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―独創世界―コミュの―真・独創世界―

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世界は終わりなんかじゃない。


何時かまた、遠くて近い世界の下で。


紡いでいこう、この物語を―――。

コメント(2)

―――もし、明日にでも世界が終わると言われたら人はどうするだろう。

悔いの無いように生きようとする者、ここぞとばかりに悪事を働く者、嘆き悲しむ者、各々が世界中に蔓延るんだろうと考える。

人間は揃いも揃ってこう言うのさ、

『これも、運命なんだ……』

ッてね。

運命を受け入れるのは簡単さ。
ただし、運命を覆すのはタチの悪い女から逃げるよりも難しい。

だから、人間は運命を受け入れる【しか】無いのさ。

「まァ、俺みてェな捻くれ者はそいつから抗うんだがよ」

グラスに注がれた酒が、漆黒の空を映し出す。


Episode.1:魔法使いと狼と手紙


事の始まりは数ヵ月前に遡る。
開放された窓から流れる風の音と、古ぼけたラジオから流れるお気に入りのオールディーズに耳を傾けながら、男―――黒牙龍弌狼は真っ昼間からこれまたお気に入りのスコッチを呷っていた。
雲一つ無い空と、遮る物の無い景色、変わらぬ日常、黒牙龍弌狼にとってそれこそが最高の酒の肴だった。

しかし、変わらぬ日常は唐突に終わりを告げる。

『〜〜〜♪ ――ザカッ…ザーーーーー………』

「…………?」

突如ノイズしか発しなくなったラジオを乱暴に掴む。
そいつのアンテナを伸ばしたり、チャンネルを弄くり回すがラジオからは砂嵐が吹き荒れるだけだ。

(長ェ事使ってたし、いよいよ寿命がやって来やがったか……)

溜め息混じりにラジオを消そうと電源へ指を伸ばしたまさにその時―――

『ザーーーーー…………ヨハ……』

ノイズだらけのラジオは息を吹き返した。が、何かおかしい。
黒牙はラジオを元々の場所へ戻し、ボリュームを上げた。

『この世は…汚れに ち……る』

「あンだってェ?」

雑音で聞こえ難いラジオに痺れを切らし、スピーカーへ耳を近付ける。

『【リリベル・クラウンロック】…の 葉通り、我々……は……世界を壊 !!』

「!?」

謎の声は【リリベル・クラウンロック】と、確かにそう言った。
黒牙は暫く動かなかった。いや、動けなかった。

『…………… 〜〜〜〜〜〜〜♪』

「うわッ!!」

その為、大音量で再び流れ出したオールディーズを鼓膜で受け止める事となり、椅子からも転げ落ちる始末となる。

「ッたく! いきなり何なんだ今日は……?」

見間違いならそれは良かったのだろう。
だが、それは見間違いでは無かった。

青天を一瞬にして暗黒が支配する。

―――闇が世界を覆ったと彼が知るのは、間も無く。

    フロム・ダスク・ティル・ドーン
後に【夕闇から明けない夜明け】と呼ばれる事になった一日である。
――――――――――――――――

人々は明けない夜に、深い悲しみを背負っているだろう。
それでも街にはネオンが灯り、酒場の喧騒は絶える事を知らず(一日中夜なので以前よりも遥かに五月蝿い)、裏通りには美しい華と鋭い棘が獲物を今か今かと待ち望む。

「人間の順応力には呆れるわね」

ブランデーの入ったグラスを傾け、長い緑髪の女(一般的には美人に該当する)は言葉通り、呆れながら呟いた。
その女の前には、黒い帽子を目深に被った黒牙龍弌狼が深々と座っている。騒がしい酒場の中、二人が座るこのテーブルのみが静寂であった。

「で、話ッてのは?」
「この世界に関する世間話ってトコロかしら。……あーに眉間にシワ寄せてんのぉ、割と大事な話なんだから聞いておいて損は無いわよ」

果たして本当に大事な話かも疑わしい。黒牙にしてみればこの女―レインヴァイル・ミリア・アリア―は超弩級のトラブルメーカーであり、これまで幾度と無く厄介と厄災の種を持ち込んで来た筋金入りのジャジャ馬である。そんな訳で黒牙が警戒するのも仕方が無い。
しかしミリアはそんな事など気にもせず、羽織っていた黒衣の内側から純白の便箋を取り出して見せた。

「これ、アンタに渡す時が来たみたい」
「あァ、ラブレターなら間に合ってるぜ」
「アンタからすればもっと良いものよ」

差し出されたそれを、黒牙は手に取る。差出人は―――なるほど、どうやらこれは本当に『イイモノ』らしい。

「あのヤロウ…!」

この世界を漆黒へと招く要因、ラジオから流れた渦中の人物、差出人の名は【リリベル・クラウンロック】そのもの。
便箋の封を破り、彼は苛立った様子で手紙を読み始めた。

『―――リュウイチローへ。
 キミがこの手紙を読んでいると言う事は、僕はもうこの世界には居ない訳だね。それは少し寂しくも有るが、仕様の無い理でもある…っと、あまり前置きが長くなってもキミの事だ、スッ飛ばして本題に入ってしまうだろうから僕も手短に話そう。
 手紙を読んでる今頃は世界が闇に覆われている事だろう。その元凶は紛れもなく僕だろうから先に謝っておく、すまない。
 きっとイカれた連中が僕の冗談を読んで禁忌魔法を発動させてしまったのだろう。どうも真面目な人種は僕の冗談を冗談と捉えられないようだ。昔からウマが合わないと思っていたけどね。
 さて、ここでもう一つ謝っておくべき事がある。
 この手紙を読む頃には、カタストロフまでに残された期限は半年も無い。具体的には三ヶ月と少々、かな。彼女に手紙を託した時点でこんな事になるかも、と打ち合わせもしたのだがやはりそうなってしまっているだろう。
 勘の良いキミなら僕が何を言いたいか既に分かっていると思う。そう、キミには世界を救って欲しい。僕が愛し、生きた、あの素敵な世界を守って欲しいんだ。
 これは僕の最後の我侭でもあり、師匠が残した弟子への最後の課題だ。

―――我が愛弟子、僕の愛した銃士へ』

手紙を一通り読み終えた黒牙は、ミリアを見据えて尋ねる。

「残された期限ってのは本当に後三ヶ月なんだな?」
「この魔力からしてそんなトコよ」
「もっと早く渡せば良かったンじゃねェのかい?」
「物語は最初から最後まで最高潮の方が盛り上がるじゃなぁい?」

「話にならん」と喫っていた煙草を灰皿へ押し付け、スコッチの入ったグラスを口へ運ぶ。芳醇な薫りの酒を胃に流し終わると、彼は新たな煙草を取り出して火を点けた。

「久々の仕事が『世界を救え』ってのはなんとも大袈裟な……。まァ良いぜ、丁度ヒマしてた所だしな」
「んー、そうこなくちゃ!」

テーブルの上に金を置き、椅子に掛けた黒のジャケットに袖を通す。
男は静かに酒場を出ると、漆黒の空を見上げて呟いた。

「依頼料は高ェぜ、リリベル……」

何処か懐かしい空色のフィアット500がネオン街を駆けていく。

夜は……未だ明けない……。


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