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刀川えいり先生ファンコミュコミュのきよら&ひな子SS 【shooting star】

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「あっ! 見て見て、きよらちゃん見て!!」
「は?」

 ひな子が突然大声をあげて、頭上を指差した。
 俺はその指先の方向に目を向けたが、あるのは何の変哲もない、闇に包まれた空だけだった。

「やーん、消えちゃったー!」
「なにが?」
「流れ星だよ!! テレビで言ってたでしょ、今日は流れ星がたくさん見れる日なんだって! えっと、なんだっけ、ペル……、ペルシャワン流星群?」
「……へー」

 俺はこういう話に興味はないから正解は知らないが、ひな子は絶対に間違っている。
 そう思ったが、下手に突っ込むと話が長くなりそうなので、敢えてなにも言わないことにした。

「きよらちゃん、流れ星にお願い事する?」

 声をはずませて、ひな子が俺の顔をのぞきこんできた。

「しねーよ別に」
「えええええっ! なんで? どーして? きよらちゃんって無欲? すごーい」
「だいたいなあ、流れ星に願い事して叶ったやつなんて本当にいるのかよ。ただの迷信だろ」
「もー、きよらちゃんは夢がないなぁ。どーせ、きよらちゃんがお願い事するって言ったら、この間ラジオの懸賞に応募してたわさビーフ1年分が当たりますように! とかだろーけどねっ」
「…………おまえ、なんで知ってるんだ……」
「うふふ」
「…………」


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「じゃあね、きよらちゃん! 夜中の1時から4時までがピークなんだって! 今日はお月さまがないからきっとたくさん見えるよ。わさビーフ当たれ〜ってお願いするんだよー!」
「あー、はいはい、気が向いたらな」

 もー、と苦笑しながら、ひな子は自分の家に入っていった。俺はその姿を見送る。
 カーテンの隙間からこぼれているのは、やわらかな明かり。
 ただいま、と言うひな子を出迎えるあたたかい声。

 きっとあいつは、母親の作った夕飯を父親と三人で囲みながら、今日調理実習で作った菓子のことだとか、俺との帰り道での出来事を話すのだろう。

 俺は施錠された扉を開け、誰もいない空間に向かってつぶやいた。


「……ただいま」


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 風呂からあがってふと時計をみると、ちょうど深夜1時を5分ほどまわったところだった。
(そういや、流星群のピークって……)
 まだ眠れそうにない。それまで夜空を眺めるのも、たまにはいいだろう。
 部屋の電気を消して、窓辺に立つ。部屋のあかりを消して窓をそっと開けると、視界の端でなにかが弧を描いて光った。今のは……。


「あ〜〜! やっぱり起きてる〜!」

「ぎゃっ!!」

 突然気配もなしに背後から声がして、俺は飛び上がった。
 振り返ると、ひな子がむくれながら俺を見つめていた。


「なにそれ〜? お化けでも見たような顔して! まるでひな子が脅かしたみたいじゃない!」
「実際脅かしたんだよ!! なんだおまっ……、……鍵閉まってただろ!?」
「うふふふ」
「………………」
「そんなことより、なんだかんだ言ってきよらちゃんも気になるんでしょ? 一緒に流れ星見ようよ! 明日はおやすみだし、夜更かししても大丈夫だよね! はいっ! きよらちゃんこれ好きでしょ? ひな子のはちみつ入り特製レモネードと、マフィン! これ調理実習で作ったの、アーモンド入ってておいしいよ」

 ひな子はさげてきた小さなかごの中身を次々と取り出して、街灯を頼りに机の上に並べた。
 レモネードの炭酸がぱちぱちとはじけて、涼しげな音が部屋に響く。

「ね、眠くなるまでだからな」
「……うんっ!」

 嬉しそうに、ひな子が頷いた。


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「あっ、また! すごいねえ、こんなにたくさんの流れ星、はじめてだよ」
「かもな、俺もいままであんまりこういうのに興味なかったけど……、すっげえな。またくるのかな、これ」
「ひな子、さっき調べたんだけどね、ペルシャワンじゃないの、ペルセウス座流星群っていうんだって。毎年この時期に見れるみたいだよ?」
「……あぁ、ペルセウスってなんとなく聞いたことあるな」
「たしか去年は雨で、東京はぜんぜん駄目だったんだよ〜。今日はすごいね! 雲ひとつないもの」
「だな」

「…………、あのさ、きよらちゃんは……」

 氷だけになったグラスを傾けながら、ひな子が不意に口ごもった。

「なに、どうかした?」
「……ん、あの、きよらちゃんは、流れ星になにをお願いしたいのかな? って」
「はぁ? まだ言ってんのかそんなこと。別になんにもないけど、……しいて言えばあれかな、懸賞当たりますようにって……」
「嘘」

 ひな子の口調が突然固くなる。
 その大きな瞳は、いつの間にか星空から俺へと向けられていた。

「……嘘って、なにが」
「ひな子、本当はわかってるもん。知ってるもん。きよらちゃんがお願いしたいこと。きよらちゃんが、1番、叶えてほしいこと……」
「…………」

 俺はため息をついて、その視線から逃れるように空を眺める。
 またひとつ、光が燃え尽きた。

「……きよらちゃんの意地っ張り!」
「なんとでも言え。俺はそういう非科学的なことは信じないからな」
「きよらちゃんがお願いしないなら、ひな子がしちゃうからね!」
「は?」

 視界がまた青白く光った。長くて、大きな曲線だった。
 その瞬間、ひな子は大きく息を吸いこみ、叫んだ。

「きよらちゃんのお父さまが、お家に帰ってきますように!」

 寝静まった住宅街に、ひな子の声が響き渡る。

「きよらちゃんのお姉さまが、早く見つかりますように!」

「ちょっ……」

「きよらちゃんが、家族みんなで暮らせますように!」

「ばっ……、馬鹿かおまえ! 夜中だぞ!!」

「ひゃっ」

 俺は、ベランダから身を乗り出して叫ぶひな子を、力づくで部屋の中に引きずり込んだ。
 急いで窓を閉めると、向かいの家の明かりがついた。

「おい、アホか。なに考えてんだ!」
「……きよらちゃんのことだよ!」
「っ……!?」
「ひな子は毎日、きよらちゃんの事ばっか考えてるよ。だからきよらちゃんのことなら何でもわかるの。口には出さないし強がってるけど、本当はすごく寂しいんでしょ? いいじゃない、お願いごとするくらい、したっていいんだよ。ひな子は欲張りだから、3回じゃ足りないもん。きよらちゃんがしないなら、ひな子が何回でも言うよ。これだけいっぱいお星様が流れてるんだから、どれかひとつくらい、きっと叶えてくれるよ」

「…………」

 なんて奴。
 よく、他人にここまで親身になれるものだと、俺は小さく吹き出した。

「なに笑ってんのー! もう!」
「いーよ、勝手にしろ」
「するもん!」

 ひな子は顔を真っ赤にしながら、ぷいと窓に顔を背け、また儚く消えてゆく星に祈りを捧げ続ける。

 俺は笑いながら、炭酸がすっかり抜けてぬるくなったレモネードを飲み干した。

「……ありがとな」

 その小さな背中に、そっとつぶやく。



……来年の今頃は、きっと。



■END■

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