「護憲円卓会議 兵庫」
発足総会と記念シンポの報告
「護憲円卓会議 兵庫」
昨春からほぼ1年かけて話し合いを重ねてきましたが、4月29日午後、神戸市兵庫区の兵庫勤労市民センターで「護憲円卓会議 兵庫」発足総会と記念シンポジウムを開催し、第一歩を踏み出しました。今後ともよろしくご支援ご協力のほど、お願い申し上げます。とり急ぎ、総会とシンポの概要、アンケート集計結果などをご報告いたします。
2014年5月13日
代表世話人 佐藤 三郎
■発足総会
１．4／29，兵庫勤労市民センターの定員72名の椅子は既に満席となり、椅子の追加を行う中で13時15分の定刻数分前に開会の挨拶をおこなう状況でした。
まず、円卓会議発足総会において、2016年参院選までの2年半の期間に 「壊憲阻止」に焦点を絞り、そのための「護憲結集」に向けて、「参加した個人」の連携・交流を通して“つながり”の輪を広げる基本方針を確認しました。具体的には、�顱坊藁鵑鯆兇┐浸毀嘘萋阿力⇒蹇Ω鯲�、市民のネットワーク化のための「場」の設定、 �髻傍賤茲力帆箸澆鯆兇─∪�党・政治団体の憲法観、政治理念などについての説明を聞き、市民との対話・意見交換を求めるための「場」の設定をめざし 〜私たちは歩みだすことになりました。
２．総会では、「すべては一人から始まる。そして大きく、大きくつながっていきましょう！ こうして創られる人の繋がりこそが、不条理なこの社会を変える原動力になるのです」を原点に、円卓会議を自立した個人の「出会いの場」として、ともに考え行動する一歩を踏み出すことを呼び掛けた「発足の呼びかけ」を採択。引き続き「会則」「活動の基本方針」「2014活動計画」を承認し、最後に、代表世話人に佐藤三郎（神戸市須磨区）、準備委員会にかかわってきた井上 守（神戸市東灘区） 櫻井幡雄（神戸市垂水区） 高木文子（神戸市北区） 出口俊一（神戸市長田区） 東條健司（神戸市須磨区） 松本 誠 （明石市） 室田正則 （姫路市） 守田基師子（神戸市須磨区） 吉岡治子（神戸市須磨区）の１０氏を当面の世話人とし、今後も引き続きその拡充を呼びかけることを決めました。
■記念シンポジウム
引き続いておこなわれたシンポジウムでは、政井孝道・元朝日新聞論説委員、広原盛明・元京都府立大学学長、岡本仁宏・関西学院大学法学部教授、松本誠・市民まちづくり研究所代表の四氏がパネリストとして約100分にわたり問題提起が行われました。
なお、発足記念シンポジウムの動画記録および当日の参加者に配布したレジュメなどは、Facebookでリンクをシェアしています。くわしくご覧になりたい方は「https:/
●政井孝道さんからの問題提起
日本保守層の新動向と世界の目
〜特異な展開で安倍内閣の何がわかったか〜
安倍政権の特異な展開（�／栃栃歇蕁疇�米同盟強化➔集団的自衛権容認➔自衛隊海外派兵、�⇔鮖貿Ъ噂纏襦畧鏝絅譽検璽爐�らの脱却➔特に「慰安婦」問題）に対し、アジアからの批判と、米国の困惑・批判➔矛盾表面化）の数ヶ月につき報告する。2006・07年の安倍は靖国・慰安婦・お腹痛で辞めたが、今回は2013年12月26日靖国へ、それは世界の問題となった。この歴史問題を日本の保守がどう見るかによって、日本の今後は大きくかかわってくる。日本の保守が安倍により大きく変えられようとしている事態を、私たちは軽視してはならない。
2013年12月以降の中韓―日の対立拡大、2014年3月頃からの「戦後史の否定をしながら，日米同盟強化」、この本質的矛盾を無視する安倍に対し、米➔「失望」ではない「怒り」（訪米中の米マスコミ発言）を表明、それがオバマからの日韓会談の「強制的」あっせんとなっている。 4月23日オバマ国賓来日、与党はどこか（公明、維新の動きに注目がいる）。 安倍の「対米での敗北の恒久化、国内とアジアへは敗戦の否定」は、米「主従」から「親子」論（甘え）への転換であり、オバマの本音は「ガキはゴチャゴチャ言わずに、言われた通りにしろ」（『世界』5月号の「おもしろうて、やがて悲しきアベノクラシー」白井 聡）だ。
