オプションや金融工学関連の書籍に紹介されているのは、債券現物オプションや金利オプションの理論価格の算出方法であり、古典的ブラックモデルや期間構造マッチングなどの解説はあるものの、債券先物オプションとなると、ほとんど情報がありませんでした。私は、原資産が先物であれば、債券の期間構造など考慮せずとも、アメリカンスタイルのオプションに用いる二項モデルで理論価格ができるに違いないと考えたのですが、それを裏付ける学術的な情報源が必要でした。 唯一、JCハル氏の名著、「フィナンシャル・エンジニアリング」に、債券先物オプションは、他の先物オプションと同様の扱いができるというような記述にたどりつき、ようやく光が見えた気持でした。 二項モデルでは、ツリーモデルとして、CRR,LR,JR等の方式がありますが、JCハル氏の入門テキストの"Introduction to futeres and Options Markets, third edition(2001)"に解説されているのは、CRR(Cox, Ross, Rubinstein)なので、これを用います。パラメータとして問題になるのは、ツリーのN個の微小期間を、どの程度の細かさにするかですが、テキストには、「通常N=30で合理的な結果が得られる」と述べられているので、微小期間は、30とします。 もう一つの重要なパラメータは、ボラティリティですが、これは、市場価格からニュートン・ラフソン法でインプライド・ボラティリティを求められるので、問題ありません。 無リスク金利は、FFレートととし、先物オプションの原則と同じく、配当利回りは、無リスク金利に等しいものとします。