Silent Jealousy ________________________________________ サビ部分 悲しみに乱れて 戻れない愛を飾る 繰り返す孤独の中に ________________________________________ 「戻れない愛」とは、二度とは成就しない愛。ここでは「紅」と同じように、死者との愛、生者との愛に境界線を引いているとも解釈できる。これからどう努力しても、想ってみても、死者からの返答はない。それが「戻れない愛」。YOSHIKIはそれでも「戻れない愛」を飾ろうとしている。孤独を埋める唯一の手段は、YOSHIKIにとって「戻れない愛」を飾ること。「一人にしないで」と、未だに強く「貴方(貴女)」の愛を求めているYOSHIKI。 ________________________________________ Tell me true 何処に行けば 苦しみを愛せる I still want your love 愛を止めて 狂い咲く記憶を消して 何が真実かわからず、苦しみを必死に拒否し、けれど苦しみに愛される悲しみの中にある。 あなたを愛すれば愛するほど、「戻れない愛」であることを意識し、苦しみは増加する。「戻れない愛」は苦しみと切り離すことはできない。それでも、「still(未だに)」、あなたを求めている。あまりの痛みの中で、苦しみを忘れたいYOSHIKIもいる。「愛を止める」ことは、あなたを完全に忘れることでしか叶わない。あなたとの「記憶」を消して欲しい。苦しみと愛の狭間で、激しく葛藤するYOSHIKIが描かれている。 ________________________________________ 以下は、間奏にあるYOSHIKIのポエムリーディング(英詩)を、私が日本語訳したものです。 ________________________________________ (日本語訳・とーや) 私はただ あなたと共にいたかった 私はただ あなたの美しさを抱く吐息を感じていたかった けれど 私は何をしたらいいか解らなかった 何かを告げることさえできなかった 意識が戻ると すべての存在が―――あなたさえも―――時間によって消し去られていた けれど すべてが消えた今でも 記憶の傷だけは消えることはなかった 私はあなたを愛さずにはいられない 私の涙を止めて 私の想いを止めて 私の記憶を消して・・・ ________________________________________ 貴方の記憶がある限り、貴方を愛せずにはいられない。YOSHIKIがどれほど「失った者」を愛しているか解ります。 悲しみに乱れ狂うYOSHIKI・・・。 ________________________________________ Say Anything ________________________________________ You say anything 傷つけ合う言葉でも Say anything 断ち切れない心に You say anything Just tell me all your sweet lies Say anything 演じきれない心に ________________________________________ たとえ、傷つけあうような言葉でも良い、あなたの言葉が欲しい。未だにあなたとの思い出、あなたとの愛を断ち切れない私の心に、何かを伝えて欲しい。たとえ、それが嘘でもいい、嘘でもいいから、私に何かを伝えて欲しい。演じきれない心に。「紅」や、「Silent Jealousy」でも描かれていたように、YOSHIKIは、「失った者」への想いを歌っている。何故、そうまで「何でも良いから言ってくれ(直訳)」と、YOSHIKIは問いかけているのか?やはり、ここでも、「もう二度と返事をすることができない者」=「死者」の存在が浮かび上がる。もし、愛する相手が生きていれば、ここまで問いかけるだろうか?もちろん、終わってしまった間柄に関して、「傷つけあう言葉でも良いからあなたの声が聞きたい」というのは成り立つ。YOSHIKIはその要素を排除しないで、恋愛としての意味も含ませている。ただ、YOSHIKIにとっての第一義は何か?それはやはり失った者=死者への想いだろう。 ________________________________________ Time may change my life But my heart remains the same to you Time may change your heart My love for you never change ________________________________________ 時間は私の人生を変えても、私のあなたへの想いは変わらない。時間は私の心を変えたとしても、私のあなたへの愛だけは、決して変わることは、色褪せることはない。人々は、誰かが亡くなると、悲しみを覚える。それでも、時間が経つと、人々は死者を忘れていく。YOSHIKIは自分のメロディにのせて、「あなた」への想いを高らかに歌う。