ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

怪談百物語コミュの第七十話 僕のテストは?

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 お待たせしました。某進学塾での話です。



 僕は始めての授業に緊張していました。初めての塾、先生方、生徒達、
自分を受け入れてもらえるかな?などと考えていました。


 生徒数は決して多く無い、郊外の校舎。教室には疎らに生徒が座って
僕が来るのを待って居た。どの子も真面目そうで普通の子達だ。

 僕の顔を見て、屈託のない笑顔を浮かべている。この子達とは上手く
やっていけそうだ。この瞬間が一番緊張する。


 軽く自己紹介をして、出席を取る。そして授業を始めた。


 授業は滞り無く進んで行く。適当に子供達とコミュニケーションを
取りながら、和気あいあいと進めて行く。良い調子。


 さて、、、、授業も半ばに差し掛かっておかしな事に気が付いた。

 授業の後半に小テストを施行したんですが、一枚余ったと生徒が
持って来た。

 え?数え間違ったかな?と思ったら、テスト用紙が行き渡っていない
生徒が、一番後ろにポツンと座って居た。

 あれ、君の分は?と聞こうと思ったが、、、、、僕は止めた。




 その男の子には、陰が無かったんだ。




 西日が差し込んでいて、教室は明るかったのに、何故か彼一人だけ
陰が無いんだよね。


 彼は僕の顔をジッと見て、微動だにしない。

 発言する訳でも無く、テスト用紙を要求する訳でも無い。


 僕は何事も無かったように試験監督を始めた。




 時間は過ぎて行き、やがて授業終了の時間となった。

 テスト用紙を生徒達は提出して、退出して行った。




 彼はぽつんと一人で未だ座って居た。じっとこっちを見て
いる。そして徐に始めて口を開いた。


 「ねえ、先生。僕のテストは?他の先生もそうだけど、先生も僕の

  事を無視するんだね、、、。僕テストやりたいな。僕が御勉強

  出来ないから、やらせてくれないの?」



 僕は黙って彼の座る机に、一枚テストと解答用紙を置いた。



 僕は顔中から吹き出して来る脂汗を拭いながら、講師室に戻った。




 代講で行った塾なので、以降の事は知らない。



 ただ去り際に、塾長先生に御挨拶する時、こんな生徒さんが居たんです
けれど、お心当たりは?と聞くと、みるみる先生のお顔は曇った。


 「どうかこの度の事は胸におしまい下さい。御迷惑をおかけしました」

 それだけ言うと、彼はそそくさと奥へ引っ込んで行った。



 都下に実在した塾での話である。その後一年程して、その塾は
閉鎖となったが、、、、、。




 彼はテストを解いたんでしょうか?今となっては全てが謎のまま。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

怪談百物語 更新情報

怪談百物語のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。