安倍は尖閣列島に神経を集中しており、5月報告予定の「安保法制懇」は中国との対峙に本腰を入れている。歴史認識問題は、米の干渉にも関わらず「国民物語」として進行しており、そこでもめ事があれば一気に灯が付く状況にある。何か起きたときウロウロしない心準備がいる。60年安保の時、日本の革新が言った「日中共同の敵はアメリカ帝国主義」的認識は変わっていないのではないか。中国は大きく変わっており、世界の覇権の行方も混沌としている現在、東アジアでは帝国主義戦争（領土争い）をしないとの理解や国際的な位置づけについても考え直す必要がある。
●広原盛明さんからの問題提起
最悪の改憲政権なのに、なぜ安倍支持率が高いのか
〜護憲世論と安倍支持率のギャップについて考える〜
2014年2月〜3月朝日新聞が実施した世論調査によれば、この1年間の護憲世論は過去のいかなる時期よりも顕著な高まりを見せている。2013年3月〜4月実施の調査と比較した数字を見ると、
✰憲法9条「変える方がよい」39％➞29％、「変えない方がよい」52％➞64％
✰集団的自衛権「行使できない立場を維持する」56％➞63％、「行使できるようにする」33％➞29％
✰憲法96条「衆参過半数の議員の賛成で改正提案できるよう条件を緩めること」に「賛成」38％➞29％、「反対」54％➞63％
✰憲法を「変える必要がある」54％➞44％、「変える必要はない」37％➞50％
…等の数字が並ぶ。
この朝日の調査は、よく行われる電話による聞き取り調査ではなく、文書による郵送調査で、9条の改正是非を問う際には、条文そのものを明示し内容を理解のうえで数日後に文書回答をするものであり、回収率は73％(1年前68％)と極めて高く，この調査の価値は高い。上では反動の嵐が吹きまくっているが、国民の質は歴史的な変動が生じている。
一方、安倍内閣を「支持する」66％➞52％、「支持しない」24％➞39％であり、14％低下がみられるが，過半数の維持は歴代内閣に比べ依然高い。「憲法」は基本課題だが多くの国民の優先課題ではなく、「アベノミクス」への期待効果（その内によくなるかも…）が、この護憲世論と安倍支持率のギャップを生み出している。
当面の護憲運動の力点は、今広がりつつある護憲意識の流れを加速させるために、従来の既成革新勢力の結集という“求心型運動”を超え、護憲意識を持つ市民諸階層（保守・無党派など）とも交流する“拡散型運動” への転換が求められている。
●岡本仁宏さんからの問題提起
市民活動・政治活動 と「護憲」「改憲」
「今の憲法スピリットを生かす多数派を如何にしてつくりだすか」 を考えるために、市民活動と政治活動の動向をつかんでおきたい。まず、市民活動の水準は高まりや停滞もあり、錯綜した状況だ。一方では、NPO法人は全国に5万（9条の会７千、コンビニ4.8万）となり、公益法人制度改革(110年ぶりの市民社会構造の大改革)により主務官庁制でない民間有識者の判断で公益社団法人・公益財団法人が出現した。これらの社会セクターへの寄付の税額控除等の税制改革も見逃してはならない。他方、労組・自治会・PTAなど団体加入は落ちているし、ボランティア行動者率も停滞している。また、市民の政治的関心は増えておりながら、政治参加行動は停滞している。
二つの社会的課題を重視すべきだ。第一に、貧困と格差の問題では、いろいろなデータがあるが、若者層では格差が拡大しており、出生率の低下にも大きな影響がある。第二に、グロ−バリズムの中での若者のナショナルズムのひろがりに注目すべきだ。そして、構造的な変化である人口減少、地方の瓦解等の構造変化に注目することが必要だ。