たとえ、どれだけ時間が経っても、たとえ、どれだけ私の人生が変わっていったとしても、あなたを想う気持ち「だけ」は変わらない。私の愛だけは変わらない。YOSHIKIの「あなた」への激しい想いが、ドラマチックなメロディにのせて歌われている。 ________________________________________ 以下は、曲の最後にあるポエムリーディング(英詩)の日本語訳です。 ________________________________________ (日本語訳・とーや) 私は信じていた・・・ 時が経てば すべてが美しく変わり 雨が止めば 記憶の傷は涙が消し去ってくれる あらゆる存在はみずみずしい色を帯び始め あらゆる音は 心からのメロディーを奏で始める 嫉妬はその叙事詩の1つのページを飾り 欲望は夢の中に在る けれど それでも私の精神は未だ混沌の中にある そして・・・ ・・・ ________________________________________ この当時のYOSHIKIの心境も鮮明に描かれています。現実から逃げて、夢の中で泣いていたと心境を吐露してもいます。 題名にもなっている「Say anything」があまりにも痛い。亡くなった人は幾ら問い掛けてみても答えてくれない。 「私の貴方への想いは変らない」とYOSHIKIの愛の深さが解ります。 時流の後には、悲しみも苦しみもすべてが美しい「思い出」になると信じていた。 混沌を拒否しながらもその中に生き続けたYOSHIKIは、すべてを美しくすることで、逃げていた。美化しながら生きながらも「欲望は夢の中に在る」。 欲望よりも遥かに大きい「夢」。欲望は夢の中の1部でしかない。 それほどの夢があるのに・・・、混沌の中にある、と。 Xのセカンドアルバム「Jealousy」から「Art Of Life」に引き継がれる詩が、この「Say Anything」のポエムリーディングとなる。 ________________________________________ 以下は、「Say Anything」に関するYOSHIKIさんのインタビューです。 「あのナレーションは、目の前に居る本人に語りかけている、みたいな。手紙的でもあるのかな・・・「ただ一緒に居たかっただけ、ただ貴女の空気を感じていたかっただけ」、と。「だけどどうしていいのかわからなかった、何も言えなかった」、と。そして今も勿論。で、その怒濤から目醒めた時に・・・そう、「全ては"時の流れ" に流されてしまった」、と。だけど「深く残った心の傷は決して色褪せない」、だから・・・「記憶を消して愛を止めてくれ」って感じですね。つまり、「想いでを殺してくれ」みたいな。」 「「Say Anything」は・・・、'時の流れ'は全てを変えてしまうんですよ「時が経てば全ては美しい想いでになる、それを俺は信じている」、と。「全てのものが新しく進み始め、メロディーは美しく奏でられ始める」、と。「そしてジェラシーは物語の1ぺージを飾ってしまう、そこに閉じ込められてしまう」、と。で、「だけど心はまだカオスの中に居る、未だに。そして・・・」で終わっちゃうんだけど」(市川哲史著・「ART OF LIFE」92年刊、より) これは引き継ぐのが、「Art Of Life」となる。 ________________________________________ このインタビューでもわかるように、YOSHIKIは、1つの詩に幾つかの物語を込めています。「ただ一緒に居たかっただけ。貴女の空気を感じていたかっただけ」と、恋愛を主軸とした物語と、YOSHIKI自身の人生を描いた物語が主軸になっている。悲劇を発端に走り続け、気がつくと、悲しみは過去のものになってしまったと感じた。しかし、深い傷が癒えたわけではない。今もまだ悲しみはYOSHIKIを覆っている。BLUE BLOODで描かれた精神世界よりは少しだけポジティブになりました。過去は過去だと判別できるようにはなった。しかし、依然として悲しみは変らない。時間の流れはJealousyのような幾つかの感情を、物語の1ページに封印する力がある。けれども、YOSHIKIは変らずに混沌の中にいる。そして、Art of Lifeに引き継がれるわけです。 ________________________________________ もう一度まとめると、 「BLUE BLOOD」の時点では、 悲しみが今も「青い涙、青い血」として存在し、YOSHIKIを覆っている。 「Jealousy」で、 時間の流れが悲しみを癒すとYOSHIKIは信じ、確かに幾つかの感情は、過去の1ページとなった。しかし、今も変らず「失った者」を思っていることに変わりはない。 この2作品の間に、「失った者」の不在を、受け入れようとする態度が見られます。ただ、この時点では、「過去の1ページになった」と、無理やりに処理しようとしています。自分の中で不可避である要素として受け入れるというよりは、別のものとして処理してしまおう、美化してしまおうという部分が否めないと思います。