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欧州・ロシア情報コミュの46、ユーロはこのまま自壊するのか 危機は感染爆発のように伝染する

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ユーロ危機で稼ぐヘッジファンド

 11月23日に放映されたNHKスペシャル「ユーロ危機 その時日本は」をご覧になっただろうか。

 番組では、イタリア国債のCDS(credit default swap)を買ってイタリア国債の売りを仕掛け、国債価格の急落(利回り急騰)で儲けるヘッジファンドのマネージャーに密着取材していた。国債の急落で儲けた後、「次はどこかな、この先数カ月はこの手で儲けるチャンスに恵まれそうだ。サンキュー・イタリア!」とほくそ笑むヘッジファンドのマネージャーが印象的だった。

 CDSというのは金融派生取引としてのオプション取引の一種で、この場合ヘッジファンドはイタリア国債のCDSを買い、オプション料(一種の保険料)を払う。国債価格が下がる(利回りが上がる)とオプション価値が増加して、当初払ったオプション料を上回る利益を獲得できる。手口としてはシンプルなものだ。

 なぜそれが国債の売りを引き起こすのかというと、ヘッジファンドにCDSを売った金融機関は国債価格が下落すると損失が出るので、価格変動に応じてある比率でヘッジ(リスク回避)のために現物の国債を売る。国債価格がさらに下がるとCDSの売り手の損失は増加するので、国債の売りヘッジの比率を上げなくてはならない。こういう仕組みでヘッジファンドの国債CDS買いは現物の国債の売りを誘発するのだ。

 番組に登場したヘッジファンドのマネージャーは、ユーロ圏の国債売りの同調行動を誘う効果を意識して取材に応じていると感じた。実際、日本の機関投資家や投資信託もユーロ圏諸国の国債をポートフォリオから落とし始めていると報道されている。

危機は感染爆発のように伝染する

 私はこの番組を見て強い既視感に襲われた。想起したのは2008年のリーマン・ショックではなく、1997〜98年のアジア通貨危機だ。

 当時タイやマレーシアなどは日本をはじめ先進国からの直接投資で好況を謳歌していた。そのためもあり、これら諸国は国内の自国通貨の金利が高かった。そこで現地の企業の間では、相対的に低金利のドル建ての短期融資を借りて、現地の通貨に転換し、国内投資に充当することがはやった。つまりドル債務(ドル売り・自国通貨買い)の為替ポジションが莫大に積み上がった。これに目をつけたのがソロス氏など大手ヘッジファンドであり、これらの国の通貨に対して外為市場で売り投機を浴びせた。

 売られてタイバーツの対ドル相場が下がると、ドル短期債務・バーツ長期投資資産の財務持高を積み上げていた企業には為替損が生じる。彼らも損失を抑制するためにバーツ売り・ドル買いに殺到するようになった。結局、タイ中央銀行のバーツ買い介入で抑えきれなくなり、バーツ相場は暴落した。

 バーツ相場の下落でドル債務から生じた莫大な為替損が企業の自己資本を毀損し、銀行借入は返済不能となった。そのため通貨危機は一気に金融危機に深刻化し、しかも危機は国際的な信用収縮を引き起こしたので、感染爆発のようにアセアン諸国からほかの国々に金融危機が波及したのだ。

 タイバーツ売りの代わりにイタリア国債売りという違いを除けば、ヘッジファンドなど投機筋の売りを契機に始まった国債相場の下落が、国債を保有する欧州の金融機関に莫大な評価損を発生させ、信用収縮と危機が他国に伝染するという点では、全く共通している。

2011年11月30日(水)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111128/224529/?rank_n

 ヘッジファンドには単独で相場を支配し危機を実現するほどの力(資金量)はない。彼らがしたことは既に燃焼性のガスが充満している部屋に火のついたマッチを1本投げ込むことだ。ファンダメンタルな条件が脆弱になり、あるいは市場参加者のリスク持高が一方的に累積しているなど、市場に「燃焼性のガス」が充満している状況にむしろ問題があるのだ。

 政府債務と経常収支赤字の膨張でギリシャ国債が事実上の支払不能状態となり、イタリアやスペインなどの国債にも投資家が不安を感じ始めた今年の夏以降の展開は、やはり市場に「燃焼性のガス」が充満する状況を生み出した。

 ポルトガルの国債は既に「投資不適格」の格付けまで落ち、イタリア国債(10年物、以下同様)の利回りは7%を超え、スペイン国債も6%台、フランス国債でさえ3%後半の利回りとなった。2%前半のドイツ国債との利回り格差、つまりリスク・プレミアムがこれほどに拡大している現状は異常だ。今のユーロ圏の状況はギリシャの政府債務危機の封じ込めに失敗し、「ユーロ圏全体への危機の伝染局面」に移行してしまったと言わざるを得ない。

