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とりあえず怖い話。コミュのでびノートν(30話目)

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




7月27日水曜日。




…今日、エロが家にやってくる。

…そして…そしてオレはエロに自首して…全てが終わる。





…時刻は九時半になった。

エロはまだ来ない…。



 窓を開けて、外の様子を伺う。


ミーンミンミンミン…。

外からは大きなセミの声が聞えてくる。



 …ヒラヒラ…。


と、その時何かが空から降ってきたのでキャッチした。


「…ん?何だこれは」

見てみると、それは鳥の羽のようだった。

キレイな青色をしている。



 窓から顔を出し、外を覗き込む。


外には青い鳥が一羽、大空を優雅に舞っている姿があった。


「…何て鳥だろう…キレイな鳥だなぁ」


オレはしばらく鳥を眺めた後、窓を閉め、鳥の羽を机の脇に置いた。







 それからさらに、エロが家に来るのを待った。


…でも…エロは、結局家には来なかった。




 12時頃、筒井から電話があった。


そして聞かされた。





 …昨日の夕方…エロが死んだと。




それを聞いたオレは、ショックで受話器を落としてしばらく動けなかった。

…オレにとって、エロは本当の意味で、人生で初めての親友だったのかもしれない。

…オレは本気で泣いた。



 筒井の話だと、

エロは昨日、バレーボールの試合が終わってから警視庁本部に行ったらしい。

…そこで…事件はおこった。

 日頃から、警察に憾みを持っていたDQNが、警視庁に殴り込んできたらしい。

…正義感の強いエロは、必死に彼らを止めようとした。



 …だが、それがいけなかったんだろう。

DQNの振り回した鉄パイプが、エロの頭を砕いた。


…即死だったらしい。









 夕方6時。


学生服に着替えたオレは、寺にやってきた。


エロの家の近くの寺で、お通夜を行うと筒井から聞いたからだ。



「あ、馬上君」


オレを見つけた筒井が声をかけてきた。


「先生…先生…」


オレは…もう会えないかもしれないと思っていた先生と会えた事や、

エロを失った事が、頭でいっぱい交差して、涙が出て来た。


「…馬上君。

大丈夫?

…エロ君とは…仲が良かったもんね…」


「…いえ…」


…こんなところで、いつまでもメソメソしているワケにも行かない。

オレは涙を拭いた。



「…馬上君、今日の夕方、あのベンチのところで会うって約束してたのに…こんなところで会うようになるなんて…。

なんか、運命っていたずら好きね」


「…ごめん…先生…。

今…そういう話をする気分じゃないんです…」


「…あ…ごめんなさい」


…筒井に悪気が無いのはわかってる…。

…でも…オレはエロを失った悲しみが大きすぎて、筒井に冷たい態度をとってしまった…。



「…先生ちょっとエロ君のお父さんに挨拶してくるね」


「…はい」


筒井と別れた。


…なんでだろう。


こんな時なのに、


エロが死んで、すごく悲しい時なのに、


…筒井が離れていくのは、すごく寂しい…。


 …いや、違うのかな。


こんな時だから…

 一人が寂しいのかもしれない。

なんだかそんな気がした。






 エロの通夜に来る人の数は、ゆうに1000人を超えているようだ。

前の人の真似をして、焼香を済ます。

そして長い長いお坊さんのお経を聞いた後…オレは瀬内さんを見つけたので声をかけた。


「…あぁ。馬上さん…来てくださったのですね」

「はい。瀬内さん、お久しぶりです…」

「…ホホ。

…まさか、あのエロ坊ちゃんが、あんなつまらない者に殺されて、若い命を落としてしまうなんて…。

…運命とはわからないものですね」

「…本当です…。

…オレみたいな人間が…生き残って、エロみたいに世間に必要とされている人間が死んでしまうなんて…」


「…馬上さん。

坊ちゃんが素晴らしい人間というのはわかりますが、ご自身をそんなふうに言ってはいけませんよ。

もし、エロ坊ちゃんがそんなセリフ聞いたら、【馬上君、君はそんなんだから…ー】って、

また説教されてしまいますよ」


「…そうですね。

…エロに怒られてしまう…。

…あ、そうだ瀬内さん。

…エロ、警視庁本部で殺されたらしいですけど、

警視庁で何かしてたんですか…?」

「え?

さあ。

エロ坊ちゃんは、自分である程度解決させるまで、詳細を人に話さない方ですからねぇ。

…それに、本部にたどり着いたのが四時前で、それから5分もしなうちに殺されてしまいましたから…。

…結局、なんで本部に行ったのかはわからず仕舞いです。

…はて。

馬上さんはなんでそんな事を聞かれるのですかな?」


「…え?い、いや。

バレーの試合が終わってから、比較的すぐに警視庁本部に行ったみたいだから、

何かあったのかなって思っただけです」


「…そうですか。

…一体、何しに行ったんでしょうなぁ。

…行かなければ…エロ坊ちゃんは今でも生きておられたでしょうに…」


瀬内さんは寂しい顔をして天井を見上げた。



 …そうか。

…エロは…まだ、誰にも話していないのか…。

…阿部達の事件の犯人が、オレかもしれないという事を。



 …不思議な気分だった。

今日の朝、オレはエロに全てを話し、罪を償おうと決心していた。

…でも、それはエロの死という形で流れてしまった。


 …全てを清算しようと決めたはずのオレの心が…今はものすごく安心した気持ちに切り替わっている。


…オレは…心の中でエロが死んでよかったと思っているのか?


