眠れぬ夜の物語コミュのある人と長老の話。

匿名希望#

顔もさらけ出したブログを開くと
誰かの楽しそうな日常が広がっている

なのに
匿名希望になったならば
心の闇が露わになる

なんでなんだろう？

あなたの闇はどれくらいですか？

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【ある人の話】

闇の深さを黒さを伝えようとした人がいました。

でもうまく伝わらず
余計苦しくなりました。

そこで思ったのです。

伝わるわけはないと。

だってあの子は自分じゃないから。

ある人は人生に絶望しました。

ある日、
歩いていたある人の目の前に突然長老が現れました。

長老は優しく問いかけました。

「どうしたんじゃ？そんな絶望的な顔をして」

「きいてくれますか？」

「はなしてみよ」

ある人は自分の闇を長老に話しました。

長老は頷きながらも黙ってそれを聞いていました。

「だれもわかってくれない。もう嫌だ。死にたい」

ある人はそう最後に言いました。

「そうかそうか」

頭を撫でながら長老はある人に問いかけました。

「主は死にたいのか？」

「ええ！こんな人生なら！」

「じゃあ死ねばよかろう」

ある人は頭にきて長老を睨みます。

「あなたは何もわかってない！」

「だって主は死にたいのじゃろう？」

「別に死にたいわけじゃない！」

「じゃあ生きたいのかの？」

「こんな人生なら生きたくもないよ！」

「ほほう。わかった。主の人生は今ここでおわった。わしが見届けた。もう主の人生はこれで終いじゃ。何を言ってもおわったのじゃ。いいことも悪いことも」

「…何ですか？とつぜん！」

「おわったのじゃ。これから先の主の人生はわしがもらった。文句なかろう？主は自分の人生がいらないと言った」

「…もう好きにしてください。どうでもいいよ」

「しかと聞いたぞ。ではまず主の母に電話をするのじゃ。そして主が生まれた日のことを聞きなされ」

「嫌だよ、なんでそんなこと！」

「わしがもらった人生じゃ。好きに使ってよかろう」

ある人は長老にそう言われ、しぶしぶ母親に電話をしてみます。

電話口で母の声が甲高く響きます。

「どうしたの～？珍しいわね！電話してくるなんて」

「あのさ、生まれた日のことを知りたいんだけど」

「何よ～とつぜん！」

「いいから」

「あなたが生まれたのは朝方で、とても寒い日だったの。生まれるまで丸一日かかって、そりゃあ大変だったわよ。へその緒が首に巻きついてたし、最初息もしてなかったの。でも大変だった分感動したわ。生まれてきてくれてありがとう～！って思ったわ！初孫だったし皆とても喜んだのよ」

「そうなんだ…」

「そうよ。そういえばちゃんと食べてるの？鼻声だけど、風邪ひいてるんじゃない？」

「そんなんじゃないよ。…ありがとう。母さんも風邪ひかないようにね」

電話を切ると、何か胸にこみ上げてくるものがありました。

「どうじゃったかの？」

「…どうもこうもないですよ…グズっ」

「続いて、友人に電話せよ」

「まだするんですか？」

「無論。友人はおるかの？」

「…いるにはいますけど。一人だけ」

友人は仕事が忙しく、ある人とどんどん差ができてしまっているのでした。

「…電話したくないです」

「君はもう死んだのじゃ。よって発言権はない。最近会っておらんじゃろう？久しぶりに電話してみるのじゃ」

「…わかったよ…横暴だなぁ」

「あ、電話した時必ず友人にお礼を言うことを忘れずにな」

「なんですか、それ」

「ほら、かける」

「ハイハイ」

ある人が電話をかけると友人はなかなか出ません。
諦めて切ろうとした時に「はい」という声がします。

「あ、あ～…ごめん。いきなり！」

「…どうしたんだ？」

「あの、いや、どうしてるかなぁ～って思ってさ」

「実は…会社、首になったんだ。もうお終いだよ俺…嫁に何て言えばいいんだ…」

「…どうして？！あんなにがんばってたじゃないか！」

「上司とウマが合わなくて、ことごとく失敗続きだったよ。少しお前にも見栄張ってたしな。俺には実力はなかった。もう生きるの嫌だよ…」

「何言ってんだよ？お前がいなくなったら俺はどうすりゃいいんだ？お前にずっと俺は支えられてきたんだ！お前がいたから自分の未熟さにも気づけたし、がんばろうって思えたんだ。お前にすごい感謝してんだよ。お願いだからこの先もずっと友達でいてくれ！」

「…もうダメなんだよ」

「ダメじゃない！…いや、ダメでいい！ダメで何が悪いんだ？生きてくれさえすればいい！自分の為に生きるのが嫌なら、嫁さんと俺のために生きてくれ！」

しばらく友人は沈黙していました。
やがてポツリと呟きます。

「…ダメでいいか」

「おう」

「そうだよな…。ダメで何が悪いんだ」

「そうだよ」

「サンキュ。お前の言葉で明日新聞に載らずに済んだよ」

「冗談言うなよっ！？」

「ははは。また余裕が出てきたら飯でも行こうぜ」

「もちろん！」

「じゃあな」

「あ！」

「なんだ？」

「ありがとな！」

「なんでお前が礼言うんだよ？」

「いや…言いたくなったんだ」

「変な奴だな。俺のほうこそありがとう」

長老は言いました。

「新しい命はどうかね？」

「最高です…」

ある人は泣いていました。

「そうかそうか。それは本来は君の命なのだ。命の使い方というものは色々あるんじゃよ。そのどれを選択するかは主の自由」

「はい」

「人生は誰のものでもない。自分のものなのじゃ。でも時にの、命のことが見えなくなるのじゃ。なぁに、主だけじゃない。誰にだってある。そんな時は自分だけの為に生きるのをやめるのじゃ。それは自分の為に生きるのをやめることじゃない。大切にしたいものの為に生きるのじゃ。もちろんその中には必ず自分も含まれておる。難しいかの？」

「…少し」

「生きることは初めてばかりじゃ。みんなそうじゃ。時に前世の記憶がある人もおるがの、あれは稀なのじゃ。どんな人も初めてでわからないことだらけなのじゃ。完璧な人などおらぬ。だからこそ面白いのじゃよ」

「そうかもしれません…」

「主の人生はまだわしがもらっていいのかの？」

「いえ、自分の人生ですから人生で生きていきます」

「そうかの。じゃあもうわしは主に用はない。さらばじゃ」

「はい、あ…おじいさんは誰なんですか？」

「わしかの？わしは…主が長く生きていれば自然と出会えるじゃろう」

「？」

「ふぉっふぉっふぉ」

目の前にビューッと強い風が吹いたかと思うと、長老は消えていました。

ある人は思いました。

長老に会う為に生きようと。