７days,７flowersコミュの理想的な背中２

いけない、有くんは明日も仕事なのだ。
私は美容師の見習いをしているので月曜が定休、だから明日は休みなのだけど、この人は企業で働いているので明日が週の始まりだ。

気持ちを落ち着かせようと深呼吸をひとつ。
目の前には見慣れた筈の、大好きな人の顔がある。

綺麗なまつげ。
特別に長いという訳ではないけれど、筆ではらったかの様に繊細なカーブを描いたそれは、一斉に下方へと流れている。

私の好きな泣きぼくろが、まつげの指す先にいくつか散らばっている。白い肌。女の人みたい。

この人の顔を見ていると、私は甘いものをいただいている時の様な幸福感を感じる。
濃厚なガトーショコラとか、塩豆だいふくとか。
この眉毛の太さから鼻のちょっと間延びした感じ、唇の厚め加減から肌の柔らかさまで全部、スイーツみたいに甘い。

嬉しくなってきて、じろじろ体の方まで眺めてみる。
頬杖をつきながら。

普段接している分にはあまり感じないのだけど、有くんは胸板がかなり厚い。
肩もしっかりしているし、見た目の印象よりも上半身が発達している（本人曰く「けっこう着痩せするタイプ」らしい）。

だからうちの狭っこいロフトの梯子なんかを上がる時は、とても窮屈な思いをしてしまうことになる。
ちょっと苦笑しながら、あちこち体をぶっつけつつ梯子を昇ってくる有くんを見て、私はつくづく思うのだ。

男の子って、不思議だなぁ。

だって、どうしてこんなに体が大きく、筋肉が固く成長するのだろう。
女の人と同じように生活しているのに。
不思議。

胸に顎を乗せたくなる衝動を堪えながら、私は不思議な生き物のいちばん不思議な部分をそろそろ撫でてみた。
むにょむにょしている。
有くんの顔を見てみたら、口角が少し上がっているのがニヤニヤしているみたいに見えて、私は声を押し殺してクツクツ笑った。