国債価格の下落が金融システムを破壊する

 国債利回りが2〜3%違うだけでなぜそんなに大騒ぎになるのか、と思う読者がいるかもしれない。額面が100で期間1年の債券なら、2%から5%への3ポイントの利回り上昇は約3%弱の価格下落(100→97)を起こすだけだ。しかし5年物債券なら価格下落は12%、10年物なら20%の価格下落になる。ユーロ圏の政府債務残高は7.8兆ユーロだ(GDP比率で85.4%、2010年末時点)。発行済国債の平均残存期間を5年と仮定し、平均利回りが3ポイント上昇したとして計算すると、98兆円の評価損失が生じる。

 90年代のバブル崩壊後に日本の銀行が12年かけて償却した損失額が約100兆円だから、それに匹敵する損失が生じることになる。既に金融危機と不況で体力を消耗した欧州の民間金融部門が耐えられる損失規模ではない。

 「先進国の国債はインフレになることはあってもデフォルトを起こすことはない」という投資家の信頼感を、ユーロ圏はギリシャに対して「民間投資家の自主的な負担による50%債務カットを合意する」ことでぶち壊してしまったのだ。「絶対大丈夫」の信頼感が1度壊れると、簡単には元に戻らない。

ユーロ圏の弱みを突く投機筋

 しかしよく考えてみると奇妙なことがある。ユーロ圏全体の政府債務はGDP比率で見て日本や米国より低いのだ。政府債務はグロス残高か、ネット残高(政府の金融資産と負債のネットアウト)かで違うが、とりあえずグロス政府債務のGDP比率で比べると、日本約200%、米国100%弱、ユーロ圏約85%であり(2010年末時点)、日本はもとより、米国よりも低い(以下財務省サイト参照)。

(「財務省日本の財政を考える」4−(2)、4−(4))

 年間の財政赤字もGDP比率で見ると、ユーロ圏全体ではやはり日本や米国より小さい(前掲財務省サイト4−(1)参照)。イタリアは財政規律がギリシャに次いで弱いイメージで語られているが、債務残高のGDP比率こそ高いが、実はプライマリー・バランス・ベースでは黒字なのだ。

 またユーロ圏全体の経常収支は現在少し赤字だが、赤字の規模はGDP比率で1%未満に過ぎない。過去10年間、経常収支は概ねプラス・マイナス1%の範囲で変動しており、長期的ではほぼ均衡している。PIIGS諸国は経常収支が赤字であるが、ユーロ圏全体では域外からの資金流入に過度に依存しているわけでもない。

 つまり、財政赤字規模や政府債務残高の高さだけに注目すれば、日本や米国で政府債務危機が先に起こっても不思議ではない。それなのに日本や米国の長期国債利回りは低水準で安定している。一方、なぜユーロ圏で政府債務危機が起こり、それが止まらないのか。ユーロ圏は危機対応において何が間違えているのではないか。その点を次に考えてみよう。

中銀のバランスシートは急膨張した

 ユーロ圏でもPIIGS諸国を中心に2000年代に住宅価格のバブル的高騰が起こり、2007年以降それが弾けた。加えて米国での証券化債券を大量に買った金融機関には巨額損失が発生した。バブル崩壊、金融危機となれば、信用収縮が起こる。それを防ぐために米国ではFRB(連邦準備銀行)、ユーロ圏ではECB(欧州中央銀行)が大規模の流動性供給を行い、中銀のバランスシートは急膨張した。

 実際ECBの資産は、2007年6月から2011年11月の3年間で1.2兆ユーロから2.4兆ユーロに約2倍(増加額126兆円)も膨らんでいる。これは米国のFRBに比べても遜色のない膨張ぶりだ。ところが中身が違うのだ。

 米国のFRBは第1次の量的金融緩和(QE1)で不動産ローン債券(MBS)を大規模に購入し、マネーを供給した。自ら信用リスクを負ってマネーを供給したのでFRBはこれを量的信用緩和(credit easing)と呼んでいる。2010年10月には量的金融緩和第2弾(QE2)として国債6000億ドル(約48兆円)を買うオペレーションを発動した。

 一方、ECBはユーロ発足時の合意に基づいて国債の購入が「禁じ手」になったままだ。ECBの資金供給の大半は金融機関に対する融資と債券の「買いオペ」によるものだ。「買いオペ」とはECBが民間金融機関から国債を買い、約定した期日に売り戻すレポ取引(または現先取引という)によるものである。

 例えば期間が1週間なら、ECBはイタリア国債を買い(対価でマネーを供給)、同時に1週間後に国債を売り戻す(マネーの回収)契約を行う。つまり国債を担保にした融資である。このレポ取引は通常時の金融政策として日本を含む先進国では一般に使用されるものであるが、売りと買いを同時に値決めするので、国債価格の水準自体には直接的な影響を与えない。