「護憲」「改憲」という問題軸の射程をはかる場合、政治舞台の議題設定でどう主導権をとるかを考える事がいる。改憲派は争点をどんどん押し出してくるのに対し、護憲派の争点は「守り」になり、革新ではなくなっている。若い世代にこれでは訴えられるだろうか。領土紛争などで戦争に巻き込まれる危険性は高まっているが、そういう事態に対してうどうするかの答えを、憲法スピリットを生かしたいと考えている勢力が持っていないのは駄目だ。本来、憲法を「変える」こと自体が駄目ではなく，悪く変えてはいけないということのはずである。が、憲法のスピリットを生かし、国のあり方を革新しようとする積極的な提案がなければ、主導権はとれない。
「格差と貧困」「ナショナリズム」という二つの争点に対して、護憲派は積極的提案を示せるのか。また、憲法典以外でも重要な憲法的改革が必要なことは多い。例えば、県市議会議員選挙で候補者たちは選挙ビラを作れない。公選法で禁止されているからだが、こんなことは日本だけである。国政選挙でも選挙区300万、比例区600万と供託金が世界で類を見ない高額である。こんな公職選挙法は憲法違反であるし、民主主義の根幹に関わっている。そんな身近なところから政治を革新していく具体的運動を進め、憲法の精神を守りながら、憲法体制をよりよく変えていく提案が必要だと思う。
●松本 誠さんからの問題提起
地方から再構築する政治改革の道筋
〜足下の自治体に市民自治のうねりを〜
市民活動の現場から見て、運動をどう展開すればよいかをミクロな課題で暮らしの手の届く範囲で、暮らしの現場からどう変えていくかを問題提起したい。
戦後70年、日本の民主主義は多くの問題を抱えながらも、確実に前進していると私たちは見なければならない。 1989年に始まるこの四半世紀は、冷戦構造の崩壊と大国主導の国際政治が終焉し、国内では自民党一党支配が終わり、1995年を契機に中央集権型政治から地方分権をめざす時代となり、2000年の地方分権一括法の施行により国を挙げて地方自治の確立と住民自治へ動き始めた。政治の混迷と右傾化が目立つ現在は、次の新しい政治と社会の仕組みを生み出す過渡期の「生みの苦しみ」の時期と言える。
1970年代（高度成長期）の住民運動から90年代（バブル崩壊後）の住民・市民運動は、質的にも量的にも大きく転換している。市民運動は中央政党や既存組織の主導や依存から脱却し、自立してきている。無党派層の増大は,既存政党や組織の新たな時代への転換立ち後れの象徴でもある。
私は、生まれ、暮らし、骨を埋める地元明石での25年におよぶ市民自治をめざす運動を通じて、自治体のすそ野における市民・住民の住民自治を求める取り組みの深化から、この国の頂点に君臨する国政を変えていく道筋が見えてきたように思う。
自治体の憲法にあたる自治基本条例制定の動きが始まる中で、半年の審議でおざなりの条例づくりをしようという市の動きを逆手にとり、住民自治研究会をつくり条例検討委員会と並走、参加しながら3年をかけて基本条例が施行された。以降は、「市民の参画と協働」「情報共有」を市政運営の原則とすることを定めた基本条例の遵守を求め、さまざまな具体的な問題を追求、提言してきた。市長選では市民がつくった市民の政策である「市民マニフェスト」に賛同し実現を公開の場で約束した候補を支持して当選させた。しかし、就任後には駅前再開発の全面見直しを放棄して推進する市長に対し、住民投票の実施を求め、法定の4倍を超える署名を突きつけた。「地方自治は民主主義の学校」というが、直接関わった市民は主権者として政治や行政に対峙する「技」を身につけている。
護憲・改憲の課題を掲げるだけでは、憲法を守ろうという「確信意識層」と「心情的意識層」以外には広がらない。65％の護憲派の多くを占める「日和見意識層」や「傍観意識層」を巻き込むには、私たちの暮らしの現場から、日々の地域的課題を解決する取り組みから憲法課題を理解し、国政の変革につなげるしかない。
発足総会と記念シンポの報告
「護憲円卓会議 兵庫」
