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千載和歌集コミュの能因法師の歌  その3 竜門寺

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能因法師の歌  その3 竜門寺


竜門寺にまうでて仙室に書付け侍りけり
   あしたづに乗りて通へる宿なれば
     跡だに人は見えぬなりけり  (雑歌上1038 能因法師)

大意:
「仙人が鶴に乗って通った家だから、人の住んだ形跡すら見えないのだな」(久保田淳)

語句:
竜門寺: 大和国の歌枕。奈良県吉野郡吉野町竜門。近鉄下市駅より東へ、伊勢街道沿いにある山口の里に竜門寺跡がある。

仙室: 仙人の住まい、仙人の居所のこと。 「俗世間を離れた住まい」にも用いる。
鶴に乗る仙人: 鶴に乗った仙人の話は中国にある。いくつか例がある。その一つ、王子喬という周の霊王の太子の話がある。「列仙傳」には、王子喬が河南省の伊水と洛水を漫遊していた時、浮丘公という道士に出逢った。王子喬はその道士について嵩山に登り、そこにいること三十余年、指導を受け、彼も仙人になった。その後、王子喬は白い鶴に乗って飛び去ったという。

鶴: 「相鶴経」という本に次ぎの文章があるのを(「続歌林良材集」からの引用):
「鶴は陽物なり。金気を凛として以て生まれて二年にして頂赤く、七年にして薄雲漢を飛ぶ。又、七年にして昼夜十二時鳴き、六十年にして大毛落ち、茸生ず。色白く、雪の如し。泥水も汚す能わず。百六年にして雌雄相視て乃ち孕む。三百六十歳にして則ち色純黒漆のごとし。故に玄鶴と云う。二千六百歳にして飲むとも、食せず胎化産む。而して仙人の麒麟となす。」

評釈:
古今和歌集に伊勢が竜門で詠んだ歌がある。
 
竜門にまうでて、滝のもとにてよめる
   たちぬはぬ衣きし人もなきものを
     なに山姫の布さらすらん (雑歌上・926 伊勢)

 能因法師はこの歌を下に敷いているのだろうと思う。伊勢は「たちぬはぬ衣きし人もなきものを」というが、ここで何故仙人がいないのかは不明である。しかし、能因法師はその理由として、仙人は鶴に乗って行き来していて、その後、その鶴に乗ってどこかに飛び去ったからとしている。見事に、伊勢の歌を補完しているわけである。勿論、伊勢は仙人がどこに行ったかは重要でない。つまり、伊勢を捨てた藤原仲平の新しい恋の相手が誰かはどうでもよいことであるからだ。

 能因法師の歌は、伊勢の歌が傷心の歌であり、その歌を念頭に置いているのに、何故か暗い所がなく、爽快であるからではないか。仙人、鶴と吉兆の類を並べるのは人の齢を寿ぐ勢いさえある。

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