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司馬遼太郎コミュの「空海の風景」を読む

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 久しぶりに司馬遼太郎さんの本を読み直した。彼はバブル経済全盛の頃に、日本の将来を憂えて亡くなったといわれている。この偉大な国民作家の澄んだ目は、経済に素人であっても日本の現在の姿を見透かす目をもっていたのだろう。

 司馬遼太郎氏は、近世史、近代史に関わる小説を多く書いている。「跳ぶが如く」「世に棲む日々」「燃えよ剣」「坂の上の雲」等が代表作だ。圧巻はやはり日露戦争を舞台として秋山好古、真之兄弟を描いた「坂の上の雲」であろう。近代化に向けた日本の努力は日露戦争の勝利という形で実現する。しかし、そこを頂点として近代の坂を転がり落ちる日本について、司馬さんはいろいろなエッセイを通じて痛恨の思いで随所に書いている。そういう中で異色作品が、古代史を扱った「空海の風景」であろう。

 その名の通り、弘法大師「空海」の物語である。インド占星術、チベット密教の研究をライフワークとする私としては、日本密教のの創始者空海の生涯に大いなる関心がある。
 空海は今から約1,200年前に実在した僧であり、我が国に真言密教を始めてもたらした。空海は、「弘法大師」、「お大師様」などと呼ばれ、あまり仏教になじみのない人でも名前だけは聞いたことがあるだろう。

 司馬遼太郎氏によれば、空海こそが「人類普遍の思想」を体得した、日本史上、空前絶後の「天才思想家」なのである。確かに日本文化史上「人類普遍の思想」をもった天才は極めて少ない。「人類普遍の思想」とは、国や時代を超えて通用する思想を意味する。また、普遍的な考え方を基礎とする社会的枠組を「文明」という。日本人は創造性を欠くとよく言われる。国際政治学者のハンチントンに言わせると日本文明は中国文明の亜種ではなく、独自の固有文化をもった国と定義されている。日本のようによくも悪くも「固有の文化」が高度に発達した社会では、元来、普遍思想そのものが生育しにくいものらしい。

 この本では、まず、空海の生い立ちに始まり、留学僧として、当時、世界で最も高度な文明を築いていた唐の都へ渡り、師と仰ぐ恵果にその才を認められ、1年半という短期間で、最高の普遍思想である「密教」のすべてを学んだ。さらに、恵果より正統な後継者として認められて帰国した後、入滅するまでの間、密教をいかに広めたかが描かれている。同時に、著者は、「天才」空海の人間像に迫ろうとしている。

 空海は単に密教だけの伝達者ではなかった。窮民救済の為に開いた人口の溜池は彼が土木工事の天才であったことを窺わせるし、「弘法も筆の過ち」と言われる如く書道の天才であり、日本最初の小説「三教指帰」も彼が書いた。いわば日本のミケランジェロと言ってもよい万能型の天才である。

 時を同じくして唐へ渡り、天台宗を開いた「最澄」との比較が面白い。最澄は、朝廷が全面的に支援して、「官僧」として唐へ送り込んだ、当時の最も優れた僧の一人である。両者はあらゆる面において対極にあった。空海は室戸岬の岩窟で虚空蔵求聞持法の修行をつんだ修行僧の経歴をもつ。そういう意味で、空海は最澄のことを単なる学僧とみていたようで、厳しい修行の裏づけのない学僧に密教の秘儀など悟るべくもない思っていた節がある。
 後に日本仏教の流れを2分する比叡山延暦寺を開いた最澄と高野山金剛峰寺を開いた空海は、互いに尊敬の念を払いながらも相容れぬライバルであった。

 まあ、こういう筋の小説を読んでいると、一日等すぐにたってしまう。さあ、心の洗濯をしたので明日から又仕事に取り掛かろう。

コメント(22)

「空海のいる風景」は司馬さんが自分で書いた中でも最も気に入っている作品だとか。

司馬さんの作品には「余談ではあるが...」と文中で脱線することがよくあります。その余談が作品全体の歴史的背景をわかりやすく説明してくれており、有り難い寄り道なのです。そして作品の内容に厚みを与えています。

