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Novel.of.Mamesyuコミュのショート小説 『指輪の効力』

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ある金曜日の昼頃、若くして大手食品会社に勤務している水本 涼子は、今朝から頭痛がしていたので今日は会社を早退することにした。

「パソコン画面に釘付けだったからかしら。きっと目の疲れからきているのね。明日、明後日は休日だからゆっくり休もう」

しかし彼女は真っ直ぐに家には帰らず、コンビニへと向かった。
涼子は毎週金曜日の会社帰りに、決まってコンビニに寄ることにしているのだ。

「頭痛はするけどやっぱりあのアイスだけは譲れないわね。これが無いと一日は終われないもの」

涼子が毎日好んで買うアイスは『エッグアイス』という商品名で、今若い女性に大人気のアイスである。このアイスは拳程の大きさの卵型をしたバニラアイスで、中にはカプセルがひとつ入っている。そのカプセルの中には小さなアクセサリーが入っているのだ。

「今日は何が入っているのかしら。楽しみだわ」

涼子はアイスよりむしろアクセサリーが目当てである。

涼子はアイスだけを買い、高級住宅街で一際目立つ高層マンションへと入っていった。部屋に入ってスーツも掛けずに先程買ったアイスを食べ始めた。

「あっ、見えてきた、見えてきた」

ピンク色をしたカプセルが顔を覗かせた。涼子はアイスを食べ終えてからカプセルを開くようにしている。それはカプセルを開けてしまうとアイスを食べる気がしなくなるからだ。

「よし、食べ終わったわ。さぁ今日はどんなのかしら。この瞬間が堪まらないのよね」

そう言って涼子は一思いにカプセルを開けた。

「あら、綺麗な指輪。これは当たりね。今日はラッキーだわ、こんな綺麗なものを手に入れることが出来たんですもの」

中に入っていたのは青色の指輪だった。アイスの中に入っているくらいなので大したものではないが、涼子はこの指輪を妙に気に入ったらしい。

「あら、私の指にぴったりじゃない」

涼子は右手の薬指に指輪をはめた。

「さてと、まだ早いけど頭痛薬でも飲んで寝ようかしら」

涼子は立ち上がり、そして薬箱のしまってある引き出しに向かった。その時涼子は小さな悲鳴を上げた。

「痛っ!」

引き出しの方に目をやっていたせいで足下に目がいかなかった。涼子は机の足に右足の小指を打ってしまった。
涼子はその場にしゃがんで小指をさすった。その時涼子はあることに気付いた。

「あら?指輪が赤くなっているわ。さっきまで確かに綺麗な青色だったのに」

涼子は不思議には思ったが光の加減かしら、とあまり深くは考えなかった。
まだ小指をさすっていた涼子は突然喜びの声を上げた。

「あっ!こんな所にあったわ。影になっていて見えなかったのね。随分探していたのよ、良かったー」

涼子は前から探していたイヤリングを机の足の下に落ちているのを見つけた。

そのイヤリングを拾おうと伸ばした右手には再び異変が起きていた。

「指輪が青い・・・。・・・何か引っかかるわね」

少しすると足の痛みが和らいだので、涼子は頭痛薬を引き出しから取り出し、台所へ向かった。蛇口をひねろうとしたその時、またしても異変に気付いた。

「おかしいわね、指輪が赤いわ。やはり変だわ」

そう言って指輪を見ていた涼子はまたしても悲鳴を上げた。

「痛いっ!!」

足にガラスの破片が刺さったのだ。

「なんでこんなところにガラスがあるのよ!」

涼子はガラスを抜こうと再びしゃがんだ。その時、右手の薬指が視界に入った。

「ま、ま、また青に変わっているわ!どうしてなの!?」

困惑している涼子の目に信じられないものが飛び込んできた。

「…信じられないわ。なんでこんな所に一万円が?」

台所にある僅かな隙間に一万円札が入っていたのだ。涼子はその一万円を右手で取ろうとしたが再び異変に気付いた。

「何なのよ。今度は青?赤になったり青になったり。…!?ちょっと待って。さっきイヤリングを見つけたときも青だった…。そして今一万円を見つけた時も…。もしかしたらこの指輪青くなったら良いことが起こるんじゃないかしら」

涼子は指輪をまじまじと見つめた。その指輪は綺麗な赤色に変わっていった。

その時携帯電話が鳴った。画面には『秋山社長』と出ていた。

「もしもし、水本でございます」

「水本君、一昨日君に任せたデータ処理あっただろう」

社長からのいきなりの電話に涼子は戸惑った。

「えっ!?あっ、はい。確かに一昨日私が処理しましたが」

「君ね、そのデータのほとんどが消えてしまっているのだよ。何故なんだね?」

涼子の額には嫌な汗が吹き出ている。

「そ、そんなはずはありません!確かにデータは保存しました!消えているはずありません!」

社長は坦々と言った。

「しかしね、実際にデータが無いのだからね。理由はどうであれ君には少なからず責任はある。それ相応の処置は取らせてもらうよ。次の君の出勤は月曜日だったかな。月曜日は出勤したら直ぐ社長室に来るように。それでは失礼する」

