エコロジカル・フェアトレードコミュの環境から社会を変えるジャパンモデルとは？

8月31日に京都でドイツ首相アンゲラ・メルケル氏を迎えて行われた講演会にて、標題をテーマとしたシンポジウムも開催されました。日本国内における環境問題と経済活動についての取り組み・今後の課題など現状を知る良い機会でした。遅れ馳せながら、メルケル首相の講演の要旨と併せてアップしてみました。

第一部：環境から社会をどう変えるか
　　　　～ジャパンモデルを目指して～

【参加者】
＜パネリスト＞
積水化学工業（株）代表取締役社長　大久保　尚武氏
尼崎市　　　　　　市長　　　　　　白井　　文　氏
NPO法人環境市民　代表理事杦本　　育生氏
SCHOTT　　　　　　最高経営責任者　ｳﾄﾞ・ｳﾝｹﾞﾎｲﾔｰ氏

＜進行＞
京都大学地球環境学堂　教授　　　　植田　和弘氏
毎日放送　　　　　　　ｷｬｽﾀｰ　　　橋本　佐与子氏

【問題提起】植田教授
今年6月にハイリゲンダム・サミットで発表されたハイリゲンダム宣言では、2050年までに温室効果ｶﾞｽの排出量を地球規模で半減する目標設定がされているが、先進国においては、もはや日々の細かい努力程度ではこの目標到達には程遠いことが数値的にも報告されている。今、従来のモノづくり・町づくり・生活スタイルを根本的に変える必要がある。それを可能にする社会・経済システムとは？

【企業の立場から】大久保氏
人口減少・超高齢化/ 科学技術力/豊かさレベルの高さ
世界でも特殊な状況にある日本ならではの先行モデルを作る必要があると提唱。ジャパンモデルでは、CO2の削減に留まらない、多面的な自然共生循環の社会を目指す。

ジャパンモデル＝自然共生循環型モデル
（科学技術＋自然の循環）

具体的には、水の循環/森の循環/エネルギーの循環をテーマにシステムづくりの研究例・実績を紹介。
例：エネルギーの循環事例として、自然エネルギーを効率的に利用した、光熱費ゼロハイムの紹介

【行政の立場から】白石氏
阪神工業地域の中心として、日本の経済発展を支えた尼崎市が抱えてきた公害問題に触れ、歴史上の経験を踏まえた現在の取り組みを発表
例：環境首都コンテスト実績/ 尼崎21世紀の森構想

【市民団体の立場から】杦本氏
環境的に持続可能な社会のモデルをドイツの取り組みを例に取って紹介。
例：日本の缶飲料の消費量が西欧19ヶ国の合計数値と比較してもダントツに多い
→飲料の量り売りや、再利用容器使用徹底などシステムの根本的な変革の必要性

例2：自転車を移動手段として最大利用するシステムを紹介　　（ドイツ：ミュンスター市）交通ルールや道路の整備を自転車中心に。

ドイツがCO2を減らしながら、GDPを上げていることにも言及

【ドイツ企業の立場から】ｳﾝｹﾞﾎｲﾔｰ氏
気候変動を改善する為には世界レベルである程度拘束力のある協定が必要。消費エネルギーの転換は必要且つ技術的・財政的に可能である。その中で最も期待されているのが太陽エネルギー。実際に、太陽エネルギー関連の産業で最近は雇用も増えており、この分野での経済活動は活性化している。
例：米カリフォルニアやネバダにあるSCHOTT社の太陽光プラントの紹介

【パネルディスカッション】
ドイツでは、法の制定を初めとして国単位で積極的な取り組みが見られ、これが活動の推進力を高めている。一報、日本はまだ国としての整備が遅れているのではないか。昨年で、国内での太陽光エネルギーシステム導入に対する助成金が打ち切りになったが、それを契機に推進力は弱まっている。環境技術の高い日本において、社会に浸透・定着させるには、高い目標値設定と、企業の設備投資への助成が必要。

第2部：アンゲラ・メルケル独首相講演

6月のハイリゲンダムでは、先進工業国が新興工業国を問題解決の議論に巻き込んで行く事が出来た。加えて、京都議定書を批准していないアメリカをも問題解決に向けて巻き込むことに成功した意義は大きい。新興工業国に継続的に環境問題に関わってもらう為には、先進国が信用に足る言動を取っているが重要である。

ある報告では、地球の上昇温度を2℃に抑える為には、2050年までにCO2の排出量を半減しなくてはならない。対策が取られれば、環境対応の為の経済コストは－5%～－20%と見積もられ、対策がない場合は逆に膨大なコストを環境対応に費やすことになる。地球の温暖化とは、即ち豊かな生活を維持することに繋がるのである。実際に、温室効果ｶﾞｽ削減には、関連産業での雇用を促進することから、経済的にも大きなチャンスが潜んでいる。

温室効果ガス削減の厳しい目標設定を達成するには、先進工業国のイニシアチブと協力、そして新興工業国の努力が必要。新興工業国への技術支援も継続的に行わないといけない。各国それぞれに経済的な利害関係が発生することは重々承知しているが、共通の課題解決に向けて世界レベルで取り組まないと、気候変動問題には立ち向かえない。
更にいくつかの課題が挙げられる。

・エネルギー市場での公正な競争システムをつくる。
・再生可能エネルギーの開発（技術レベルの高い日独の連携に
　期待）
・省エネの徹底
・開発国の最低労働条件の保護→公正な市場競争
・（技術力など）知的財産権の保護

この他にも、EU経済圏と日本の経済交流についてや、国際金融事情・安全保障問題に至るまで、幅広くお話されました。

賞味4時間に渡るシンポジウムを相当端折って書きました。分かりづらい部分もあるかと思いますが、ご容赦下さい。
詳細にご興味のある方は9月7日付の毎日新聞朝刊にて詳しく掲載される予定とのことです。

最後に簡単に私の感想は、ドイツと日本の環境問題に対する意識と実行力の差をひしひしと感じさせられたというのが率直な意見です。日本でも、環境関連の言葉は広がってきていますし、企業・行政・市民団体・個人レベルで、個別に努力はしているけれど、それをまとめ上げて大きな力とし、国としての問題解決に向けて推進していく実行力がまだまだ足りていないと思います。ドイツを例に取れば、環境関連の法整備など、国が積極的にイニシアチブを取ってリードしていく動きが強く求められていると感じました。

　　