この「空海のいる風景」ではその余談の効用が遺憾なく発揮されており、平城京時代の終わりに生まれて平安京時代初期を生きた、空海という人間のおかれた状況を生き生きと描いています。

この本で書かれている大事なこと。

?空海は仏教はインドから中国経由で漢語訳されて伝わったものであり、その真髄は梵語でなければわからない。

?空海は仏教以外に、ゾロアスター教や景教も研究した。

私は空海は宗教家だけではなく哲学者、科学者ではないかと思うのです。しかし宗教家としての空海は「読書だけでの理解では高いレベルに到達できない」、別の言い方をすればセンスがなければどうしようもない、と感じていたように思えます。

空海に密教の文献の貸し出しだけを求めた最澄に対して、修行して体感できなければ読書のみでは秘儀は会得できない、と注意するけれども最澄はそれを聞き入れない。最後は絶縁状態になる。

これは天才と秀才の違いなのではないでしょうか?秀才とは優秀な生徒。でも先生あって生徒。天才とは先生がいなくても会得できるが、先生になったら教える生徒を選ぶ。
今、その本を読んでます。
下巻で、ほとんど終わりですが、再度読み直そうと思ってます。
空海の人物像をとらえるのにこれ以上の本はない。空海の頭の中身を知るには、松岡正剛「空海の夢」が傑出しており、司馬空海とともに、この2作が空海本の双璧といえます。
空海は小説にはなり得ない人物です。小説の手法で描くと小さくなってしまう。陳舜臣「曼荼羅の人」もその弊をまぬがれていない感じがする。だから司馬さんは、じつに巧妙な筆法をえらんだものだと、感嘆させられます。

空海は日本人初の世界人ですね。彼が長安で出会った顔ぶれを想像するだけで、ほんとうに興奮させられます。とくに般若三蔵。玄奘にまさるとも劣らぬ大旅行家であるこの人は、恵果よりも大きな影響を空海におよぼしたのではないかという気がします。アダムというネストリウス派の宣教師が般若に引っ張られて仏典の共同翻訳!をしたりしましたから、空海はまちがいなく般若とアダムを通じてキリスト教にふれる機会があったはずです。むろんゾロアスター教にもマニ教にも。もちろん、なんだ仏教にくらべればどれも取るに足らないな、と思ったことでしょうが。
私の中では、司馬氏というと戦国あるいは幕末というイメージが強くあります。古代史のしかも、仏教というテーマで一体どのような空海像が描かれているのか…。ぜひ読んでみます。
今日買ってきました。
出だしから、良い感じで引きつけられています。
良い本を紹介有り難う ってまだ早いか・・
ここに書き込むには、もう一度司馬さんの本を読み返さないと、出来ませんね。皆さん詳しく分析していますね。(尊敬)

空海の夢、という作品もあるのですね。
今は 坂の上の雲、を読み返し初めているところですが、そのうちこれも読んで見たいと思います。
先に松岡正剛『空海の夢』のことにふれましたが、松岡氏自身、その本を書くにあたって、司馬『空海の風景』をかなり意識したようです。松岡氏の司馬空海評も的確でおもしろいので、興味のあるかたは以下へどうぞ。

http://www.eel.co.jp/03_wear/02_selfread/kukai02.html
司馬さんは、終戦後、京都のお寺、特に東寺の書物を読み漁ったとのこと。
若い時のからの宗教書を読んでいた蓄積が、空海の風景につながったと、どこかで読んだ記憶があります。
『空海の風景』、再読しています。最初に読んだのは、15年ほど以前。
それから、『歎異抄』や親鸞、蓮如、法然、日蓮の伝記などを経ての再読なので、この前とは、感動の高まりが、まったく異なります。

