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7days,7flowersコミュの香付きの夢2

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「ねぇなんでそんなに良いにおいがするの?」


直接本人に聞いてみたことがある。


「え、そうなの」

彼は驚いた様に初音を見た。

「香水とかつけてる?」

「特に…」

「柔軟剤?」

「洗剤しか使ってないよ」


だけど洗剤のはずが無いのだ。
服を脱がせて裸の胸に顔をうずめる時も、足のつけねの窪んだところを枕にしてみる時でも、お菓子のおうちに迷い込んだみたいなにおいがする。



「違うんだよ、別にいつもにおいを嗅いでる訳じゃないんだけどね…」

自分の変態趣味が露呈したような気がして言い訳をすると、黙らせる様に頭を抱かれた。


「初音はよく“違うんだよ”って言うよね」

誰にも言われたことがなかったが、言われてみれば確かにそうだった。

「お姫様のお望みなら、いくらでも嗅いでくださって結構ですよ」

おそろしく気障な物言いを相殺するように、冗談めかした笑顔で彼が初音の顔を覗き込んだ。



あの人は時折初音のことを“姫”と呼ぶ。

理由のひとつは占いで「悲恋に身をやつした中世ヨーロッパのお姫様」だった前世がある、と言われたこと(初音は心底驚き感じ入ったが、彼にはツボだったようだ)。

もうひとつは初音の“お姫様気質”に由来しているらしい。
何かをしてもらうのが好きだし、やってもらうことが許されるキャラクターなんだそうだ。

どういう口癖がありどんな性格か、人から言われて初めて自覚するというのは不思議と嬉しい感覚だった。
自分のことなのに。
自分の見ていなかった部分を見ている人がいるという幸福。



「結局何のにおいなんだろう」

彼が帰ってしまった部屋でひとりごちながら、日記の頁をめくる様に色々なことを初音は思い出していた。

テーブルの上に2つグラスが並んでいるのをあえてそのままにしてある。
つまり自分は寂しがりなんだと実感する。
何のにおいだろうと構わない。
このにおいが消えてしまう前に、会いに来てくれるだろうか。



初音は甘い香の中で自分が眠りに引きずりこまれつつあるのをわかっていた。
むせかえる様な一面の花畑の夢を見るだろうか。
それとも単純に願望と欲望のままに、彼の腕の中にいる夢を見るだろうか。

コメント(2)

うわあー甘ーいなーめくるめく甘ーいなー

と、思いつつ読み終えて、でも前に読んだ『たすくくん。』あたりと比べると、ふわ〜っとした中にもどこかアクセントが効いていて、なんでかなあ? と何度か読み返してみたんです。

で、たぶん「このにおいが消えてしまう前に、会いに来てくれるだろうか。」の一文が、後でも先でもなくあの位置にあるのが効いてるんだろうなあ、と。



七花さんて、小説書く時文章のならびをあっちこっち入れ換えたりする?
もし思うまま書いた順がコレならもう、妬けるのなんの(笑)
>> かやおみさん 思うままですよ〜 逆に私いれかえたりすると「あ、それだとここが繋がらないな」「そうするとここは“でも”じゃなく“しかし”だな」「そうするとこの文脈がおかしいし…」「もうだめだ、全部書き直しだ!!」ってなりますもん(笑)

伊坂幸太郎さんとかって緻密に構成を考えて書いてそうですよね。そういう書き方が出来ないのですごいなぁと思ったりします


アクセントがついているのは、たすくくんは別に書きたいことが無かったからですかね(笑)今回のは“香”ってテーマが明確にあったからっていうのもあるかも。

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