涼子は何か言おうとしたが電話は切れてしまった…。

「そんな…。」

涼子はその場に崩れ落ちた。
その場で呆然としているとまたしても一本の電話が鳴った。今度は携帯ではなく家の電話だった。受話器を取ろうと伸ばした右手の指輪は青くなっていた。

「…はい、もしもし水本ですが」

涼子は元気の無い声で言った。
そんな涼子とは対照的に相手の男の声はハキハキしていた。

「あっ、水本様のお宅ですね?私、株式会社佐々岡製パンの平井と申します。この度は佐々岡製パン『春のパンづくしフェア』にご応募頂き誠にありがとうございました。厳選なる抽選の結果あなた様がご当選されましたことをお伝えすべくお電話差し上げました」

涼子は口をポカンと開けていた。

「水本様?」

そう男に言われてようやく涼子は我に返った。

「本当ですか?」

先程の社長からの電話があったので大喜びは出来なかった。

「はい、本当です。あなた様は当選者二十名の内の一人ですよ」

「あ、ありがとうございます。とても嬉しいです。」

少しずつ嬉しさが込み上げてきた。

「それでは『豪華ハワイ島十日間の旅』のチケットを近々送らせて頂きます。この度は本当におめでとうございました。それでは失礼します」

そう言って電話は切れた。

「・・・え、ハワイ旅行!?や、やったー!!ハワイ島に十日間!」

涼子はやっと素直に喜ぶことが出来た。
しばらくしてから涼子は自分の右手にはめられている指輪について考え、そして涼子なりにある結論を出した。

「ガラスが刺さる直前には指輪は赤くなった。社長からの電話の直前も赤くなった…。一方当選したという電話の直前は青くなっていた…。…やっぱり!偶然なんかじゃないわ!この指輪は赤くなると悪いことが起こり、青くなると良いことが起こるのよ!しかも悪いことが起こった後に良いことが起こっている。それに、どんどん起こることが大きくなっているような・・・」

涼子はこの指輪を外そうとも考えたが止めた。指輪を外したらどんなことが起こるかわからないからだ。

涼子は頭痛薬を飲み、ベッドに入った。





翌日、彼女は昨日より頭痛が悪化したために、近くの病院へ向かった。

「やっぱり昨日アイスなんか食べなければ良かったわ」

そう言いながら横断歩道を歩いているとスクーターが横断歩道に突っ込んで来た。

涼子はとっさに指輪を見た。指輪は赤色に変わっていた。

「そ、そんな!」

スクーターは涼子に直撃した。

すぐさま涼子は病院に運ばれた。幸いにも命は助かったが左足を骨折してしまったため、一カ月の入院を余儀無くされた。

ベッドで仰向けになってふと指輪を見てみると指輪が青くなっていることに気が付いた。

「何かしら?」

涼子はドキドキして待っていたが一向に何も起こらなかった。

「何故何も起こらないのかしら?…あら、痛くないわ!あれ程ひどい頭痛が、嘘みたい!…肩の凝りも治ったかも!何か楽だわ!」

涼子はスクーターとの事故の際に頭を軽く打った。しかしその衝撃で信じられないことに涼子の頭痛は完治したらしかった。また同時に肩凝りもその衝撃でか、良くなったらしい。

「やっぱり悪いことの後には良いことが続くのよ!悪いことが大きければ大きい程、良いことも大きくなるんだわ、きっと!何かこの先が楽しみだわ!」

そう言って笑いながら指輪を眺めていると、指輪は今までに無い程綺麗な赤色に変わった。

涼子はふと窓の外を見た。そこには衝突寸前のジャンボジェット機が映っていた。しかし涼子の顔は期待に満ちていた。指輪は青色から赤色へと変わるものだと知らずに…。


指輪は涼子の指から外れ、静かにその輝きを失った。

コメント(12)

なんか、だんだんレベル上がって来たねウインク

僕のレベルを超えてるのはまず間違いないな・・・
> 太郎さん・・さん

ありがとう、でもまだまだだよ手(パー)顔
太郎さんのも楽しみにしてるよexclamation ×2
> たくさん

高得点exclamation ×2exclamation ×2ありがとうございます、嬉しいっす泣き顔exclamation ×2
次も頑張ります走る人ダッシュ(走り出す様)
> ふかっちさん

初コメントありがとうございますexclamation ×2いや〜、いいとこに目を付けましたねウッシッシ指でOK

次回作もよろしくです顔(願)
最初から最後まで楽しませてもらいましたほっとした顔ぴかぴか(新しい)
話のテンポも良いしラストの展開も良かった指でOKぴかぴか(新しい)
こりゃ次回作はハードル上がるなウッシッシ
> ひじき茶漬けさん

おっ、マジかexclamation ×2exclamation ×2
次がなんか不安だわ〜げっそり
> ズーミンさん

コメントありがとうっす顔(願)
これからも載せてくと思うんでよろしくですexclamation ×2exclamation ×2
なかなか考えたなたらーっ(汗)ちょいとLvUPしたやんむふっるんるん
> テッちゃんさん

この調子で小説もポケモンもLVUPグッド(上向き矢印)だぜ(笑)指でOK

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