７days,７flowersコミュの香付きの夢

何故あの人の体からは甘いにおいがするんだろう。

昨日泊まりに来た彼に貸したスウェットを見つめながら初音は思う。
スウェットからはバラの様な、クランベリーとシナモンクッキーを混ぜたみたいな、柔らかく甘いにおいがする。

一緒にくるまったふとんにもうっすらとそのにおいがついている。初音はふとんに顔を埋めると深呼吸をした。

彼の使ったものを嗅ぐという行為は、何となく変態じみていて自分でもどうかと思う。
だけどひとりの部屋で彼のにおいを感じられるのは貴重だし、それを無視する訳にはいかない（それは使命感に近いかもしれない）。

昨日はとても楽しかった。

彼の使ったスウェットを履いて、彼のにおいのするふとんでごろごろしながら初音は思う。

待ち合わせて水族館に行った。品川駅の近くのこぢんまりとした、美しい水族館。

一様に透き通って青い水槽の中に気をとられていると、背後から肩を抱かれた。

「あっちでイルカのショーだって」

彼に肩を抱かれるのは、馨しいワインを口に含むことと似ている。
目隠しをされていたとしても、この人を間違えることはないだろう。

イルカたちは美しい水しぶきを撒き散らしながら、俊敏で力強い肢体を誇示するかの様に様々な芸を見せてくれた。

初音は隣にいる恋人が自分と同じ様にその空間を楽しんでいることがわかっていた。
この人といるといつも、やたらと楽しい楽しい言い合っている。
楽しいと感じる対象が似ていることもあるが、どうやら彼が隣にいるだけで、楽しさの感受性が増幅される様なのだ。