昨春からほぼ1年かけて話し合いを重ねてきましたが、4月29日午後、神戸市兵庫区の兵庫勤労市民センターで「護憲円卓会議 兵庫」発足総会と記念シンポジウムを開催し、第一歩を踏み出しました。今後ともよろしくご支援ご協力のほど、お願い申し上げます。とり急ぎ、総会とシンポの概要、アンケート集計結果などをご報告いたします。
2014年5月13日
代表世話人 佐藤 三郎
■発足総会
１．4／29，兵庫勤労市民センターの定員72名の椅子は既に満席となり、椅子の追加を行う中で13時15分の定刻数分前に開会の挨拶をおこなう状況でした。
まず、円卓会議発足総会において、2016年参院選までの2年半の期間に 「壊憲阻止」に焦点を絞り、そのための「護憲結集」に向けて、「参加した個人」の連携・交流を通して“つながり”の輪を広げる基本方針を確認しました。具体的には、�顱坊藁鵑鯆兇┐浸毀嘘萋阿力⇒蹇Ω鯲�、市民のネットワーク化のための「場」の設定、 �髻傍賤茲力帆箸澆鯆兇─∪�党・政治団体の憲法観、政治理念などについての説明を聞き、市民との対話・意見交換を求めるための「場」の設定をめざし 〜私たちは歩みだすことになりました。
２．総会では、「すべては一人から始まる。そして大きく、大きくつながっていきましょう！ こうして創られる人の繋がりこそが、不条理なこの社会を変える原動力になるのです」を原点に、円卓会議を自立した個人の「出会いの場」として、ともに考え行動する一歩を踏み出すことを呼び掛けた「発足の呼びかけ」を採択。引き続き「会則」「活動の基本方針」「2014活動計画」を承認し、最後に、代表世話人に佐藤三郎（神戸市須磨区）、準備委員会にかかわってきた井上 守（神戸市東灘区） 櫻井幡雄（神戸市垂水区） 高木文子（神戸市北区） 出口俊一（神戸市長田区） 東條健司（神戸市須磨区） 松本 誠 （明石市） 室田正則 （姫路市） 守田基師子（神戸市須磨区） 吉岡治子（神戸市須磨区）の１０氏を当面の世話人とし、今後も引き続きその拡充を呼びかけることを決めました。
■記念シンポジウム
引き続いておこなわれたシンポジウムでは、政井孝道・元朝日新聞論説委員、広原盛明・元京都府立大学学長、岡本仁宏・関西学院大学法学部教授、松本誠・市民まちづくり研究所代表の四氏がパネリストとして約100分にわたり問題提起が行われました。
なお、発足記念シンポジウムの動画記録および当日の参加者に配布したレジュメなどは、Facebookでリンクをシェアしています。くわしくご覧になりたい方は「https:/
●政井孝道さんからの問題提起
日本保守層の新動向と世界の目
〜特異な展開で安倍内閣の何がわかったか〜
安倍政権の特異な展開（�／栃栃歇蕁疇�米同盟強化➔集団的自衛権容認➔自衛隊海外派兵、�⇔鮖貿Ъ噂纏襦畧鏝絅譽検璽爐�らの脱却➔特に「慰安婦」問題）に対し、アジアからの批判と、米国の困惑・批判➔矛盾表面化）の数ヶ月につき報告する。2006・07年の安倍は靖国・慰安婦・お腹痛で辞めたが、今回は2013年12月26日靖国へ、それは世界の問題となった。この歴史問題を日本の保守がどう見るかによって、日本の今後は大きくかかわってくる。日本の保守が安倍により大きく変えられようとしている事態を、私たちは軽視してはならない。
2013年12月以降の中韓―日の対立拡大、2014年3月頃からの「戦後史の否定をしながら，日米同盟強化」、この本質的矛盾を無視する安倍に対し、米➔「失望」ではない「怒り」（訪米中の米マスコミ発言）を表明、それがオバマからの日韓会談の「強制的」あっせんとなっている。 4月23日オバマ国賓来日、与党はどこか（公明、維新の動きに注目がいる）。 安倍の「対米での敗北の恒久化、国内とアジアへは敗戦の否定」は、米「主従」から「親子」論（甘え）への転換であり、オバマの本音は「ガキはゴチャゴチャ言わずに、言われた通りにしろ」（『世界』5月号の「おもしろうて、やがて悲しきアベノクラシー」白井 聡）だ。
