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iM@S サイドストーリーコミュの蒼い鳥 番外編 少しだけ未来のお話 - 遠い街から -

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“Chihaya? Here the air is dry. You should not a mask?”
“Hmm ... Well. But, I'll stop”
“Is that so? Well, I hope I do it. Trouble is because of you”
“Oh, Jodie .... Cold nothing to you?”

 約10時間の長旅に、わたしのからだは少しだけ疲れを覚えていた。
 時差調整にと、機内では寝ずに過ごしたのだけれど、生来からだが丈夫でないわたしには、少しきつかったみたいだ。だから少しだけ、頭がボーッとしている。そのせいではないけれど、冬のこの時期、外に出る時は必ずマスクを着用するのに、この時は忘れてしまっていた。
 けど、まあ、うん。
 ジョディはと言うと、「なにもしないで起きているなんて苦痛だわ」と言って、わたしの話相手になることを放棄し、フライト時間全てを使い切ってグッスリと眠っていた。だから今は元気いっぱいだ。
 空港の長いロビーを歩く。もう一年ぶりになるだろうか、そこここで読み取れる日本語の氾濫に、やっと帰ってきたという実感が湧いてきた。
“Chihaya! Chihaya!”
“Yes,Yes... .... It's up to?”
“"Yes" is it enough once”
“They'll call you my name twice. ━━━So?”
“That what?”
 そこには、A全ポスター一枚分のボードに目一杯、
<お帰りなさい! 千早ちゃん!>
と大きく書かれていた。
「あの娘は……」
 思わずその場にへたり込んでしまった。
 そもそも、空港でプレートを持って出迎えるなんて、異国から来た人への案内のためにあることだ。それをあの娘はなにを思い違いしたのか……。
「ちょっと春香!」
“What's up?”
 怪訝顔のジョディを尻目に、わたしはそのボードに向かってまっしぐらに駆けだした。
 まったくあの娘ったら……!
 心の中でそう呟きながら、わたしは逸る気持ちに駆けだした足を抑えることが出来なかった。

「お帰りなさい、千早」
「お帰りなの、千早さん! あはっ!」
 そこに居たのは、律子、美希の二人だった。
「え? あ……、た、ただいま。出迎えありがとう。みんな元気そうね」
「千早さんも、元気そうでなによりなの」
「疲れたでしょ? ━━Nice to meet you. Welcome to Japan」
 律子が後ろから駆け寄ってくるジョディに気付いてくれた。
「始めまして。私は、Jodyと言います。みなさんにお会い出来て、光栄です」
「あら? 日本語、お上手なんですね」
“A little”
「私は秋月律子。Call me,”Ritsuko”」
「ミキは星井美希。Mikiでいいよ☆」
“Hi,Miki”
「相変わらずね、二人とも」
「千早もね」
 空港は時季外れと言うこともあって、行き来する人影はまばらで、なにかと目立つわたし達がこうやって歓談しても、気に留める人はごく少数だった。それでも、アメリカでの活動が主だったわたしは別として、美希は今や日本中で知らない人がいないくらいの国民的なアイドルだ。こんな空港の真正面に身を晒して良いわけがない。
「そんなことより、律子」
「なに?」
「早くここを離れないと、大変なことになるわよ」
「それもそうね。一応、デマの情報を流しておいたから、美希がここにいることを知っている人はいないだろうけど━━━━それでは、行きますか」
 そう言いながら、律子は先ほど掲げていたボードを畳み始めた。
 無意識にそこに視線が移る。

 そうよね。ここに春香が来ているわけがないじゃない。
 だってあの娘は今━━━━。

「ロンドン? どう言うことだ。お前、オランダに行ったんじゃなかったのか?」
 事務所の扉を開けるやいなや、プロデューサーの声が飛んできた。
「間違えた? 何をどう間違えたらそんな所に行けるんだよ。はぁ?! 付いて行く人を間違えた、だあ? お前……。打ち合わせの時にコンダクターの人とは会っているはず━━━━いや、もういい。とにかくそのホテルから動くな。あとはこっちでなんとかするから」

