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千載和歌集コミュの俊頼の歌  その11 みさびにとぢられて

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俊頼の歌  その11 みさびにとぢられて


   あさりせし水のみさびに閉ぢられて
     菱の浮葉に蛙なくなり  (夏歌 203 俊頼)

「浅くなった水サビに閉じこめられて ヒシの浮葉に蛙がないていることであるよ」(久保田淳 イベリコ)

 「あさり」は「浅り」で川の水の浅い所、浅瀬。
「みさび」は「水銹」で水面にうかぶサビのようなもの。水渋(みしぶ)ともいう。多くたまり水にあるもの。あかね色したもので、鉄錆のような色である。
「ひし」は水草の名前。次のサイトがヒシを知る上で参考になった:
http://had0.big.ous.ac.jp/plantsdic/angiospermae/dicotyledoneae/choripetalae/trapaceae/hishi/hishi.htm

一体、蛙が鳴く情景とはどのようなものなのであろうか。俊頼以前の和歌にその例を探してみた。万葉集では、次の歌の例のように、蛙の鳴く場所を具体的に河のどこかを特定するようなものはない。

   けふもかも明日香の川のゆふさらす
     蛙鳴く瀬のさやけかるらむ

   佐保川の清き河原に鳴く千鳥 
     蛙とふたつ忘れかねつも

   蛙なく神南備川に影みえて
     今か咲くらむ山吹の花

   夕さらす蛙なくなる三輪川の
     清き瀬の音を聞かくしよしも

夫木和歌抄に山部赤人の歌がある。
   蛙なく吉野の川の滝のうへに
     あせみ(馬酔木)の花ぞ咲きてちりける  

古今和歌集でも同じである。

   蛙鳴く井手の山吹散りにけり
     花の盛りにあはましものを
      この歌はある人のいはく、橘清友が歌なり

ただ拾遺集では

   さは水に蛙なくなり山吹の
     うつろふ影や底に見ゆらん

また、古今六帖で

   山吹の花影みゆる澤水に
     今ぞ蛙の声きこゆなる

 古今六帖の歌では少しの場所の特定がなされる。しかし、基本的には場所はぼんやりしたままである。
 これらに比べ、俊頼の歌で蛙が鳴く場所は菱の浮葉という不安定で狭い場所である。しかも他へ行き場がない場所である。身動きができない状況で蛙が鳴いている。その菱の浮葉が枯れれば、蛙は水銹の中に沈んで行かざるをえない。
 こうみると、俊頼の歌は随分と特殊である。「みさびに閉ぢられて」という表現は悪い夢に登場する場面のようである。203番は202番の俊頼の歌「みさをにもゆる蛍かな」と一対となる歌である。こうした表現の登場は時代背景というよりは、彼の独創であろう。

 俊頼の生み出したこの表現は後代にも受け継がれていったようである。

   みさび江の菱の浮葉にかくろへて
     蛙なくなり夕だちの空  (千五百番歌合、藤原良経)

後鳥羽院の歌に
   見しまえの菱の浮葉にゐる玉を
     磨くか夏の月もさやけき

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