安倍は尖閣列島に神経を集中しており、5月報告予定の「安保法制懇」は中国との対峙に本腰を入れている。歴史認識問題は、米の干渉にも関わらず「国民物語」として進行しており、そこでもめ事があれば一気に灯が付く状況にある。何か起きたときウロウロしない心準備がいる。60年安保の時、日本の革新が言った「日中共同の敵はアメリカ帝国主義」的認識は変わっていないのではないか。中国は大きく変わっており、世界の覇権の行方も混沌としている現在、東アジアでは帝国主義戦争（領土争い）をしないとの理解や国際的な位置づけについても考え直す必要がある。
●広原盛明さんからの問題提起
最悪の改憲政権なのに、なぜ安倍支持率が高いのか
〜護憲世論と安倍支持率のギャップについて考える〜
2014年2月〜3月朝日新聞が実施した世論調査によれば、この1年間の護憲世論は過去のいかなる時期よりも顕著な高まりを見せている。2013年3月〜4月実施の調査と比較した数字を見ると、
✰憲法9条「変える方がよい」39％➞29％、「変えない方がよい」52％➞64％
✰集団的自衛権「行使できない立場を維持する」56％➞63％、「行使できるようにする」33％➞29％
✰憲法96条「衆参過半数の議員の賛成で改正提案できるよう条件を緩めること」に「賛成」38％➞29％、「反対」54％➞63％
✰憲法を「変える必要がある」54％➞44％、「変える必要はない」37％➞50％
…等の数字が並ぶ。
この朝日の調査は、よく行われる電話による聞き取り調査ではなく、文書による郵送調査で、9条の改正是非を問う際には、条文そのものを明示し内容を理解のうえで数日後に文書回答をするものであり、回収率は73％(1年前68％)と極めて高く，この調査の価値は高い。上では反動の嵐が吹きまくっているが、国民の質は歴史的な変動が生じている。
一方、安倍内閣を「支持する」66％➞52％、「支持しない」24％➞39％であり、14％低下がみられるが，過半数の維持は歴代内閣に比べ依然高い。「憲法」は基本課題だが多くの国民の優先課題ではなく、「アベノミクス」への期待効果（その内によくなるかも…）が、この護憲世論と安倍支持率のギャップを生み出している。
当面の護憲運動の力点は、今広がりつつある護憲意識の流れを加速させるために、従来の既成革新勢力の結集という“求心型運動”を超え、護憲意識を持つ市民諸階層（保守・無党派など）とも交流する“拡散型運動” への転換が求められている。
●岡本仁宏さんからの問題提起
市民活動・政治活動 と「護憲」「改憲」
「今の憲法スピリットを生かす多数派を如何にしてつくりだすか」 を考えるために、市民活動と政治活動の動向をつかんでおきたい。まず、市民活動の水準は高まりや停滞もあり、錯綜した状況だ。一方では、NPO法人は全国に5万（9条の会７千、コンビニ4.8万）となり、公益法人制度改革(110年ぶりの市民社会構造の大改革)により主務官庁制でない民間有識者の判断で公益社団法人・公益財団法人が出現した。これらの社会セクターへの寄付の税額控除等の税制改革も見逃してはならない。他方、労組・自治会・PTAなど団体加入は落ちているし、ボランティア行動者率も停滞している。また、市民の政治的関心は増えておりながら、政治参加行動は停滞している。
二つの社会的課題を重視すべきだ。第一に、貧困と格差の問題では、いろいろなデータがあるが、若者層では格差が拡大しており、出生率の低下にも大きな影響がある。第二に、グロ−バリズムの中での若者のナショナルズムのひろがりに注目すべきだ。そして、構造的な変化である人口減少、地方の瓦解等の構造変化に注目することが必要だ。
「護憲」「改憲」という問題軸の射程をはかる場合、政治舞台の議題設定でどう主導権をとるかを考える事がいる。改憲派は争点をどんどん押し出してくるのに対し、護憲派の争点は「守り」になり、革新ではなくなっている。若い世代にこれでは訴えられるだろうか。領土紛争などで戦争に巻き込まれる危険性は高まっているが、そういう事態に対してうどうするかの答えを、憲法スピリットを生かしたいと考えている勢力が持っていないのは駄目だ。本来、憲法を「変える」こと自体が駄目ではなく，悪く変えてはいけないということのはずである。が、憲法のスピリットを生かし、国のあり方を革新しようとする積極的な提案がなければ、主導権はとれない。
