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笑えた話コミュの【良い話】 借金のカタに取られた元カノの話

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1:1 ◆U72pfJf7kg :2013/02/28(木) 23:51:45.40 ID:g4CfBzut0

この間、家に一枚のハガキが届い た。 それで昔のコトを思い出した。 イロイロあったんで書いてみた い。

2:1 ◆U72pfJf7kg :2013/02/28(木) 23:54:13.96 ID:g4CfBzut0

うおっ、立った

スゲー、どきどきするな。 心臓バクバクだし、手が震える ぞ。

5:1 ◆U72pfJf7kg :2013/02/28(木) 23:57:09.18 ID:g4CfBzut0

高校卒業以来、疎遠になっていた 実家に帰ったことから始まった 話。 事情があってフェイク入りだけど 許して欲しい。

当時のスペック オレ 30前、会社員、独身 ユキ 同級生、元カノ、既婚 コウジ 同級生、悪友、会社員、 独身

6:1 ◆U72pfJf7kg :2013/02/28(木) 23:58:34.30 ID:g4CfBzut0

その日は親父の葬儀だった。懐か しいけど、あまり居心地のよくな い実家の居間で 一人ボーっとしてると電話が鳴 る。兄は仕事があるからとさっさ と帰って行ったし 元々母はいない。しかたなく出て みると……元悪友の吉田コウジ だった。

7:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:00:18.97 ID:g4CfBzut0

コウジ「よお! カズ! 久しぶ りだな!」

オレ 「ああ、そうだな」

コウジ「お前、今日来れるか?」

オレ 「いきなり何の話だよ?」

コウジ「あれっ? ハガキを送っ たろ? 同窓会の?」

オレ 「知らねーな。つーか、今 日は親父の葬儀でたまたま帰って きてただけだ。 だから、これから家に戻 る予定だ」

8:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:01:16.34 ID:PH/p6D4G0

どうやら、偶然その日が高校の同 窓会らしい……コウジの話による と毎年この時期に開催してると か。 まったく気乗りしなかったけど、 しつこく言われて断るのが面倒に なり、とりあえず会場へ。 ところが……受付を見てゲンナ リ……そうじゃないかとは思った けど……元カノだよ……

9:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:02:52.68 ID:PH/p6D4G0

彼女の名前は幼馴染の雪子、会場 となっている旅館の一人娘。 親父の転勤と兄貴の進学のせいで 一人になったオレの世話をしてく れた子。 実際は彼女だけじゃなく、彼女の 両親もオレのことを気に掛けて食 事の世話をしてくれたり 家に泊めてくれたりしてた。 とはいえ彼女の家に居候するわけ にはいかないんで、基本的には一 人暮らし。 そして家の中のことは掃除、洗 濯、食事の世話と家事一切を彼女 がやってくれた。 そんな状態にもかかわらず、彼氏 彼女になったのは高校に入ってか ら。

10:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:04:46.29 ID:PH/p6D4G0

ユキ「あ……久しぶり……何年ぶ り? かな……」

オレ「……げ、元気そうだな……」

ユキ「うん……」

気まずさ全開……絶対こうなるっ て思ったわ……だから来たくな かったんだ……くそっ!

~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~

11:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:06:13.71 ID:PH/p6D4G0

彼女とは家が近かったし、小さい 頃から一緒に遊んでた。一番古い 記憶はオレの母親の 葬儀の時だと思う。それが正しけ ればオレが5歳の時だ。

その時のオレは死がどういうもの かは正しく理解できてなかったけ ど、もう二度と母親に 会えなくなったことはなんとか理 解していたと思う。 だから、親父にあやされようが兄 貴に諭されようがびーびー泣いて た。

12:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:07:07.83 ID:PH/p6D4G0

そこにユキがやってきた。

ユキ「カズくん泣かないで」

オレ「おがーぢゃーん、おがー ぢゃーん、びーびーびー」

ユキ「もう、男の子が泣いちゃだ めっ」

オレ「だって、だって、びーびー びー」

ユキ「これからはユキがね、カズ くんのね、おかあさんになってあ げる。 ご飯も作ってあげる。一緒 に寝てあげる。だからもう泣かな いで」

言葉は適当だけど、こんな内容の ことを言われたような記憶があ る。 彼女が憶えてるかどうか知らない けど。

13:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:08:05.84 ID:PH/p6D4G0

実際彼女は、その日以降なにかと オレのことを気に掛けてくれてい た。 何かあるとすぐに泣くオレをいつ も庇ってくれた。

だからオレのために面倒な家事一 切を引き受けてくれた彼女に対し ても女性として 特別な感情はなかった。なんとい うか、おふくろのような姉のよう な…… 要するに家族みたいな感じだった から彼女の前でも平気でパンツ一 枚でウロウロしてたわけで……

14:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:09:12.81 ID:PH/p6D4G0

高二の秋だったかな…… 台風接近にもかかわらず彼女はい つものように晩飯を作りに来てく れた。 それを二人で食べた後、試験前の 勉強を教えてもらうことに。当 然、彼女の方が成績がいい。

