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7days,7flowersコミュのご主人様

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電話が鳴って目を覚ました。

時計は午前2時をさしている。着信の表示は、何年か前にインターネットで知り合い、一度だけ会った女の子だった。



『…たつ?』



俺の名前は達生と言う。



「久しぶりやな、どうしたん」



彼女とは何年も連絡をとっていなかった

彼女は電話ごしに ふふ、 と笑ってから、

『なんか懐かしいなぁ。たつの声。その低い声』



このひとは、昨日電話したとしても必ず、第一声は“懐かしいなぁ”だった。そのことが俺にとっても懐かしかった。



「なぁ、今回はほんまに“懐かしい”で合ってるな。あの当時、なんであんなに懐かしい懐かしい言うてたん?」



『だって1時間ぶりでも久しぶりな気がしたんやもん』



俺らは別に恋人という訳ではなかった。

知り合ったのは、“下らない”という言葉の極みみたいなエロチャットだった。


殆んどの人達が自分の欲望を満たす為だけに、コミュニケーションを取る上で相当どうでもいい部分しか使わずにやり取りをしている場所だった。

そんな中で俺らが出会えたのは、多分二人とも切実に助けを必要としていたからだ。

二人とも訳あって、病んでいた。





『今日、わたし、ほんまに死ぬかと思ってん…』



突然彼女が言ったので、俺は黙ってしまった。



『…朝起きたらめっちゃ体が痛くてな、起き上がれへんと思ってそのまま寝て、一回お昼くらいに目覚ましたんやけど少しなんか食べたりしたあと夕方くらいから気がついたら又寝てて…その間に夢をいっぱいみてな、なんか…お母さんが私のことめっちゃ心配しとった…』



彼女の話し方は幼子の様だった。暫く山小屋でひとりぼっちだった人みたいに、堰を切ったみたいに彼女は話し始めた。



『いっぱいいっぱい寝たのに、夜目覚ました時もまだまだめっちゃ眠かってん。もう、体の感覚があんまり無くて、自分の腕が自分のじゃないみたいで、足とかぼんやり痺れてるみたいでな…多分冷静に考えたら貧血やと思うねんけど。』



彼女は“ふー”とため息をついて一呼吸置いた。少し混乱している様だ。



『もうそんなに眠れる筈ないと思うのに、体が勝手に腹式呼吸になってしまうねん。頭ではお風呂入らな、とか思ってんのに、なんか体がすごい動かんくて、心臓だけが変にどくどくして、その内体が無いみたいな感じになってきて、意識がふんわりして、あぁー、もしかしたら本当に死んでしまうのかも、って思って…』



「でも生還した。」



『セイカン?』



「生きて帰って来れた。」



『そう。意識がふんわりした後に、ハッと目を覚ましたの。』



俺にも疲れすぎて動けなくなる日はある、と思ったけれど、言わずにおいた。
彼女はただ聞いてもらいたいのだ。



『違うねん、疲れてたとかじゃないねん』



俺は考えを読まれたかと思ってびっくりした。



『ただ、昨日、昔大好きやったひとが部屋に遊びに来て…別に何もなかってんけど、それが幸せすぎて、なんかあんまり“しあわせー”って思いすぎたから、その感動を何とかして残しときたいと思っていて…そしたら何故かこういう風になってしまった』



俺は寝起きの頭で、彼女の真意をはかろうとしていた。
彼女はなんで電話してきたのだろう。



『その時の部屋の色がめっちゃきれいでさ…びっくりするくらい天気が良くて、うち南向きやからぽかぽかの日差しがいっぱいに差し込んできて、1月やのに窓開けてても平気なくらいで、それが今思えばなんかの象徴みたいで、でもそん時はただただ気持ち良かった…』