「格差と貧困」「ナショナリズム」という二つの争点に対して、護憲派は積極的提案を示せるのか。また、憲法典以外でも重要な憲法的改革が必要なことは多い。例えば、県市議会議員選挙で候補者たちは選挙ビラを作れない。公選法で禁止されているからだが、こんなことは日本だけである。国政選挙でも選挙区300万、比例区600万と供託金が世界で類を見ない高額である。こんな公職選挙法は憲法違反であるし、民主主義の根幹に関わっている。そんな身近なところから政治を革新していく具体的運動を進め、憲法の精神を守りながら、憲法体制をよりよく変えていく提案が必要だと思う。
●松本 誠さんからの問題提起
地方から再構築する政治改革の道筋
〜足下の自治体に市民自治のうねりを〜
市民活動の現場から見て、運動をどう展開すればよいかをミクロな課題で暮らしの手の届く範囲で、暮らしの現場からどう変えていくかを問題提起したい。
戦後70年、日本の民主主義は多くの問題を抱えながらも、確実に前進していると私たちは見なければならない。 1989年に始まるこの四半世紀は、冷戦構造の崩壊と大国主導の国際政治が終焉し、国内では自民党一党支配が終わり、1995年を契機に中央集権型政治から地方分権をめざす時代となり、2000年の地方分権一括法の施行により国を挙げて地方自治の確立と住民自治へ動き始めた。政治の混迷と右傾化が目立つ現在は、次の新しい政治と社会の仕組みを生み出す過渡期の「生みの苦しみ」の時期と言える。
1970年代（高度成長期）の住民運動から90年代（バブル崩壊後）の住民・市民運動は、質的にも量的にも大きく転換している。市民運動は中央政党や既存組織の主導や依存から脱却し、自立してきている。無党派層の増大は,既存政党や組織の新たな時代への転換立ち後れの象徴でもある。
私は、生まれ、暮らし、骨を埋める地元明石での25年におよぶ市民自治をめざす運動を通じて、自治体のすそ野における市民・住民の住民自治を求める取り組みの深化から、この国の頂点に君臨する国政を変えていく道筋が見えてきたように思う。
自治体の憲法にあたる自治基本条例制定の動きが始まる中で、半年の審議でおざなりの条例づくりをしようという市の動きを逆手にとり、住民自治研究会をつくり条例検討委員会と並走、参加しながら3年をかけて基本条例が施行された。以降は、「市民の参画と協働」「情報共有」を市政運営の原則とすることを定めた基本条例の遵守を求め、さまざまな具体的な問題を追求、提言してきた。市長選では市民がつくった市民の政策である「市民マニフェスト」に賛同し実現を公開の場で約束した候補を支持して当選させた。しかし、就任後には駅前再開発の全面見直しを放棄して推進する市長に対し、住民投票の実施を求め、法定の4倍を超える署名を突きつけた。「地方自治は民主主義の学校」というが、直接関わった市民は主権者として政治や行政に対峙する「技」を身につけている。
護憲・改憲の課題を掲げるだけでは、憲法を守ろうという「確信意識層」と「心情的意識層」以外には広がらない。65％の護憲派の多くを占める「日和見意識層」や「傍観意識層」を巻き込むには、私たちの暮らしの現場から、日々の地域的課題を解決する取り組みから憲法課題を理解し、国政の変革につなげるしかない。
|
|
|
|
|
|
|
|
JCPと国民統一戦線の建設 更新情報
-
最新のアンケート
JCPと国民統一戦線の建設のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています
人気コミュニティランキング
- 1位
- 極楽ウォーキング
- 1045人
- 2位
- 2024年NHK大河ドラマ｢光る君へ｣
- 724人
- 3位
- 写真を撮るのが好き
- 208281人