ユキ「なんだか外が凄いことに なってきてる……」

オレ「そーだな。さっきまでそう でもなかったのにな。今日、帰れ るか?」

ユキ「ちょっと怖いかも……」

オレ「じゃ、泊まっていけよ。着 替えはその辺になんかあるだ ろ?」

ユキ「……えっ……」

彼女のとまどった表情と声に気づ かず、Tシャツとスウェットの上 下をホイっと渡す。

オレ「風呂なら今のうちに入った 方がいいぞ。停電したら面倒だ し」

ユキ「……う、うん……」

15:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:11:08.75 ID:PH/p6D4G0

外は暴風雨、古い家のサッシは ピューピューと微妙に隙間風が 入ってくるし、雨戸に 打ち付ける雨の音が凄い、しかも アンテナが揺れるのかテレビの画 像が時々乱れて なんか閉じ込められた感がいっぱ いで、妙にワクワクする。

その時……

16:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:13:12.29 ID:PH/p6D4G0

突然、家の中が真っ暗になった。 停電だ。雷が落ちたわけじゃない から風でどこかの 電線でも切れたんだろう。雨戸が 閉まっているから本当に真っ暗。 近所の状況もわからん。

こりゃダメだ。もう、どうしよう もないな……

妙に冷静になっていると風呂場か ら悲鳴が聞こえる。

ユキ「キャー、カズくーん! カ ズくーん! 怖いよぉー」

オレ「待ってろー、今、そっちに 行くからー」

17:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:15:59.09 ID:PH/p6D4G0

懐中電灯を探り当てて階段を下り る。慣れた家なのに真っ暗な階段 は結構怖い。 手すりがないと踏み外しそうだ。 風呂場では悲鳴が泣き声に変わっ ている。 早く行ってやらないとな。

脱衣場のドアを開け、声をかけ る。

オレ「ユキ、来てやったぞ」

19:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:17:52.98 ID:PH/p6D4G0

そう言うと何も考えずに風呂のド アノブに手をかけ、扉を一気に開 けようとしたら 中から思いもしなかった声がす る……

ユキ「待って! ……恥ずかし い……」

オレ「へ?」

実はこの時、初めて彼女が年頃の 女性だと気づいたわけで…… なんだか急にこっちまで恥ずかし くなってきた。

20:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:19:23.85 ID:PH/p6D4G0

オレ「じ、じゃあ、か、懐中電灯 をここに置いとくから……」

ユキ「あっ……行かないで……怖い から……」

オレ「ど、どーすりゃいいんだ よ?」

ユキ「ぐっ……目をつむったま ま、そこに居てよ……」

21:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 00:20:44.50 ID:iK1dEa0V0

みてるぞ

22:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:21:30.33 ID:PH/p6D4G0

>>21 ありがとう。続けます。

というわけで、懐中電灯を床に置 くと後ろを向いて目をつむり廊下 側のドアにへばりつく。 風呂場のドアが開いて人が出てく る気配がする。湯気が顔や手に当 る感じがした。 後方1mのところに全裸の若い女 性がいると思うと凄まじく緊張し てきた。

23:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:22:56.66 ID:PH/p6D4G0

そういえば一緒に風呂に入ったの は何年前だ? やっぱりあちこち 成長してるのかな?

タオルで体を拭く音、下着を着け る音、パジャマ代わりのスウェッ トを着る音…… うー堪らん……音から状況を想像 していたら下半身が固くなってき てしまった。 これまで彼女のことでこんなふう になるなんて一度もなかったの に……

26:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:26:18.48 ID:PH/p6D4G0

部屋に戻ったものの相変わらず 真っ暗。テレビが消えているせい で聞こえるのは 風の音と雨の音だけ。さっきのワ クワク感は吹っ飛んで微妙に気ま ずい感じ。

オレ「……えーっと……どうしよう もないから、もう寝る?」

ユキ「えっ?!」

オレ「へ、変な意味じゃないっ て。ユキは兄貴の部屋で寝るんだ よ。 兄貴の部屋がイヤなら、 こっちで寝ればいい。オレが向こ うに行くから」

ユキ「……イヤなんかじゃな い……」

25:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:24:19.93 ID:PH/p6D4G0

ユキ「ふぅー、もういいよ。目を 開けても」

オレ「お、おぅ……」

とりあえず目は開けたけど事情に より彼女の方を向くことができな い。わかるよな? というわけで懐中電灯を受け取る と前かがみになりながら部屋まで 戻ることに。 暗くて助かった……

28:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:28:04.18 ID:PH/p6D4G0

オレ「そう。じゃ、コレ」

彼女に近づくと、明かりの点いた ままの懐中電灯を彼女に渡す。 と……なぜか明かりが消えて真っ 暗に……電池切れ?? じゃない よな?? ん?! 腕の辺りに暖かくて柔ら かいものが静かに触れると同時に 石鹸のいい匂いが…… こ、これは………………

31:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:31:28.90 ID:PH/p6D4G0

ここから先は、説明するまでもな いでしょう。お互い言葉を交わさ ないまま…… ……はいそうです……そういう仲に なりましたです……

ただね、一応、知識としてはあっ たんですが経験がなかった。彼女 もそうでした。 だから上手くいかないわけでし て……

真っ暗で場所もわからんが、まさ かいきなり懐中電灯で照らすとか 変態すぎてムリ。 とりあえずココか? いや違う、 入らん、じゃココか? なんて適当に突いてたらもう、 あっという間に我慢の限界で……