ユーロ圏の自縛

 MBSと国債の大規模な買い切りを行って量的な金融緩和を行ったFRBとの違いがここにある。量的緩和に臆病と言われてきた日銀ですら、59兆円の国債保有残高がある(2010年末)。ちなみに日本では日銀の国債引き受けは法律で禁止されているが(財政法第5条、ただし例外規定もあり、実際に利用されている)、流通市場での購入については法律的な制約はない。

 一方ECBの国債保有残高は339億ドル(約3.5兆円、2011年11月18日現在)に過ぎない。国債購入を禁じたECBのルールは、アンチ・インフレを伝統とするドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)からの継承だと言われている。その伝統は、中央銀行による国債引き受け(マネタイゼーション)がハイパーインフレの大禍をもたらした第1次大戦後のドイツのトラウマに起源がある。

 要するにヘッジファンドなどの投機筋は、加盟国の国債価格暴落を阻止したくても、その手段をユーロ圏が自縛していることに乗じているのだ。中央銀行による国債購入は、平時、あるいはインフレ環境に対するルール(中銀の国債購入禁止)としてこそ合理性のあるものだ。ところがマイナスの需給ギャップが存在する現在の金融危機と不況下で教条的に固持されているのだ。並みの景気後退ならそれでかまわないが、今回の状況は「並み」ではない。

 ユーロ圏の消費者物価指数は前年比2%台であり、インフレを懸念する水準にはない。仮にマネタイゼーションで将来インフレが高進する場合には、買った国債を売って金融を引き締めれば良いだけのことだ。

 「この世で一番難しいのは、新しい考えを受け入れることではなく、古い考えを忘れることだ。現在の為政者や知識人は、全て過去の知識人や過去の思考の奴隷だ」こう述べたのはケインズだ。当時、早期に金本位制という教条を捨て、管理通貨制度に移行して、財政・金融の緩和政策を実施した国ほど、1930年代の不況からの回復が早かった。ケインズが今の時代に蘇ってユーロ圏の状況を見たら、同じことを言うかもしれない。

政府・中央銀行vs.ヘッジファンド

 政府・中銀とヘッジファンドが本気で国債価格を巡って攻防すれば、政府・中銀が勝つ。ヘッジファンドの資金力にはしょせん限りがある。一方、中銀はマネーをいくらでも増発できるので自国通貨について資金力は原理上無限だ。ところが相手が必殺技(中銀による国債購入)を封じてくれているのだから、攻める投機筋にこんなありがたいことはない。

 もちろんECBやドイツにも言い分はある。ECBが財政規律の緩い国の国債を買うようになったら、ますます財政赤字に歯止めがなくなるだけで、結局その尻ぬぐいをさせられるのは財政規律を維持している国(ドイツ)になることを懸念しているのだ。嫌がるドイツとの妥協の産物としてEFSF(欧州金融安定化基金)で加盟国の国債発行を支援することになったが、スキームが迂回的になるだけで効果的に機能しそうにない。

 ユーロ圏が共通の財政規律ルールを再構築する必要があることは誰もが認めている。しかしそれには時間がかかる。何しろルール改正には17カ国全部が合意する必要があるのだから。それを待っていれば、国債価格の暴落で金融機関は自己資本が棄損し(金融機関は資産を圧縮せざるを得ないから)、信用収縮で実体経済は再び大不況となるだろう。最終的にユーロが自壊する瀬戸際まできていると思う。

 中長期的な改革と同時に緊急の止血処置(国債価格の回復)が必要なのだ。それができるのはECBだけである。ECBの封印を破り、国債無制限購入を宣言、実行すれば、国債需給は逆転し、市場参加者の目先の不安は解消する。投機筋は売った国債のショートカバー(損切り買い戻し)を強いられるだろう。

日本への教訓

 日本にとってこれは対岸の火事ではない。ユーロ危機が世界経済を再度不況に引きずり込むかもしれないという差し迫った懸念だけではない。政府債務の膨張に歯止めがかからなければ、どの国も必ず将来直面する危険をユーロ圏が先行して見せてくれているのだ。財政再建といっても政府債務残高ゼロを目指すわけではない。そんなことは不可能だし、必要もない。まずは政府債務がGDP比率でこれ以上拡大せずに、安定化できれば良いのだ。

 それでも将来、日本国債の信認が損なわれて金融危機に直面するリスクは十分に残る。ヘッジファンドなど投機筋は千載一遇のチャンスとばかりに売りアタックをかけてくるだろう。その場合には財務省と日銀が一体となって断固として国債の買い支えをすると決めておく必要があるだろう。まさか日銀が「国債価格は財務省の問題だ」などと言って危機対応を誤ることのないことを祈りたい。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111128/224529/?P=4

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