ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『エクスペリメント』 [ 2010年12月4日公開 ]

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
●Introduction
平和主義でデモに参加するトラヴィスは職を失ったばかり。恋人ベイとインドへ旅行するため、日給1,000ドルで14日間ある実験に参加すれば高額報酬がもらえるという被験者募集の広告をみて選考に参加することに。温厚で人当たりの良いバリス、冴えないグラフィック・ノベル・ライターのベンジー、女好きのチェイスら24人の男たちがトラヴィスとともに選ばれた。その実験は単純なものだった。刑務所と同じ環境で“看守役”と“囚人役”に分かれ、ルールにそって過ごすこと。始まりはただの役割に過ぎなかったが、2日目には崩壊。対立する囚人役のトラヴィスと看守役のバリス。日ごとに極限状態に置かれていく彼ら。やがて、理性が狂っていき事件が起きる。それを見守る多数の監視カメラ。いったい何が起こったのか?

 1971年、アメリカのスタンフォード大学 心理学教授フィリップ・ジンバルド博士は、普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動しようとすることを証明しようとした実験を行った。14日間、研究室内につくった監獄で看守役と囚人役に分かれ演じること。次第に被験者は役割に応じて変わっていく。ついには倫理的見地でわずか6日で中止せざるを得なかったこの研究は、スタンフォード大学監獄実験として知られる。本作は人気 TVシリーズ「プリズン・ブレイク」の脚本・監督ポール・シェアリングが、世界を震撼させヒットしたドイツ映画『es』(02)の元ネタにもなった実在の実験に題材を見出し、驚くべきリアリズムとスリルを持って人間の本質をあぶりだす心理スリラー。『戦場のピアニスト』エイドリアン・ブロディが拘束された状況下であくまで理性を保とうとする囚人役、『ラストキング・オブ・スコットランド』のフォレスト・ウィテカーが温厚で誠実な男が看守役に回って変貌する様を生々しく演じる。(作品資料より)
[ 2010年12月4日公開 ]

コメント(2)

 映画作品では、かなりのところで、実際の実験模様の再現をしていました。何しろプリズンブレイクの製作総指揮と脚本を書いたポール・シェアリングが監督しているため、普通の人が次第に囚人役と看守役にのめり込んでいく様は、凄くリアルです。そして、実験の主宰者の期待通りに狭い空間で常に一緒にいるもの同志が、次第に理性の歯止めが利かなくなり、暴走してしまう有様が克明に描かれていきました。

 当初は、ルール通りに役割を演じないと、2週間で一人14000$の大金が貰えなくなるむという報酬が参加者の行動を縛っていたのです。けれども次第に看守役は誰かに指示されるわけでもなく、自ら囚人役に罰則を与え始め、囚人役はそれに反抗し始めます。
 それに反発した看守役側は次第に罰をエスカレートし、囚人役のリーダーを連行して便器に顔を押しつける拷問かせら、やがては公然とした暴力まで行使。死者まで出てしまうところまでいってしまいます。実際の実験では、死者こそ出ませんでしたが、囚人役の暴動が起こる寸前までいったようです。

 本作で見所は、人間の変化する凄さ。特に看守役のリーダーとなるバリスは、実験前は善良な普通の市民だったのが、実験が始まると当時に、厳罰主義の看守に豹変し、顔つきまで変わってしまいます。この狂気は、どこかプリズンブレイクのセカンドシーズンに繋がるものを感じました。そして実験が突然中止されると、バリスはまた元の善良な市民の顔に戻っているではありませんか。日本人がはまりやすい『空気の支配』の怖さを感じさせる演技だったと思います。フォレスト・ウィテカーの絶妙な心理描写はさすが、アカデミー俳優の貫禄でしょう。

 さて、もうひとりの主役であるトラヴィスも実に皮肉な役回りです。反戦集会に参加するほど、彼は人間の理性を信じ、あらゆる戦争という暴力的手段に反対していたのです。 そんな彼の信念は、彼女とインド旅行に行くための旅費稼ぎのために参加した、この心理実験で大きく変わることになったのでした。
 実験のルールは、トラヴィスと同じ非暴力の徹底でした。しかし、繰り返される看守役の非人道的な対応に激高したトラヴィスは、自らすすんで囚人役グループをまとめ上げて、暴動を起こし、暴力で怒りを収めようとします。
 実験が終わったときの帰路で、参加者の一人が「結局われわれは、サルを越えていなかった。」と自嘲する言葉に、トラヴィスも愕然とします。
 結局トラヴィスの非武装理論は、頭の中での産物にしか過ぎませんでした。これは単に映画のなかのフィションと考えずに、日本の置かれた現状に対する警告と考えた方がいいのかも知れません。看守役側の非道な仕打ちに耐える演技を披露したエイドリアン・ブロディの役者根性も讃えたいと思います。

 本作はフィクションの体裁をとりつつも、その恐ろしさを的確な設定と描写でとらえる。支配欲とエゴ、恥辱、卑屈、憎悪……支配する者と支配される者の間に生じる人間性の歪みを生々しく描きながら、人間の醜さをあぶり出す。人間が人間でいられなくなるほどの極限状態。その恐ろしさは、理性の奥底にひそむ狂気の存在を意識させ、強烈なショックを感じました。

 映画マニアの間でしばしば語りぐさとなっていたドイツ映画『es』とは、こんなえぐい内容だったのかと改めて思い知らされました。プリズンブレイクのファンだったひとや、群集心理に関心のある方は、必見でしょう。
 映画的にも、なかなか楽しませてくれました。

全文は、日記まで。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1626688030&owner_id=492091

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

映画レビューアーフォーラム 更新情報

映画レビューアーフォーラムのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。