、キム会長が不正入札の件でチョルギに拘束されたことをきっかけに、チョルギの背後を探り始めていた。キム会長が拘束されている間に入札で漁父の利を得たチャン・ソックとチョルギの関係を疑い始めたのだ。だがその一週間後、キム会長がゴルフ場で殺され、チュ・ヤンのもとにキム会長との癒着の証拠となる写真が送られてくる。チャン・ソックの脅しだった。だがチュ・ヤンは、担当となった女児連続殺人事件を調査する過程で、チョルギとチャン・ソックの間にある取引が存在し、イ・ドンソクがでっちあげられた犯人であることを見抜く。チュ・ヤンは、懇意にしている新聞記者を使って警察による犯人捏造をほのめかす記事を書かせる。記事に激怒したチョルギは、チュ・ヤンとキム会長の癒着をネタに脅しをかけるが、反対にチャン・ソックとの関係や犯人捏造を指摘され、チュ・ヤンに追いつめられていく……。
[ 2011年4月29日公開 ]

コメント(1)

 警察組織がメンツのために犯人をねつ造するという設定自体は、テレビドラマ『相棒』でしばし登場する設定。だが本作の主役の刑事は、その設定に立ち向かうどころか、自ら連続殺人事件の犯人をでっち上げる当事者になってしまうところが、刑事もののドラマでこれまでにないストーリーだと思います。
 ヤクザを使ってニセの容疑者を仕立て、犯人逮捕に踏み切ったまではよかったものの、その不正に気がついた検事とヤクザとチョルギの三者の思惑と欲望が絡み合い、一筋ならでは行かないストーリーに引き込まれていきました。

 北野武の『アウトレイジ』と同様に本作は、出てくるものがみんなワルなのです。そもそも主人公からして、犯人ねつ造の動機が、単なる出世欲でしかなく、おまけにねつ造を仕組む裏社会のやくざ者との関係がズブズブで、全く正義のかけらも感じさせない人物だったのです。
 それを暴こうとする検事もまた、建築会社の会長との癒着を主人公の刑事に追及されて、自己保身のために、主人公の弱点を暴こうとしていただけなのでした。さらに後半の展開では、主人公の罪がバレそうになったとき、自分が信頼してきた部下ですら、犠牲にしてしまう悪辣さでした。
 
 社会派クライム・サスペンスでは、どこかに正義が必要で、観客はそこに救いを求めようとします。けれども何処にも救いとなる正義がない本作は、誰にも感情移入できないフラストレーションが、溜まっていったのです。せめて『アウトレイジ』同様に、主人公よがもっとワルな存在に翻弄される哀愁を描いていたなら、同情の余地を感じていたかも知れません。しかし、主人公の情けない最後まで見せられて、最後の最後まで同情する気になれませんでした。そんな主人公の都合で振り回されてしまうヤクザのほうが、かえって可哀想に思えてしまうくらいです

 対する検事のほうも、ざんざん嫌みな官僚らしさを発揮したあげく、最後はぬくぬくと自分の悪事を切り抜けてしまうのです。これじゃあ、見ている方はたまりません。何処にこの苛立ちをぶつければいいのか、後味の悪さばかりが残りました。

 それでも、本作のオチは、全く予測不可能な真犯人のネタバレなんです。ええっ!驚かれること必至です。ほんのちょっと演出を変えれば、この結末がくぐっと感動的なものに変わったことでしょう。主人公が背負った理不尽な犯人ねつ造の空しさ。止むを得ず手を汚し、苦闘を強いられるその姿の切なさが染みいるように、感じ取れる終わり方になっていたはずで、とても残念に思えました。

 その伏線として、でっち上げられた犯人が、真犯人として落とされていく過程は、なかなか説得力がありました。

 ファン・ジョンミンは初めての汚れ役を熱演しているものの、イメージとしては、汚れ役よりもまっすぐ正義を貫く熱血刑事のほうが似合っていると思います。チョルギ役というのは、野心を感じさせる、一癖ありそうな俳優にやらせた方が、もっと本作のリアルティが出てきたのではないでしょうか。

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