彼女は他に電話できる人がいなかったんだろうか。
あの頃みたいに切羽詰まっていて、俺に助けを求めてるんだろうか。



『たつ?』



「うん、聞いてんで。」



彼女が不安そうな声を出したから申し訳なかった。
不安は直ぐに移ってしまう。



『なんか今日死ぬかもと思ったら、たつに電話しとこうって気持ちになったんよ』



彼女はすぐに俺の気持ちを読んでしまう様だ。
昔から、同時に同じことを言ったりすることが多かった。
下らないことでよく笑った。

“又電話してな”と言われたから、電話を切って一分後にまた電話してみたら、“アホやろ!?”って言われた。
ものすごく嬉しそうに。





『たつは私の生涯で1人だけの、ご主人様やったよ』



俺は赤面した。

俺らが出会ったのは、そういう趣向のある人々の集まるサイトだったのだ。

俺は彼女を虐げることで、彼女は俺に服従することで一時の充足を得ていた。

今思えば“ごっこ遊び”の様な、電話ごしの罪のない遊戯だった。
だけどはたちを過ぎてから、“ごっこ遊び”に付き合ってくれる様な仲間を探すのは、難しい。



「お前…今更そういうことを言うなよ。めっちゃ恥ずかしいわ」



彼女はキャハハ、と笑った。



『ごめん、でも、楽しかったよね?あの頃』



俺は素直に、うん、と答えた。

初めて実際に会ったのは、俺の当時住んでいた大阪に彼女が来てくれた時だった。
電話ごしに話すのとは違って、何となくぎこちなく、会話も途切れがちになった。

今度は俺から会いに行く、と約束したまま、何となく連絡は途絶えた。



『もう私達は多分、会われへんよね?』



俺は言葉に詰まった。
多分会おうと思えば不可能ではない。
けれど会う理由も必要も、今となっては無い様な気がした。





『ただ、楽しかったね?って、言いたかったの』



「そうやな、うん。俺も楽しかったわ」



彼女は俺の言葉を聞くと、満足そうに笑った。



『じゃあね、又電話してな?』





そこで唐突に電話は切られた。
ツー、ツー、という電子音だけが残されていた。



俺は又直ぐにかけ直してみたい衝動に駆られた。

だけど何かが俺の指を思い止まらせた。



俺は枕元にそっと携帯を置くと、布団を顎まで引き寄せた。
今夜は冷えるから、彼女も暖かくして、又直ぐに眠りに落ちるといいと思った。



今度は夢も見ないくらい、安心してぐっすりと眠れるといい、と思った。

コメント(6)

“又電話してな”言われたから一分後にまた掛け直すたつくんも
“アホやろ”言いながら、嬉しそうな彼女も、どちらも大好き。

穏やかでとってもほっこりした。なんかいいなー*


恋人とか、そんなんじゃなくたってこういう風にこころ通じあえる関係って素敵だなーって素直に思いました。
切ないとは、ちょっと違う、、やさしい気持ちになれました*
ぼくも今日はぐっすり寝れそう(o゜∀゜o)♪
> (・×・)ともくんさん

レス遅くなってすいません!!コミュニティー参加&丁寧なコメント、心から、ありがとうございます。本当に。


このふたりのこと、そんなふうに思ってもらえたらすっごく嬉しいです。
平たく言えば変態SMカップルなんですけど(笑)それをそんなふうに思ってもらえるなら、ね。


1分後に電話はほんとにあったエピソードなんです。
ちょっといいでしょ?
> 七花さん

変態じゃないですよ。だって“ごっこ遊び”だと認識してるんだもん。
人間の資質みたいなとこから、イカれてるわけではないです。
ただ、たつくんがSだけど優しい…
みたいな感じ*


いいなぁー、うん。かなりいいですね♪
何がいいって、七花さんがそれを覚えていて、そのままやさしい文にしてるのが素敵。
そして、ぼくは好きな人との電話でさえ、対応や内容をまったく覚えてないことに気づいてかなしくなった(;_;)
> (・×・)ともくんさん

「変態」ってどういう意味で捉えてるかって人それぞれだと思うんですけど、私はけっこう変態って好きなんですよね(笑)

昔音楽の専門学校に通ってた時に、すごい先生のパフォーマンスを見ると生徒たちが「あの先生キチガイだもんwww」ってよく言ってて、「常軌を逸してる」って意味でそんだけの褒め言葉もなかなか無いなと思って。

まぁ変態って言うとまたニュアンスが違うんですけど、普通と違う性癖を持ってるのっておもしろくないですか?

どういうことに性的興奮を得るかって、その人の人生が複雑に絡まっていて解明出来ないところがおもしろい…中々浅い関係性では踏み込めないところもまた良いです。


好きな人との会話、大切にしていてもやっぱり時の経過って強くて、どうしても忘れていきますよね。私日記に書き残すことが多いです。
> (・×・)ともくんさん

いやいや、嬉しいですよ!

私も昔ある人の日記を夢中になって読んで、暗記するくらい読み漁って(笑)、そしたら当時足あと昨日があったので向こうも「やたら足あとつけてくるのがいる」ってことで(笑)こちらの日記にコメントをくれて、そこから繋がった縁がもう6年くらい続いています。

彼はもうmixiやめちゃったんですけどね。その人の書いてることはその人自身だと思うから、そこに惹かれるってことは心の繋がりもその中に見いだせるかも、ってことですよね!

後でマイミク申請します〜顔(願)

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