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ポール・オースターコミュのTrue Stories ( no.2) --Why Write ?--

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True Stories --Why Write ?-- なぜ書くか」の章を読みます。


過去に読んだインタビュー記事のうら覚えではあるが、オースターはこんなことを語っていた。
「(書く前から)自分が作家であることを疑ったことはなかった」
「自分が世に出るのではない。世の中が私を発見する」

このセリフは有名作家の傲慢さからでたものではない。本当の話であり、作家としての覚悟でもある。例えば「どうして私はこんなに賢明なのか」という文章を書いた著作家がいる。この文章を書く作家も同様な心情であったと思う。

なぜ書くか。

オースターは色んなインタビューに答える。
例えば。
インタビュア「もっとも影響を受けた作家とその作品は?」
オースター「特にはいないけれども、あえて言えばセルバンテス『ドン・キホーテ』かもしれない」
別のインタビューア「好きな小説は?」
オースター「ヘミングウェイの短編はすべて読まなくてはならない」
(以上、筆者のうら覚え。時間があれば後ほど調べます)

色んなインタビューアがオースターになぜ書くか、どよのように書くかというようなものを探ってみようとする。
そのような質問に答えるかのごとく寄せ集められた『True Stories』というこのエッセイ集は、彼の文筆家としての原点に迫る面白い作品集だと感じる。特に「Why Write ?」の章の3番目のエッセイは興味深い。

14歳の時、遊んでいた仲間たちとともに突然の雷雨に襲われ逃げ惑い、ついにひとりの友だちが雷に打たれ一瞬のうちに命を落とした。
この事件については、別のインタビューでも状況を興奮気味に語っていた。まるでその時の恐怖が今さっき起こったかのごとく。
「ほんの一瞬だったんだ。ほんの一瞬のできごとで、それまで元気に遊んでいた友だちが帰らぬ人となったんだ。僕が打たれていたとしても不思議ではない」。雷に打たれ焼けこげた臭いのことも語っていたように記憶している。
この事件はオースターの記憶に深く刻まれている。

私たちは、作家や知識人に対して何か示唆してほしいと考えてしまう時がある(ちょっと古い考えかな)。特に困難な事件に遭遇した時、または社会が変化しようとしている時。
例えば「9.11.事件」の際、オースターには様々なメディアからインタビューの依頼があり、オースター自身もできるだけ答えるようにしたという。(「ナイン・インタビューズ」アルク出版)

彼は有名にはなったが、同時に重い荷物をも背負った。それは作家の宿命であるのかも知れない。そして普通の9時-5時仕事をしている人間には見えないものを伝える義務が彼にはあるのかも知れない。いずれにせよ、私たちは彼が創作家であることを知っている。そして流浪の旅人であることも知っている(彼がユダヤ人であるという意味ではない)。
若い時は色々な国境をまたいだ。そして職業作家となった今は、記憶と現実とを行き来しながらさまよっているように私には思える。この比喩は抽象的なこじつけに聞こえるかも知れない。ただ、私の好きな作家がやはりそのようであるように、あるぼんやりとしたテーマの共通点を見出してしまう。例えば、映像作家のエミール・クストリッツァ(「アンダーグラウンド」や「パパは出張中」「白猫黒猫」など)、例えば、漫画家つげ義春(「紅い花」「ねじ式」など)。哲学者市井三郎(「歴史にとって進歩とは何か」「明治維新」等)。
もちろん、同じようなテーマを持つ作家は他にもたくさんいるだろう。

大切なものを失った人間にとって、“歴史の進歩“というものがありえるのだろうか。つじつまが合うように組み立てられいく歴史や現実は、自分にうまく属するだろうか。
オースターは、無意識と呼ばれ、ともすれば記憶から永遠に消え去ってしまいそうなことを、特に書きとめようとする。

なぜ書くか。私の答えは単純である。それはオースターが作家だから。

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