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短編小説 私立カタパルト学園コミュのあるこほりっくどりーむ

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浮腫んだ顔で目を覚ます二度寝明けの朝。

朝と言うか昼前か?

テーブルには昨日飲んだ酒瓶やビールのアルミ缶が散乱して居る。
顔を洗いに洗面所に行く。バスルームにルージュの伝言なら色っぽいが、洗面台の鏡に歯磨き粉で

「バカ!」

と書いてある。

妻が書いたのだろう。知った事か。
血走った目が映った鏡を、顔を洗いながら飛沫でこすって見る。
キュイキュイ…と尻の穴がザワつく様な音を立てて乾いた白い文字が泡を立てた。

多分これでまた彼女は半月は実家だろう。
歯ブラシを口に突っ込みながら自分の間抜け面に笑いかけて見る、途端にオエッとえずく。

まだ酒が抜けていないので、冷蔵庫を開けて隅に転がって居た缶酎ハイのプルタブを開けた。
昨日の食べ残しのアンチョビを指で摘んで口に入れる、生臭い。
缶酎ハイはアンチョビの油と一緒にたちまち胃の腑に収まった。
空き缶と空瓶をゴミ箱に投げ込む。瓶が乾いた小気味いい音を立てて割れた。

指を舐めながらカーテンを薄目に開けると光が埃の線を刃の様に光らせて部屋の闇を切り付けて来る。

「♪きょーもいい天気ー」

気分とは裏腹に陽気なメロディが口を衝く。
酔ってるのか?

ヨッテルゼキョウダイ!

よし、じゃ酒を買いに行くか!
ドレッサーの引き出しを引き抜くと逆さにする。ルージュやチークやよく分からない小瓶が音を立てて散らばる。俺は銀色の缶を探す。妻の諏訪子がその中に幾許かの金を隠して
あるのは先刻承知だ。

缶の中には思ったより纏まった紙幣が几帳面に畳まれてあった。お祝い金とかパート先で出た報償金とかだろう。
マルメラードフさながらに震える手で、それをポケットに入れて部屋を出た。

羽織ったジャケットに入れっ放しになっていた携帯にメールのサインが光って居るのに気付き開いて見る。
ハツネからだ。

「今日、時間あるからこの間の約束の焼肉行けるよ」

いつの約束だそれ。キャバクラで酔った時に話した事など全く覚えて居ない。まあ、いいか。金はあるし。

駅前のコンビニに入り、カップ酒を数本と魚肉ソーセージを買う。レジの子が釣り銭を俺の手の上に落とす様に返して来た。構うものか、朝から機嫌がいいんだ俺は。

公園に行ってベンチで飲む酒は美味い…。
嘘だ、酒は何処で誰と飲んだって一緒だ。

ソーセージの開け方が分からなくて少しイライラするが、ビニールごと囓ってビニールは吐き出す事にする。

子供を遊ばせに来た奥さん方が、こっちを異物を見る様な目で見て居る。

…いいのさ、今朝の俺は機嫌がいいから。

カップ酒を三本飲んで公園を後にする。ほてった顔に風が心地よい、頭は相変わらず霞みがかかった様に取り留めない考えが浮かんでは消えるが。
そうだ、ハツネに電話しなきゃ。

どうせ本名じゃないが、店でハツネと名乗った女はこちらが何を話しても
「ふーん、凄いね!」と笑ってくれる。家が神社で巫女のバイトをして居たんだがこっちの方がお金が稼げるんだそうだ。
「だからハツネって言う名前なの。わかる?ハツネ巫女。面白いでしょ?」
と彼女が笑うので一緒に笑ったが何がおかしいか実際のところ分からない。
まあ巫女もキャバクラのキャストも神代の昔からある職業だ。


ハツネと待ち合わせの約束をして、時間潰しに適当に目に止まった喫茶店にはいる。

窓際に座り店の奥を何気なく見ると、諏訪子が居た。まだこちらに気付いて居ない。
キッチリスーツを着込んだ男と何やらヒソヒソ話をしている。
冷や汗があふれた。
気付かれない様に席を立ち、寄って来たウェイトレスに
「すまん、財布を忘れた…」
と低い声で呟いて店を出た。

諏訪子と話して居たあのスーツの男は誰だろう。
喫茶店を出て、動悸が治まって来るとそんな疑問が頭をもたげて来た。

ダレダッテイイジャネーカキョウダイ!

うるさいな、酔いも醒めたぜ。

ジャ、コウシテヤロウカ?