「……なにか大変な様ね」
「みたいね……。まあ、とりあえずはくつろいで。えーっと、Please relax」
「ありがとうございます。お構いなく」
「千早お姉ちゃんだ→!」
「あ、千早ちゃん、お帰りなさい!」
「あらあら、お帰りなさい。ふふ」
 みんな相変わらずで、銘々にわたし達を迎えてくれた。けど、
「おう千早、もう着いたのか、早いな。こっちでも良く顔を見ているぞ。順調なようだなってところですまない、律子!」
「……なんですか」
「K企画とD広告社に至急電話。緊急事態だって言ってくれ。詳細は後で話す。今日の……、そうだな、19時にT東京の会議室で緊急会議とだけ言っておいてくれ」
「むー、プロデューサー。今日はミキも律子…さんもお休みなの。それに、せっかく千早さんだって帰ってきてるのにぃ」
「本当にすまない」
 そう言うと、プロデューサーは社長室に駆け込んでいった。
「いいわ美希。律子も。わたし達のことは大丈夫だから」
「まったく、しょうがないわね。ゴメンね千早、帰って早々、こんな有り様で」
「いいのよ。慣れっこだし、むしろ懐かしいくらいよ」
「やれやれ、あの娘のドジもいよいよワールドワイドになってきたわね」
 そう言いながら律子は、髪の毛をちゃっちゃと手早く三つ編みにすると、受話器に手を掛けて早速仕事に取りかかった。それが合図であるかのように、にわかに事務所は騒然としだし、自然とわたし達は取り残される形になった。
「むー、つまんないの」
「仕方がないわ」
“Sorry Jody, Seems something had trouble”
“Right, I know. Don’t care”

 そうしてわたしとジョディは、事務所に居座っていても邪魔になるだけだからと、予定を少し早めて、街を案内することにした。

 浅草寺、隅田公園、花やしき。わたしはよく知らないのだけれど、ジョディは下町の風景が見たいと行ったので、そんな所に行ってみた。わたしが思い描いていた下町の風景ではなかったけれど、それでもジョディは満足した様子。
“Like?”
“Yeah, I really like. Something, this, I miss”
 美希はさすがに置いてきた。さすがにこの人混みに連れ出すわけにはいかないから。大分、むくれていたけど。
“I want to show”
“Who?”
“My Mum”
“Yes……. Me too”
 冬の空は鈍色で、何処か寂しげではあったけど、わたし達は暖かい気持ちに包まれていた。

 事務所に戻ると、わたし宛にと葉書が一枚届いていた。差出人は、春香からだった。


Dear 千早ちゃん

 お帰りなさい! 千早ちゃん。
 この葉書は空港で書きました。だから多分、千早ちゃんがこの葉書を手にする頃には、わたしはアムステルダムにいると思います。
 わたしは一つ、ドジをしてしまいました。チューリップがいつ頃見られるかを調べてこなかったことです。一面に咲くチューリップ畑、楽しみにしていたのになあ。ちゃんと調べておくべきでした。でももし、チューリップが咲いていたなら、千早ちゃんにも送るね!

 今回は入れ違いになっちゃったね。せっかく久しぶりに会える機会だったのに。
 でも、何時でも、何処でも、わたしはずっとわたしのままです。だから少しくらい離れても、遠くにいても、千早ちゃんの隣にわたしは居ると思ってます。今でも。

 次に会えるのは何時になるのかな。その日を心待ちにしています。

同じ空の下から
天海春香

“Chihaya? What's happening?”
“I don’t have anything going on. Don’t worry, and not care……”
 葉書を読み終えたら、急に逢いたい気持ちがあふれ出てきていて。
 ジョディはそっとわたしのほほを拭いながら。
“Back to the U.S.?”
 と優しく聴いてきた。
“So it is not. But……, I miss……”
“You are a girl to do……”

 事務所に残っていた娘達と晩ご飯を食べに出かけた。その後、みんなでカラオケに行かないかと誘われたけれど、少し疲れの残っていたわたしは、申し訳ないけれどとその誘いを辞退することにした。ジョディはと言うと、事務所のみんなともすっかり打ち解けたみたいで、わたしを残して意気揚々と出かけていった。

 ホテルまでの道行きは、タクシーを使わずに、歩いて行くことにした。
 イルミネーションが目映くきらめくカフェやブティックが居並ぶ街を、ゆっくりと歩く。
 そう言えばこの道は、まだわたし達が研修生だった頃によく歩いた道だ。お給料がまだまだ寂しかった頃なので、目の毒だからと二人揃って俯きながら通り過ごしたこともあった。あの頃は切実に思えたそんなことも、今になって思い返すと、なんだか心がくすぐったくなるような、優しい気持ちになれてしまう。

 ふと立ち止まって、ポーチから春香からの手紙を取り出した。少し丸みのある文字をそっと撫でてみる。
 同じ空の下で。
 あなたもこんな風に、想うことがあるのかしら。

 風が一つ駆け抜けた。冬の香りが鼻腔をくすぐる。
 返事を書く代わりに、電話をしてみよう。きっと、心細い思いをしているだろうから。
 そう思った頃にはもう、さびしさは風にさらわれ、空へと飛んでいった。

 少し遅くなったけど。
 メリークリスマス、春香。

コメント(1)

なるほどね。千早のエピソードですか。読ませて頂やした。自分もアイマスを書いている者です。
トピックを立てましたのでよろしければ読んでいただければ幸いです。

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