新作映画公開情報!!コミュの君と歩こう

この３日間(そしてあと２日続く)夜のユーロスペースに通い詰めた結果分かった事は、石井裕也監督作品に登場する男たち女たちは皆、どこか私たちをイライラさせるものを持っているという事だ。
「反逆次郎の恋」で好きな人と同棲するようになっても全く相手の思いを汲み取れずにいる男、「ガール・スパークス」で世のあらゆるものに苛立ちを抱き、その原因が分からず小さな身体に鬱屈を抱えるしかない女子高生、そして長年親としてあるべき振る舞いを模索し、その不器用(と一部思慮を欠いた行動。それもまた男という生き物なのだろうか)が娘を苛立たせてしまう父親、「ばけもの模様」で亡くなった息子の不在を認められずに現実から逃避し(夫もまた別の形で逃避している)、その結果全く関係ない人物を自身の衝動に巻き込んでいく女、それに付き合わされる自主性の極めて薄い男…他にもまだまだいるけれど、とにかく彼らが周囲の人間たちと紡ごうとしてどこか紡ぎきれずにいる不器用な関係に自己を投影して、私たちは苛立つ。現在絶賛公開中の「川の底からこんにちは」はその紡ぎきれずにいる部分を女のバイタリティーと"好きな人をちゃんと好きになりたい"という思いで越えていったからこそ傑作なのだが、商業デビューを果たして石井裕也作品はいかような変質を遂げたのか、実に興味深い(まるで学生映画時代から見ているような口振りですみません)。

「ノリと勢いだけで駆け落ちした、片田舎の英語女教師の明美と冴えない男子高校生ノリオ。全てを捨てて東京に出てきたが、二人の新生活に光は見えない。明美はエステ通い・ジム通いを装いカラオケ店でバイト。明美から弁護士になるよう指示されたノリオは図書館通いで猛勉強を開始する。犬の糞の世話をノリオに迫るお姉さん、ノリオをプロ野球選手と信じて疑わない天涯孤独の少年、妊娠した駆け落ち志望の女子高校生…心優しき孤独な人々との出逢いと、試行錯誤の同棲生活。そんな中、明美の｢嘘｣がノリオに発覚。ノリオは明美の気持ちを理解しはじめ、二人の微妙で奇妙な関係に変化が生まれていく」
これはチラシのストーリー紹介ですけど、まあ用心してかかる事を強く薦めます。

５月15日よりユーロスペースにてレイトショー、以降順次公開
2009年/日本/90分/HD/1:1.85
配給・宣伝/Thanks lab.