ちゃんとできたのは心身ともに準 備を整えた何日か後だったような 気がします。

32:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:33:39.27 ID:PH/p6D4G0

その後の彼女は、オレの家から学 校に通うようになり、まるっきり 同棲のような状況 だったんですけど彼女の両親は黙 認でした。 次男で幼馴染のオレは婿養子には 適任とか考えていたんでしょう ね。 実際、彼女のお母さんからはそん なことを言われましたし。 当時のオレも深いことは考えずに 旅館の専務とかカッコいいじゃん とか気楽に考えてました。

37:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:36:43.12 ID:PH/p6D4G0

今思うと、この辺りが人生の絶頂 期だったと思います。 それまでも彼女の好意には甘えて いたんですが、それとはちょっと 違うんですよ。 うまく説明できませんが、心の癒 しとでも言うんですかね。なんか 安心できたんです。 だから……ずっと彼女と一緒にい たいなとか本気で考えてまし た……

~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~

39:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:38:36.93 ID:PH/p6D4G0

そんな二人が別れたのはお互いの 気持ちじゃなかった。家の事情。 彼女の実家の旅館経営が苦しく なって地元有力者から融資を受け ることになったんだが そこのバカ息子が彼女に一目惚れ してしまい話がややこしい方向 へ。

江戸時代じゃあるまいし、なんで 借金のカタに娘を差し出さなきゃ ならんのだ??

40:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 00:39:45.27 ID:d+z36W8M0

しえん

41:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:40:22.48 ID:PH/p6D4G0

>>40 ありがとう。

その話を聞いた18才のオレはなん と彼女を連れて駆け落ち……なか なかの行動力。 と言ってもカネのない高校生の立 ち回り先なんてすぐに割れるわけ で3日と経たずに連れ戻された。 親父にはボコボコにぶん殴られて 彼女の両親と地元有力者に土下座 で謝罪…… 当時の体格からいえば力で親父に なんて負けるハズはなかったけ ど、その有力者が親父の勤める 会社の大得意だと聞かされたから 黙って殴られた……高校生でもそ のくらいの空気は読める。

42:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:42:12.14 ID:PH/p6D4G0

結局その事件以来、オレは親父と 二度と口を聞かないまま。 兄貴の話では親父の最後の言葉は 『カズオ……すまない……』だった とか……

そんなことを聞かされた後で酒を 飲んで騒ぐなんて気分になんてな れない。 だから一人ロビーに座って昔のこ とを思い出しながら感傷に浸って た…… 会場から持ってきた瓶ビールが3 本目から4本目になった頃、懐か しい声が聞こえてくる。

43:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 00:42:46.37 ID:EqY3tIRzO

親父も親父だな… 応援してやればいいのに

46:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:44:32.42 ID:PH/p6D4G0

>>43 うーん、微妙です。この親父 のおかげで大学まで出してもらえ たんで……

49:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 00:47:24.98 ID:zQz8VRX70

>>46 田舎でかつ、有力者がからんでく ると大変だよね おれも田舎出身だから雰囲気わか る

51:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:49:36.20 ID:PH/p6D4G0

>>46 都会生活者には理解しにくい 感覚だと思いますね。

44:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 00:43:04.69 ID:zQz8VRX70

まじかよ もしかして田舎の話?

46:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:44:32.42 ID:PH/p6D4G0

>>44 田舎です。旅館があるくらい ですから。

ユキ「……ここに居たんだ……」

オレ「……ああ……親父のことを考 えてた……」ウソです。ユキのこ と考えてました。

ユキ「あっ……ごめんなさい……今 日はお父さんの……」

オレ「いいって……無事終わった し……ただね…… 兄貴から親父が最後にオレ に謝ってたって聞かされて さ……」

ユキ「……そう……」

オレ「……」

45:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 00:44:19.88 ID:iK1dEa0V0

すごい話だな…>>1の行動 力すごいわ

48:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:46:46.18 ID:PH/p6D4G0

>>45 無計画、無鉄砲でした。もう ちょっと考えれば違う展開があっ たかもです。

48:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:46:46.18 ID:PH/p6D4G0

それから二人で何も言わずに並ん で座ってた。どのくらいの時間が 経ったのか会場が ザワザワし始める。どうやらお開 きのよう。みんなに挨拶だけはし ておこうと立ち上がると

ユキ「あの……連絡先だけでも交 換しない?」

オレ「そ、そうだな……」

ユキ「……連絡してもいい?」

オレ「いつでもいいよ」

51:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:49:36.20 ID:PH/p6D4G0

その日はそれで終わり。昔話をす るわけでなく、お互いの近況を話 すわけでもなく ただ並んで時間を過ごしただけ。 でも、それだけで十分だった気が する。 彼女の姿が見れただけでなんだか ホッとした。色々あったけど全て 過去の出来事として 消化できそうな気もしてきた。 そしたら次からは笑って昔話がで きるかも……ほんとか?

52:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 00:50:01.31 ID:zQz8VRX70

有力者のバカ息子はピザ キモオタブサメガネと予 想

53:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:51:52.37 ID:PH/p6D4G0

>>52 それが悔しいくらいのイケメ ン。おまけにガチムチで勝てる要 素ゼロでした。

それから1ヶ月、いつもと変わら ない生活が続く。 朝ギリギリに起きて朝食代わりの 牛乳。昼は会社の自販機でパン。 そして深夜までサビ残。 走って終電に乗ってコンビニで弁 当と缶ビールを買うだけの毎 日……まったくつまらん。

とはいってもFラン出身のオレな んかが氷河期に正社員の口にあり つけただけ、ありがたい。 そう思ってブラック臭が漂う会社 だけど、それなりに貢献しようと 努力はしてるつもり…… ただ……つまらんのだわ。

58:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 00:58:29.89 ID:zQz8VRX70

>>53 イケメンがちムチなのか。それで 親が権力もってるとかハイスペッ クすぎるなぁー。

62:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:00:12.64 ID:PH/p6D4G0

>>58 集まるところには全て集まる という見本みたいな家系でしょ う。

54:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:53:27.64 ID:PH/p6D4G0

守るものがないんだよね……嫁や 子供どころか彼女もいない。そし て両親もいない…… ある意味、気楽でいいんですよ。 給料は安いけど使うヒマがないか らカネは勝手に貯まってくるし 趣味がないから欲しいモノもな い。 でも、この瞬間にオレが死んでも 誰も泣かないし誰も困らない。成 功しても誰も喜ばない。 そう思うとなんかどうでもよくっ てね……

55:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:55:06.74 ID:PH/p6D4G0

そんな日曜の夜に携帯が鳴った。 こんな時間の電話は会社でのトラ ブル発生が多い。 独身で一人暮らしは動きやすいか ら休日とか深夜とか関係なく呼び 出されるのだ。

タクシー代あったっけ? とか考えながら携帯を見るとユキ からの着信と表示されてる。

オレ「もしもし? どうした?」

ユキ「……別に……どうもしな い……」

オレ「そうか……ちょっと驚い た。何かあったのかと思ったわ」

ユキ「……ただ……声が聞きたく なって……ぐすっ……」

オレ「もしかして、泣いてる? 何かあったのか?」

56:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 00:57:15.99 ID:PH/p6D4G0

それから彼女と携帯の電池がなく なるまで話した。 彼女はオレとは逆で守るものが重 すぎて辛いらしい。 自分の意思ではない結婚……しか も破綻状態にもかかわらず解消で きない関係。 それは旅館経営のため、従業員の ため、その家族のため…… 今、自分が居なくなるとその全て が崩れ去ることが分かっているか ら……

コメント(7)

60:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 00:59:40.45 ID:MzDfrTWO0

イケメンがユキの股に顔 をうずくめて・・・

62:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:00:12.64 ID:PH/p6D4G0

>>60 それ……勘弁してください。

長い時間、話をしたけど結論なん て出るハズもない。同じところを グルグル廻るだけ。 それでもよかった。つき合ってた 頃だっていつも内容のある話をし ていたわけじゃない。 同じように結論のない話をしてい ただけ……楽しいか楽しくないか の違い……

そんな感じで特に約束したわけ じゃないけど毎週日曜の深夜に電 話を掛け合うようになった。 最初の電話はちょっと重かったけ ど、その後はどちらかというと世 間話の中にお互いの 近況が少し混じる感じ。内容なん てどうでもよかったから……声さ え聞ければ。

64:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:00:58.35 ID:zQz8VRX70

大昔の戦略結婚みたいなもんか 現代でもあるのか。

やっぱ本当に好きな人と一緒にな るっていうのは両家の家族のこと もあって難しい面もあるんだな。

65:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:02:46.53 ID:PH/p6D4G0

>>64 ですね。貧乏人は我慢しろ と。

何回かの電話で分かったのは、彼 女の結婚生活が初めから成り立っ ていなかったこと。 戸籍上は本妻だけど実際は愛人扱 いだったらしい。それに反発した 彼女は家に帰ることなく 旅館の一室で生活していて家では 旦那が愛人とその子供と生活して いたそうな。 なんということ……金持ちならな んでも許されるのかよ……なんだ か悔しい。

そんなことが分かったある日曜の 夜、彼女との電話を終えて眠った オレは夢を見た。 これまで何度も何度も繰り返して 見る夢……彼女との別れの朝のこ と……

~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~

66:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:03:41.15 ID:lH3cSdsEO

>>64 少し田舎だったり、少し古風な ら、いわゆる今風が通じない所は あるみたいだよ うちの両親は結局駆け落ち同然 で、父方とは一切連絡取れないわ 一応"市"なんだけどなぁ

72:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:08:09.25 ID:zQz8VRX70

>>66 おれも田舎出身だけど、 結婚は両家の為にするも ので女は24すぎて売れ残 りはゆるさん!っていう 感じだわ。 おかんもいろいろ大変 だったらしい。

68:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:04:19.67 ID:EqY3tIRzO

>>64 今でも戦略結婚はあるよ

74:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:10:55.42 ID:zQz8VRX70

>>68 戦略結婚いやだよね 好きでも無い人と結婚なんかした くない
67:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:04:17.75 ID:PH/p6D4G0

初心者マークを貼ったレンタカー に荷物を積んでいると彼女が走っ てきた。

ユキ「ハァハァハァ……どうし て……黙って行っちゃうの……?」

オレ「……」

何か言おうと思ったけど言葉が出 なかった。 駆け落ち事件以来、オレは彼女と の一切のコンタクトを禁止されて た。 だから進学で街を出ることになっ たこともオレからは伝えてない。 無言で黙々と積み込み作業を進め るオレをみて彼女も無言で手伝っ てくれた。

69:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:05:09.66 ID:PH/p6D4G0

やる気のなさが荷物にも現れてい るようで、こんなんで生活できる のか? というくらい少ない荷物。だから 作業なんてあっという間。

ユキ「……もう行くの?」

オレ「ああ……」

ユキ「……じゃあ……これ……」

70:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:06:21.20 ID:PH/p6D4G0

運転席に座るオレに彼女は小さな 紙袋を手渡す。 中を見ると見慣れた包み……彼女 の手作り弁当……これまでは当然 のように受け取って 何も考えずに食べてたけど、それ も今回で最後だと思うと涙が出そ うになった。

彼女はというと目に涙をいっぱい に浮かべながら必死で笑顔を作っ ていて その表情は言葉では言い表せない くらい切なかった……

オレ「いつも、ありがとう……」

ユキ「いつでもいいから……お弁 当箱……」

71:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:07:36.96 ID:PH/p6D4G0

これが最後とは考えたくなかった から、オレはわざと「いつも」と 言ってみた。 彼女も同じ気持ちだったのか「い つでも」と答えてくれた。

いよいよお別れ。 もう二度と会うことはないだろう と思いながらエンジンキーを捻 る。 二人の気持ちがわかるのか車は咳 き込むばかりで始動しない……何 度も試すけど動く 気配がない……いっそこのまま…… とか考え始めたら彼女が窓越しに オレの首に 抱きついてきた……

73:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:10:01.07 ID:PH/p6D4G0

ユキ「……お願い……私も ※※※※」

ブルルルーン……エンジン始動…… 彼女の言葉の後半はエンジン音に 掻き消された……

聞こえなかったけど内容は想像が つく。直接この耳で聞かなくてよ かったと思った。 もし聞いてしまったら自分を抑え られなくなっていたと思うから。

75:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:11:17.41 ID:PH/p6D4G0

オレは黙って彼女の手を解くと前 を見据えたまま車を進める。 ゆっくりと動き始めた車のサイド ミラーを覗くと泣き崩れて地面に 座り込む 彼女の姿が映っていた……そして それがどんどん小さくなってい く…… 号泣状態で叫びながらハンドルを 握るオレ……

「ウォォォォーーーー!!!」

~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~

76:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:12:43.00 ID:PH/p6D4G0

いつもここで目が覚める。 なぜかと言うと……眠っているハ ズなのに実際に泣き叫んでしまう から……

あの時、どうして彼女を連れ去ら なかったんだろう……そればかり 考える……

その後の行動はいつも一緒。 ほとんど物のない部屋にポツンと 置かれた小さなカラーボックス。 部屋の中で唯一、モノを飾ること ができるスペースには例の弁当箱 が引越し当初から ずっと置いてある。オレは心が折 れそうになると、その弁当箱を眺 めるクセが ついてしまった。女々しい男だと 思う……

そして眠れないまま朝が来て、い つものようにつまらない一日が始 まる……

77:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:13:01.89 ID:EqY3tIRzO

泣いた
78:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:14:21.33 ID:PH/p6D4G0

しばらくすると続いていた彼女と の深夜の電話が滞るようになる。 こういうのは一度詰まると後がや りにくい。彼女から電話があると 思っていた時にないと 次にこちらから電話しにくい。そ して、その次にも電話がなければ もうこちらから掛ける ことは難しい。なんといっても彼 女は人妻だから……

内心すごく気になるんだけど、ど うしようもない。 ひょっとしたら旦那と和解してう まくいっているのかもしれない し。

79:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:15:32.96 ID:PH/p6D4G0

ウジウジしていたところにコウジ からメールがあった。 「出張でそっちに行くから一緒に 飲もう」という内容。 「深夜スタートになるぞ」とだけ 返信しておいた。

80:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:16:26.44 ID:PH/p6D4G0

コウジの出張当日。 夜の10時を過ぎたくらいに電話が 着信。オレはまだ会社にいた。

コウジ「よお〜、カズ! 今から 大丈夫かぁ?」能天気な声。もう 飲んでるな?

オレ「いいぞ。って、いったいお 前は今どこにいるんだよ?」

意外に近くのホテルを予約してい ることがわかったから、とりあえ ず田舎者の酔っ払いに ウロウロされるよりはオレが動い た方がいいと思って既にできあ がっているコウジとホテル 近くの居酒屋へ繰り出すことに。

81:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:17:39.92 ID:PH/p6D4G0

同窓会以来といっても、その日は ほとんど一緒にいなかったから何 年ぶりになるんだろう。 卒業後に1度くらい飲んだことが あったような気がするが気のせい かもしれない。 サラリーマンらしく仕事の愚痴か ら始まりそのうち話題は……

コウジ「その後、彼女と連絡は 取ってるのか?」

オレ 「誰のことを言ってる?」

コウジ「決まってるだろ? ユキ ちゃんだよ」

オレ 「ああ……まあな……」

コウジ「……そうか……実はな…… 俺、彼女に告白したことがあるん だわ……」

オレ 「はぁ!?」
84:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:19:14.50 ID:PH/p6D4G0

