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怪談百物語コミュの第八話

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当時女子高生だったあたしは、ボーイフレンド(召し使い)に運転を
させて、八王子城へ行った。あたしは既に内地の学校へ転校を済ませ、
楽しい本土ライフを始めた頃の話である。

 このボーイフレンドは、あたしのお抱え運転手である。学校への
送り迎え、ドライブ、買い物、何かと便利なオカマだった。今は何処を
どうしているのやら消息は掴めないが、元気でいれば良いなとは思う。

 中間テスト前夜、ニチョにオールで飲みに行き、早朝校門迄送らせた
事もあった。時速200キロでニチョから学校迄30分位で送り届けた
兵だ。こいつに命じて城跡に行った時の話である。

 広い敷地のあちこちを散策していた時の事である。色々な立て看板や
古びた石碑の掠れた文字を、あたしは興味津々で読み耽っていたの。
沖縄の城と違い、本土の城は独特の構造だから、前から興味はあった。

 夕暮れ時で、空にはカラスがカアカアと、城下の町並みはオレンジ色に
染められていた。ボーイフレンドを車に残し、あたしは秋の夕暮れに
暮れ泥む八王子城を堪能していた。

 

 どれくらい時間が過ぎたであろうか。夜の帳が降り始め、辺りが暗く
なって来た時の話である。



 敷地の彼方の潅木の中から、人影が2人現れた。こんな時間にこんな
所で散策している物好きな人間が他にも居たのね。最初はその位に思って
いました。

 でもね、どうやら様子がおかしいの。滑ってこっちへ来るのよ。ほら、
人間って歩いてくるものじゃ無い?遠目でも人間の足下って、動くのが
分かるでしょう?直立してる状態なのね。でもこっちへ来るのよ、、。
しかも着物?姿なの。

 




 変だわ〜。八王子城祭りじゃあるまいし、、、。






 段々近付いて来ると、、、随分古風な恰好なのよ。着物姿は着物姿
なんですが、帯刀して烏帽子を被ってるの。流鏑馬みたい、、。


 でもね、彼等が行く先は、、、、あいつの車。辺りを流して戻って来た
その車に、ヘッドライトが灯ったその車に向かっているのよ。

 本能的に思った、、、、。




 ヤバい!





 ヘッドライトを辿るように進む彼等。幾ら召し使いとも言えども、
何かあったら気の毒だし、、、、、帰るの面倒だし、、、、、(笑)



 あたしはチーターの様にあいつの車の所へ走って行った。



 一応、当時は11秒台で走る俊足女。足には自信があったのですが、
みるみる彼等は車のヘッドライトの光を辿って光源へ、、、、。



 車のボンネットに吸い込まれて、、、、、消えた、、。




 やんぬるかな!




 ダメだ、間に合わなかった。大丈夫かな、あいつ。


 などと思いながら、あたしは車に走り寄って行った。息せき切って
あいつを覗き込むあたし。

 するとどうだろう、、、、、呑気にあいつが声を掛けて来た。「あれ、
どうしたの?そんなに急いで。もう、見学し終わったの?」

 「ちょっとあんた!!なんとも無いの!?大丈夫!?」物凄い剣幕で
問いただすあたしに、あいつは気押されてビビっていた。

 「え?どうしたの?俺が何かした???何かあったの?」あいつは
オロオロするばかり。


 兎に角、こんな物騒な所とはおさらばしないといけないわ。あたし達は
速攻で車を発進させて八王子城を去ったの。

 車中であいつに事の詳細を話した。あいつは要領の掴めない顔をして
困惑し、自分の身には何も起きなかったと言った。不安な顔をする
あいつに、あたしは形式的だが祓っておくことにした。

 帰路の途中、ドライブインに寄り、駐車場であいつの背中を叩きながら
「祓い給え、浄め給え、救い給え!」一応、唱えておいたわ。本来なら、
大祓いの真言宣りでもしなきゃいけないけど、簡易式で御免ね。


 あの人達は、一体何処へ行ったんでしょうね。ボンネットに吸い込まれ
消えて行った。未だあそこで彷徨っているんでしょうかねえ。今では
何も無い城址公園で。


 八王子城は激しい戦火に見舞われ、今では土塁と盛り土された本丸跡、
わずかに残った石垣くらいしか在りません。古戦場だったあそこは、
今でも当時の人々が彷徨い続けていても、おかしくは無いかも知れない。
この機を境に、あたしは八王子城に行かなくなったのは言う間でも無い
事です。

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