…だとしたら、最低じゃないかオレは…。


  …でも…。


…これで…また筒井とも会える。

 …父さんにも、心配かけなくて済む。


…普通の、

日常生活を…失わなくて済む。


…そっか。


運命は…オレを、平凡な日常へと誘ってくれているんだな。


きっとそうだ…。


その為の犠牲が…エロ…ってワケか。


…でも…。




  …オレにとってその犠牲は大きすぎるよ…。




 その後、棺の中のエロの顔を見せてもらった。

…エロは静かに目を閉じていて…なんだか死んでいるのがウソじゃないかと思うくらい、キレイな顔をしていた。

『オイ!エロ!』と声をかけたら、今にも『なんだい…静かにしたまえ。僕の睡眠を妨害するのか君は…』とでも言ってきそうな気がした。

…でも、もうエロは死んでいるんだ。

 エロの顔を見ていると、自然にあふれ出てくる涙を止める事が出来なかった。




 筒井は色々と忙しそうだった為、

ほとんど会話もなく、挨拶だけして、オレは家に帰った。


「ただいま…」


いつものように、誰も居ない部屋に挨拶をして中に入る。


…なんだか…疲れた。


 台所に行き。冷蔵庫を空け、昼に作って食べれなかったおかずをレンジで温める。


プチッ。


 オカズをレンジにセットした後、テレビを点ける。


『えー、今日、日本で【アオムモドゴドリ】の姿が見られました。

アオムコドゴドリは、全身がキレイな青色の渡り鳥で、

世界に10羽も生存しておらず、

更に一定の周期でしか日本を通らないため、

今回日本で見れたのは実に62年ぶりとの…―』



「…え、この鳥…朝のあの鳥じゃないか?」


…おそらく、間違いないだろう。

…珍しい鳥だとは思ったが、まさかそこまでレアな鳥だったとは…。



…きっと、あの鳥はオレにエロの死を伝えにきてたのかもしれない…。


そう思った。





 御飯を食べた後、自分の部屋に戻る。


部屋に入ると、机の端の方に置いてあった【青い羽】が目に止まった。


「…これ、超レアな羽だよな。

…大事にしなきゃ」


オレは青い羽を手に取りしばらく眺めた後、

とりあえず机の上に置いてあったガラスのコップにそっと入れた。



 

 ―そしてまた、

       月日は流れた―



  9月1日(木)



 新学期が始まった。

全体集会で、校長はエロの死を皆に報告した。

 夏休み中の出来事という事もあり、まだ知らなかった生徒も多かったらしく、

学校全体がどよめいていた。



 全体集会が終わり、皆、それぞれの教室へと入って行く。


「怖い…こわいよぉ…」


クラスでは、ちらほらと怖がっている女子の姿が伺えた。

…でびノートでオレが数人の生徒を殺してから、もう大分時間が経つ。

当時の【連続殺人事件】の恐怖も薄れてきた矢先に起こった、エロの死。

 二年の時、オレと同じクラスだった生徒の多くは、今何かしらの恐怖を感じている事だろう…。



「は〜い、じゃ、出席をとるぞボーイ&ガール達!」


担任の内場先生が言った。

内場先生のアダ名は【ウッディー】

変なカウボーイ風の帽子を被っている、ちょっと変な先生だ。


 「…渡会」

「はい」


「…OK!

偉いね!今日は全員出席だ!


…あ、エロ君を除いて…だね。

…ごめん」


出席をとり終わったウッディーは、、HRを始める。



「…はい、じゃあ皆、

エロ君の事は、非常に残念だったけど…。

それとは別で、今から重大な発表があります。


…筒井ティーチャー、入ってきて!」


…え?

ウッディーは教室の扉に手をかざしている。



ガラガラガラ…。


教室の戸が開き、筒井が姿を現した。



 ドキン。
胸が高鳴った。


…実は、エロの通夜で会って以来、オレと筒井は顔を合わせていない。

色々と、筒井は忙しかったらしく、

何より、同じ学校の生徒と一緒に居るところを学校関係者に見られると何かとまずい可能性があるので、

たまに筒井が電話をかけてくれて、少し話すだけという、なんともピュアな夏休みを過ごしていたのだ。



…久しぶりに見る筒井…。


キレイだな…。


 筒井はゆっくりと教卓の方へと進み、ウッディーの横に立った。



…そして、ウッディーはチラリと筒井を見た後、オレ達に信じられない事を言った。














「…はい、皆さ〜ん。報告です。


…僕と筒井先生、結婚します!」



(つづく)

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