酔った勢いなのか突然のカミング アウトに驚いたわ。 コイツとは中学以来ずっとつるん できたのに全く知らなかった。

コウジによると彼女がオレの身の 回りの世話をし始めた中二の頃に 告白したらしい。 そこで告白しなければ彼女はすぐ にでもオレと付き合うことになる と思ったからだとか…… 実際は、そこから2年以上掛かっ たんだけどな……

85:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:20:07.63 ID:PH/p6D4G0

別に聞きたくもない話なんだが、 告白時の状況を披露してくれた よ。 季節は夏、場所は放課後の体育館 裏だとか……

~~~~~

コウジ「……ユキちゃん……呼び出 したりしてごめん……」

ユキ「いいよ。何か用事? カズ くんがどうとか…って聞いたけ ど?」

コウジ「……ごめん……そうじゃな くって……」

ユキ「?」

86:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:21:01.44 ID:PH/p6D4G0

コウジ「……俺……ユキちゃんのこ とが……す、好きなんだ……」

ユキ「??」

コウジ「ユキちゃんがカズを好き なことは、わかってるけど……ダ メかな……」

ユキ「……ごめんなさい……」

コウジ「……やっぱりダメか……い いんだ、これでスッキリしたか ら…… これからは俺も応援する からなっ!」

ユキ「……応援してくれるんだ…… ありがとう……だったら…… ひとつお願いがあるの…… 言いにくいんだけど……今日のこ とはカズくんには 内緒にして欲しい……彼が このことを知ったら……たぶん…… 一生、私とは 付き合ってくれないと思う から……ごめんなさい……」

~~~~~

87:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:21:57.10 ID:PH/p6D4G0

という状況だったらしい。

オレ「で、いったいお前はオレに 何が言いたいんだ?」

コウジ「だから、その頃から彼女 はお前に惚れていたというわけ だ」

オレ「そうかい。そりゃありがた いね……って、今さらそれを聞い てオレにどうしろと? 間男になって、たんまり慰 謝料を払えってか?」

コウジ「そうは言ってない が……」

オレ「だったら黙ってろ。という かお前こそ彼女にまだ未練がある んじゃねーのか?」

コウジ「……」

90:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:24:14.24 ID:PH/p6D4G0

数少ない友人がまた一人減った気 がした。ますます自分が孤立して いくような気がして辛かった。 20代でこんなに孤独だったら、 40代、50代、いや60歳に なって会社にもいられなく なったらどうなるんだ? 本当に 世界中で自分のことを少しでも考 えてくれる人が一人も いなくなるのか?? とか思うと 本格的に欝になってきた……

89:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:22:53.41 ID:PH/p6D4G0

おいおい、ビンゴかよ……勘弁し てくれ……彼女の重い状況に加え て旧友の大マジな 恋心まで聞かされちゃかなわん。 そういえば、コイツは進学を口実 に逃げたオレとは違って卒業後も 地元に残って いたわけで……そして同窓会とか なんだかんだで彼女を支えてたん だよな……

オレ 「……コウジよ……お前が彼 女を助けてやれ……オレにはムリ だわ……」

コウジ「……」

オレ 「お前、オレよりも成績が 良かったのに地元の大学に行って 地元の会社に勤めたんだろ? それって、そういうこと じゃないのか? 彼女を見守るた めじゃないのか?」

コウジ「……」

オレ 「オレは……逃げたんだ よ……だから今さら……」

コウジ「……悪い……帰るわ……」

91:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:25:08.14 ID:PH/p6D4G0

そして、約半年が過ぎた日曜の午 後……家でゴロゴロしているオレ に着信。 ディスプレイはユキと表示してい る。 めちゃめちゃ久しぶりだけど、で きるだけ普通に話すことにした。

オレ「もしもし? どうした?」

ユキ「カズくん……今、何して る?」

オレ「なんにもしてない」

ユキ「よかった……あのね……へへ へ、来ちゃった」

オレ「へ? 来ちゃったって、ま さかこっちに?」

ユキ「……へへへ……」
92:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:25:56.65 ID:d+z36W8M0

そりゃコウジじゃ無理だ ろうに

93:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:26:48.70 ID:PH/p6D4G0

>>92 そうですかね? ブランクは こっちの方が長いですよ。

文字にするとラブラブに見えるけ ど、実際は涙声だった。 なんだか切羽詰ってる感じがし て、ちょっと心配。

オレ「じゃあ、すぐに準備するか ら、どこかで待ち合わせしよう」

ユキ「……いい、私がそっちに行 くから……カズくんのところに行 きたい……」

オレ「そ、そうなんだ……別に構 わないけど……汚いよ」

ユキ「わかってる」

94:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:27:40.98 ID:zQz8VRX70

おお!ゆきちゃんきた ね!

98:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:29:26.45 ID:PH/p6D4G0

そんなわけで彼女が家にやってく る。ターミナルから乗り継いで3 0分もあれば余裕で最寄駅に 着いてしまう。さすがに駅までは 迎えに行かないといけないから、 オレに残された時間は 残り15分。 妙なフィギュアや抱き枕なんて趣 味はないから隠さないと人格が崩 壊するようなブツはない。 元々モノが少ない部屋だから片付 けに手間はかからない。エロ系資 産はないことはないけど 探さなければ見つからないだろ う。プライオリティは、まず身支 度。次にゴミの始末、そして換 気。 あちらこちらに埃が積もっている のは……見なかったことにしよ う。

99:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:30:12.86 ID:PH/p6D4G0

車なんて持ってないから自転車を 飛ばす。ロータリーで自転車を降 りて改札口へ急ぐと彼女がいた。 笑いながらピョンピョン跳ねて手 を振る姿が懐かしい。 さっきの心配は気のせいか? な んて思いながら付き合っていた頃 もこんな風だったっけとか 回想シーンが頭をよぎる。

100:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:31:16.02 ID:PH/p6D4G0

オレ「ようこそおいでくださいま した」 彼女が仕事で言いそうな台詞を 言ってみた。

ユキ「お辞儀の角度が甘いわね」 プロの厳しい指摘だ。

オレ「久しぶりに自転車の後ろに 乗ってみる?」

ユキ「あの頃に比べると、ちょっ とだけ重くなってるけど大丈夫か な?」

オレ「どんなに重くても平気だ よ。家までずっと下りだからね」

ユキ「もうっ!」

101:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:32:00.46 ID:PH/p6D4G0

彼女は自転車の後ろに横になって 座ると、オレの腰に手を廻してく る。 毎朝晩に通勤で通る道だけど、彼 女が後ろに座ると風景が違って見 える。 高校の通学路を走っているような 気がする。あの頃も部活が終わる と彼女が校門で 待っていて同じように二人乗りで 坂を下って帰ったんだよな。

102:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:33:04.98 ID:PH/p6D4G0

ユキ「ねぇ、カズくん。ちょっと 太らない? この辺りとか? ふ ふふっ」

そう言うとオレの腰辺りの余った 肉をつまむ。

オレ「くすぐったいってば。そ りゃ、18才の頃の引き締まった肉 体と比べたら 劣化は否定できないさ。で も、オレなんてまだマシな方だと 思うけどね。 なんなら後で全部披露する ぞ」

ユキ「もうぅ、バカっ!///」

そう言いながら背中にぎゅーっ と、へばりつく彼女。おっけーの サインなのか?

途中でコンビニへ寄って適当に買 い物をしてから自宅に到着。 コンビニのバイトがジロジロとオ レを見てた。コイツ、オレが晩飯 の弁当を買う深夜に いつもレジにいる奴だ。ざまあみ ろ、オレだって女連れのことくら いあるのだ。

103:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:35:09.89 ID:PH/p6D4G0

さて、オレ邸は2階建て安アパー トの2階。階段が鉄製で歩くとカ ンカン音がする建物。 6畳相当のワンルーム、というか 本物の和室6畳。ボロ。 まともなキッチンというか台所は ないけど料理なんてしないから不 自由はない。 食事はオール外食 or コンビニ。 それで運動しないから太ってくる というか腹周りだけ 肉がついてくるわけだ。

オレ「ようこそ、我が家へ」

玄関のドアを開けて彼女を迎え入 れる。にわかに片付けた感いっぱ いの部屋。

ユキ「へぇー、一応きれいに片付 いて……というか殺風景な部屋 ね……」

オレ「寝るだけだからな。飾っ たって仕方ないしさ」

104:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:36:10.35 ID:PH/p6D4G0

お茶とお菓子で話していたハズ が、いつの間にか缶ビールと珍味 に変わっている。 彼女は懐かしい写真を何枚か持っ てきてた。二人が付き合っていた 頃のもの。 いつ撮ったのか覚えていないもの も混じっている。 二人で照れながら笑っている写真 は他に撮影者がいたハズ。
105:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:37:47.71 ID:PH/p6D4G0

ユキ「あっ、その写真……吉田く んが撮ってくれたのよね…… 私がお願いしたんだ。カ ズくんとのツーショット写真が欲 しいって。 まだ付き合う前だったけ ど覚えてない?」

コウジの名前がでてきて、それま でのフワフワした気分が一気に硬 直する。

こんなことしてていいのか……? オレ……

106:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:38:51.25 ID:PH/p6D4G0

オレ「……あのさ、ひょっとして 毎年開催してる同窓会って、コウ ジの企画か?」

ユキ「そう……今年で何回目だっ たかな……今年こそは、カズくん が来るかなって 言いながら毎年企画してた けど。何度か実家にも電話したみ たいよ……」

オレ「……そっか……」

ユキ「誤解しないで、吉田くんは 私のこと……私とカズくんのこと を応援して くれてるだけで……私のこ となんて、なんとも思ってないか ら…… だから今日だって吉田くん が行って来いって言ったか ら……」

108:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:40:15.89 ID:PH/p6D4G0

やっぱりだ。あいつはずっとユキ のことを思って応援してたん だ…… 彼女のことが今でも好きなん だ……自分の気持ちを隠して……素 直じゃない奴め。 オレは、あの朝にキッパリと諦め たんだ。そんなオレが今さら彼女 をどうこうしよう なんて都合のいいこと考えちゃい けない。

110:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:41:15.79 ID:PH/p6D4G0

オレ「……ユキ……送って行くよ。 まだ帰る電車あるよな……」

ユキ「えっ? どうしたの? 突 然……私、何か気に障ること言っ た? もしそうなら謝るから…… 謝るから、そんなこと言わないで 欲しい……」

みるみる彼女の顔が曇っていく。 というかもう泣き始めてる。 でも泣かれても困る。男の友情と はそういうものだ。悪友の20年 越し?にもなる 恋心を踏み台にして、その女とイ チャイチャなんてできんのだ。

112:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:43:06.10 ID:PH/p6D4G0

わけもわからずオロオロと泣く彼 女を追い立てるように家を出る。 そして無言のままで引きずるよう に駅まで連れて行くと目的地まで の切符を買って渡す。

オレ「じゃ、コウジによろしく 言ってくれ。あいつにはオレから 後で電話しておく」

ユキ「あっ……違う、違うの ――」

彼女の返事を最後まで聞かずに来 た道を逃げるように引き返すオ レ。 雨でもないのに顔がグチャグチャ に濡れている。目からも鼻からも 水が出ているせいだ。

114:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:44:35.86 ID:PH/p6D4G0

自宅に帰ってコウジに連絡しよう と思ったけど気持ちが昂ぶってい てまともに 話ができそうにない。シャワーで も浴びて落ち着こう……

熱いシャワーを浴びると気分も少 しは落ち着いたような気がした。 さて、電話しようと携帯を手に取 ると尋常じゃない着信履歴が残っ ている。 1、2、3、4、5、6……シャ ワーの間の僅か数分に10本を超 える着歴。 しかも、相手は全部コウジだし。

115:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:44:55.23 ID:d+z36W8M0

二度も好きでもない男 にってちょっと酷すぎる だろ

118:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:46:10.56 ID:PH/p6D4G0

>>115 そう……ですか? 酷いこ としちゃいましたか?

118:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:46:10.56 ID:PH/p6D4G0

なんなんだ?! これは??

と思っているところに、また着 信。コウジだ。

オレ「はいよ。なんだよバカみた いに何回も――」

コウジ「ばかやろー!!! て めーぶっ殺すぞ!!!」

オレ「んだぁー? てめー! 喧 嘩売ってるのかぁ? 上等だ、買ってやろーじゃ ねーか! あぁ?」

コウジ「お、お前は……ゆ、ユキ ちゃんになんてことを……」

121:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:47:14.41 ID:PH/p6D4G0

オレ 「……うっ……そのことなら 今お前に電話しようと思ってたと ころだ…… その……なんだ……彼女を 幸せにしてやれ。オレよりお前が お似合いだ」

コウジ「カズよ……だからお前は バカなんだ……なんで彼女の気持 ちが分からねーかな…… いつだってそうだ、勝手 に一人で決めて勝手に動いちま う…… 彼女に聞けよ。オレに相 談しろよ。少しは人の気持ちを考 えろよ……」

オレ 「……うるさいっ! オレ はオレなりに考えた結果だっ! お前は、ずっと彼女を傍 で支えてきた。オレは卒業してか ら彼女のことなんか すっかり忘れていた。そ ういうことだ」

少しウソをついた。本当は忘れた ことなんてなかったから……
123:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:48:02.32 ID:PH/p6D4G0

コウジ「……じゃあ、彼女の気持 ちはどうなるんだ……? 彼女は お前をずっと……」

オレ 「“待っていた”なんて言う なよ。彼女は結婚したんだから な」

コウジ「……てめぇ……彼女が結婚 後どんな気持ちだったのか聞いて ないのか?」

オレ 「聞いてないね。というか 聞きたくもないね」

コウジ「……まず最初に言ってお くぞ。彼女は旦那と正式に別れ た。先月の話しだ。 それからな……」

125:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:48:46.49 ID:PH/p6D4G0

それからコウジはイロイロは話を したがオレはほとんど内容を聞い てなかった。 というか聞くのが辛かったか ら……彼女の結婚後数年にも渡る 内容をそれだけ詳細に 説明できるお前はスゴイよ。どれ だけ長い時間、彼女と一緒にいた かがわかるってもんだ。

126:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:49:13.86 ID:PH/p6D4G0

辛い境遇の彼女の傍にいたのはオ レじゃなかったと再認識させられ た。 いつの頃からか彼女の大切な人は コウジに変わったんだ。お互い気 づいてないだけで…… 奴がいたから彼女はこれまで耐え ることができたハズだ。そして決 心もできたんだ。 だから今、彼女に必要なのはオレ なんかじゃない……オレはただの きっかけ……

127:名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:49:43.20 ID:OhyeRdDd0

昔の知り合いにすごく似た境遇の 奴が居るんだが・・・

話の腰を折ってすまん 見てるから続けて

128:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:50:10.42 ID:PH/p6D4G0

>>127 勘弁してください。

オレ 「いいかコウジよ……さっ き駅でオレと別れた彼女が最初に 電話をした相手は誰だ? オレか? 違うだろ? お前だよな。そういうことなんだ よ」

コウジ「……カズ……お前はそれで いいのか?」

オレ 「ああ……言ったろ? オ レはあの時に彼女をキッパリと諦 めたんだよ」

・ ・ ・

129:1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:51:31.18 ID:PH/p6D4G0

それから何ヶ月かして、仕事から 戻ったオレは郵便受けに1枚のハ ガキを見つけた。 『私たち結婚しました』という写 真入りのアレ。

そこに写っていたのは……コウ ジ……隣には……ユキだった。

満面の笑みで幸せそうな二人…… 写真の下には見覚えのある文 字……

「カズくん、ありがとう。お元気 で」

***** 終わり *****

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