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何だ、コイツ(ーー;)コミュのCarrickfergus

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今年の夏に、とある友人を訪ねたんです。こいつは根っからの怠け者で、働くのが嫌いというとんでもないヤツ。金はギャンブルで作る、どうしようもなくなったら借りればいいという、世の中なめ切ったような暮らしをしています。

もちろん電話代なぞ払えませんから、電話は持ってない。アポなしで突入です。引越しなぞできっこないから、昔から住んでるボロアパートにいるはずです。

ドアをドンドンと叩いて、「おーい。いるかあ? 俺だあ。HOGだ。いるなら開けてくれ」「誰? ああ、HOGさんか。ひさしぶりぃ」やっこさん、部屋にいました。「おー、入るぞ」「ちょっと、待ってくれ。ダメだよ、ドアを開けちゃ!」「なんだ? 中に女でもいるのか?」「そうじゃないんだよ。今、訳を話すからさ。とにかく、ドアを開けちゃダメだよ。貼ってあるだろ、ドアに」「貼ってあるって、何が?」見ると、ドアにシールが貼ってあります。「なんなの、このシール?」「シールじゃないよ。お札だよ」

ドア越しにヤツが説明を始めました。「実は、この春にね、資産家の娘と付き合っててね」「へぇー。うまいことやりやがったな。お前は、頭は悪くて怠け者だけど、顔だけはイイからなあ」「へへ。そんなにおだてるない」(いや、おだててないんだけど)。「でね、そろそろ結婚をと思って、むこうの親に挨拶に行ったら、反対されてね」「そりゃそうだろう。娘が可愛けりゃ、どんな親でも反対するよ」「でね、会うことも禁止されちゃってさ。俺、電話もケータイもパソコンも持ってないから、連絡すらできなくってさ」「手紙にすればいいじゃん」「現代っ子は手紙なんか書かないんだよ」そういう問題かね?

「でね、そうこうするうちに、その娘、露子って言うんだけども、が亡くなったって風の便りに聞いてね。俺、もう何にもする気がなくなって、毎日ぶらぶらしてたのよ」そんなことがなくても、毎日ぶらぶらしているくせに、とは思ったが、さすがにそれは言えず。「でね、ある日、ばったり会ったのよ」「誰に?」「その娘によ」「死んだんじゃなかったのかよ」「ウン。だから、俺も聞いたんだよ」

「『君は亡くなったって聞いたけど』っつたらね、『アタシの方こそ、貴方が亡くなったとお父様から聞いて、毎日泣いて暮らしていたんですよ』。すると、おヨネがね」「おヨネって?」「婆やだよ」「へえ。さすがは金持ち。お世話係の婆さんが付いてるのか」「婆やと言ったって、婆さんじゃないんだよ。三十そこそこの乙な年増だよ」「ふーん」

「で、おヨネがね『これは旦那様が、お二人の仲を裂こうとして嘘をおっしゃったんですわ。でも、今日こうして二人がお会いになれたということは、前世からの縁でお二人がつながっているということですわ。私たちは今、お屋敷を出て賃貸マンションで暮らしていますが、旦那様の部下の監視が付いているので、あなたに来ていただくわけには参りません。いかがでしょう、これからは毎晩お嬢様が貴方のお屋敷にうかがうということになさっては?』てなことを言うのよ。もちろん願ったり叶ったりで、それから、毎晩彼女がウチに来るようになったんだけどね…」「へえ。このボロアパートのお屋敷にね」

「ウン。ボロだからね、壁に穴があいてて、隣のヤツが覗くんだよ」「オイオイ」「でね、隣のヤツがウチに来てさ、『おたくに昨夜泊まったひと、幽霊だったよ』って言うのさ」「オイオイ」「そう言えば、露子が来るようになってから、体調がなんか悪いんだよね。で、近所に霊能者がいるんで診てもらったら、やっぱり霊にとり憑かれてるんだってさ。で、お札もらってさ、このお札をドアやら窓やらに貼って、一週間家に閉じこもってろ、でないと、死ぬよって言われてさ。で、こうして閉じこもってんの」

「ふーん。でもメシはどうしてんの?」「ウン。近所の知り合いの所に行って、500円とか千円借りては、コンビニでパンとかおにぎり買って済ませてる」「何だコイツ(ーー;)。外に出ちゃダメだろうが!」「昼間は幽霊も来ないから大丈夫なんだよ。ホラ、ドアのとこのお札が、金を借りに行くたびに剥がしてるから、糊がだんだん効かなくなっちゃてるんだよ」なるほど、見れば、シールじゃなくて、お札の端の方が剥がれてひらひらしています。

「ところでさ、正月に会った時に貸した5千円、返してくれない? 今日はそのために来たんだ」「オイ、俺の話聞いてただろ。今大変なんだよ。今日がちょうど一週間目なんだ」「それとこれとは別だよ。早く返してくれよ」「金なんかあるわけないよ」押し問答を繰り返しているうちに、すっかり日も暮れちゃいましてね。

カランコロン。背後で下駄の音がしたので振り向いてみると、年のころなら三十くらいの綺麗な女性が、牡丹の模様の描かれた灯籠を持って立っています。その後ろに、二十歳くらいでしょうかね、色の白い、いや青白いと言った方がいいくらいですが、ものすごい美女が立っています。

「あの、この部屋の方はいらっしゃいますでしょうか?」灯篭を持った女が言うので、「ええ、いますよ。あいつの知り合いですか? どうぞどうぞ、入ってください、なあにドアにカギなんぞかかっちゃいません。ずっと前から壊れてるんですから。あ、このシール見苦しいですね、剥がしちゃいましょ」女性には親切な私は、ひらひらしてみっともないシール剥がしてあげました。

そういえば、あのシール、「借り行く、剥がす」って言ってたな。

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