いまは、1ページごとに、躰がふるえる思いです。
ただいま、空海の景色読んでます〜
かなり困難。 わからない単語だらけ。
でもおもしろいので、やめられない。
マイペースに進めてます。
今年中に終わるかしら。笑
やっぱ、難しいですよねー。
これすらすら読める人、尊敬。汗
おもしろいですけど。 ただいま下巻にはいりかけようとしているところです。 空海、長安にいます。
のたりのたりと進んでます。

孔雀の話おもしろいですねー。
ねお、でしたっけ。 泣き方が真言になるっていうやつ。
笑った。笑
この小説読んで日本の仏教は仏教が必ずしも仏陀の教えでは
無いことを始めて知りました。

最初に読んだ時は空海が嫌いになった、って記憶があります。

これを読んだあと、「街道をゆく」の仏教に関する
記述を拾い読みすることが私のオススメです。
空海の風景は非常に好きな作品の一つで、学生時代に初めて読んだんだったかな。
学生時代、私は古本で司馬作品を悉く購入して、普通に買えるものはそれこそ全て網羅して読んだのですが、そんな中から三つだけ選べといわれれば、私は

「空海の風景」
「ひとびとの跫音」
「微光の中の宇宙」

を選びます。
そのくらいに、この作品を評価してますよ(笑

ちなみに私の中で一番読むのが困難なのは「翔ぶが如く」。
文庫10冊とはいえあんな薄手の本なのに、一冊読むのにえらく骨が折れます。あれをすらすら読める人こそ尊敬しますよ(苦笑
15 ヨッシーさま
>空海が嫌いになった
え、そうですか? 私、今のところ、大丈夫ですよ。
先を楽しみにしてます。司馬さんも、空海の一癖二癖ある性格指摘してますよね、そういえば。
こいつ人間(世の中)なめてるな、という雰囲気持ってたんでは、と予想。笑
仏教、そうそう。私の場合、浄土真宗の親鸞さんから入ったんですけど、仏教といっても、いろいろ違うなあ、と思いました。


16 セイさま
>翔ぶが如く
これは・・もうちょっと司馬作品に慣れ親しんでからにしよっと。。。  汗
空海の風景、興味がないと、絶対読めないです。一ページ一ページ、語彙調べて、日記に載せてますので、ぜひ突っ込みカキコにいらしてください。
脳レベル暴露してます。♪
>たまこさん

最澄が空海の元に使わしたままいついてしまった弟子・泰範を
戻るように促す場面があるのですが、そこで空海に嫌悪感を
抱かなければ、あなたは大丈夫です。
もっとも、私も終盤に近づくにつれて
「空海は寂しい人だったんだな」と思うようになりましたが。
昨日、『空海の風景』を読み終わりました。非常に面白く、忙しい仕事の後、寝る前にこの本を読むのが楽しみでした。

人間としての空海をこういうタッチで描くという点も面白かったですし、おぼろげながら「密教」の輪郭だけでも少し理解できた気になれました。
初めまして!
本日このコミュに入会した者です。
司馬遼太郎先生の本は結構読みましたが昨年初めて「空海の風景」を読みました。その時の日記を下記に引用致します。

『小説家と言うのは一つの小説を書き上げるのに膨大な資料に目を通さなければならないだろうが、空海の時代の資料は現代文ではなく漢文だからそれを読みきる力が無ければ話にならないし、宗教というと観念的であり内容の把握自体が半端ではないだろうと痛感するような小説でした。

途中でやめようかなと思った事もあったけど本日目出度く読破できた。
今回初めて知った事は同じ時期に天台宗の最澄(空海より8歳年上)がいて一緒の遣唐使のメンバーで唐に渡っていた事。

それにしても宗教の世界は分からない!
特にこの真言密教とはどういうものなのかチラッと垣間見ることも出来なかったような気がする。
私の理解を超えた世界であることは事実。

ただこの頃の史実が程よく折り込められていたので最後まで読めたのかも知れない。

最後に司馬先生は凄い!!』
たまたま弟の部屋にあったんで読みました。本屋や図書館でみつけても読まなかったと思います。
私も適度にちりばめられた史実の描写が楽しかったしおかげで全体を楽しめました。

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