奴が頭の中で暴れ始めた。頭が破裂しそうだ。
俺はたまたま目についた酒屋の自販機に取り付くとポケットから小銭を出して手当たり次第にスリットに入れようとした。幾枚かの貨幣が路に落ちて甲高い音を立てる。それに構わず小銭を入れ続け、やっと灯の点いたボタンを押すと重く鈍い音とともにビールが落ちて来た。その場で飲む、もう一本、もう一本…。

ヤレバデキルジャネーカ、キョウダイ!

頭の中で奴が叫ぶ。そうだ、俺はやれば出来るんだ…。

ふわふわとした気分で人心地つくと、ハツネとの約束を思い出した。時計を見ると約束の時間が近い。慌ててフラフラと約束した駅前に急いだ。

「遅いよー」

と待って居たハツネが言う。スカートにピッタリとしたズボンを履いた妙な格好をしている。
…多分これが今オシャレなんだろう。
俺の視線に気付いたのか変なポーズを決めて彼女が言った。

「似合う?ワンピにレギンスを合わせて見ました。カラーコーディネートはこーでねーと」

…何?

「やだ、笑うとこよ?…あ!もうお酒臭い!どこで飲んでたのよー」

よく喋る女だ。面倒になったが取り敢えず駅前にある焼肉屋に連れて行く。
旺盛に食べるハツネ。焼酎を飲む俺。
何か食べる度に
「ね!これ美味しいよ!」
とか言う。素直なのか、それが礼儀だとでも思って居るのか…。
おまけに食事が終わると上目遣いで俺の顔を見ながら
「ね、今日ボトル入れてくれない?今月みんな渋いのよ…お願い!」と言って来た。

家からくすねて来た金はまだ余裕があるのでいい加減に頷くと、腕にしがみついて来た。

ナア キョウダイ…

頭の中でまた奴が話し掛ける。
煩いな。

腕にしがみついたハツネを連れて焼肉屋を出ると、同伴されて彼女の勤めるキャバクラに向かう。

ナア キョウダイ、コノサキ スコシヤバソウダゼ…?

道を歩く俺の頭の中で、またあいつが何か言って来る。

何がヤバいって?

…ミロヨ

行く手に、諏訪子が立って居る。隣りにスーツの男も。

ハツネが異変を感じたのか、俺から身体を離した。

「あなた、大事なお話があります。今から家へ来ていただきませんか?」

他人行儀な妻の声。なんだ、俺に話は無いぞ。お前は実家に帰ったんじゃないのか?

スーツの男が張り付いたような笑顔で俺の前に立ち塞がった。

「はじめまして、弁護士の霧雨と申します。奥様より委任を受けまして参りました…」

弁護士?何を言ってるんだ?

頭の中の奴が言う。

ソイツハヤバイゼ!ヤッチマエ!

ヤバい?ヤっちまう…?

ソウダ!ヤラナキャ コッチガヤラレルゾ!

…そうか、殺られるのか…。

頭が痛い。割れそうに痛い。


コイツノセイダ!

気付くと俺は奴の首を絞めて居た。
ハツネが叫ぶ。諏訪子が俺の腕にしがみついている。
さっきまでハツネがしがみついていた腕に。
俺は奴の首を絞める。
首を・絞める。

サイレンの音。




セイレーンの声…。

コメント(4)

タクシードライバーが浮かんだぜキョーダイ!

つか安定感!!!横書きの長文は読まないあたしですがグィグィ♪であります!

知った事か。←気に入ったグッド(上向き矢印)
> ランディさん

早速のコメント嬉しいです。
過分なお褒めの言葉を戴き有難う御座いました。
せっかく参加させてもらったんで記念に書きましたがやはり走り過ぎで何だか分からん文になっちまいましたあせあせ(飛び散る汗)
また頑張りますウッシッシ
セイレーンて、こんなビーバップ調の喋り方だったとは…わーい(嬉しい顔)

ハツネ巫女なんて、マニマニなあたくしには堪らない命名センスw
う〜ん、ミコミコナース南無…



面白かったですわーい(嬉しい顔)ぴかぴか(新しい)
> 神憑くさん

コメント有難う御座います!ぴかぴか(新しい)
新参者ですが宜しくお願い致します。
ハツネに言及下さって嬉しいです、因みに登場人物名はみんな似た様なモンです。分かる方だけ片頬で笑って「クダラネ」と言っていただければ幸いです。

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