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とりあえず怖い話。コミュのでびノートν(16話目)

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(でびのν 16話目)



ミーンミンミンミンミン…


  ミーンミンミンミンミンミン…。



「…ふぅ…暑いな…」

全身から自然と汗がふきだす。




ピッ。


ガシャン!



オレは外にある自動販売機でオレンジジュースを買った。




タッタッタッタッタ!



「…あ!マーガリン!ここに居たのか!」


楠木が慌てた感じでやってきた。



「…あぁ、楠木か。


どうした?」


「ど、どうしたじゃねーよマーガリン!


もうすぐ第二試合始まるぞ!」



「え?第二試合って13時からじゃなかったっけ??」



「バカ!11時だよ!!!」


「え?ハハハハ。


そうなんだ。

オレ、1時って読んでたわ。

どーりで試合感覚長げーなって思って…」



「理由はいいから、早く行くぞ!!

マーガリンが居なきゃ、次は絶対オレらが勝てるチームじゃないんだからよ!」


「はいはい。

すぐ行くよ」



カチッ。


プシュッ。




 …ゴクゴクゴク。




オレに声をかけた後、楠木が走って会場に向う後ろ姿を見ながら、オレはオレンジジュースを一気に飲み干した。


7月22日(金)


夏休みに入って、まだ数日しか経って居ない。



まだ数日しか経って居ないが、


もしかしたら、オレ達の中学でのバレーボール人生は、今日で終わってしまうかもしれない。



なぜなら今日参加しているのは、中学生活最後の大会だからだ。



いうなれば、『中学バレー版甲子園】とでも言うべきだろうか。







…ガシャン!



…タッタッタッタッタ…。




オレンジジュースの空き缶をゴミ箱に投げ入れ、オレは試合会場へと向った。













 「コラ!遅いぞ馬上君!!!」



「ハハハ。すいません!」


ペコリペコリと頭を下げ、既に整列している皆に謝る素振りを見せる。



「クックック」

小さく笑う菫村。



「…まったく…君はそんなんだから…」

すこし怖い顔をするエロ。


「ごめんごめん!

さ!皆頑張ろう!」



小林や沢村、楠木。


それに補欠だけどキャプテンの清水谷。


オレは元気いっぱい、皆に声をかけた。





「チッ。コイツ、待たせやがって…」



相手チームの選手の声が聞えてきた。



…ま、でも当然か…。


待たせてしまったオレが悪い。


オレは申し訳なさそうな顔をして、相手チームの人にペコリと頭を下げた。


相手チームの人は目を逸らした。





「それでは、試合を始める!プレイボール!!!」


ウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ…。



審判の掛け声の後に鳴り響くサイレンの音。



オレと敵チームの先発メンバー六人は、それぞれ自分のポジションについた。




…えっと、この試合の相手はたしか…。



…そう、この試合の相手はOL学園付属中学校。



ここらへんの中学では、一番バレーボールの全国大会に近い存在だ。


…つまり、今大会でも優勝候補とされる強豪校だ。






 ベンチの清水谷が出すサインを、オレ達六人が見る。



…清水谷は、部員が7人になって、試合に出なくても良くなってから、力を出し始めた。


試合に出なくて良くなってから力を出し始めるというのもへんな言い方だが、


清水谷は今まで、極度の緊張症の為、自分の力を出せずにいた部分があった。



…でも、試合に出なくて良くなって、その緊張を感じる事がなくなった。



日本史オタクの清水谷は元々、作戦を立てる事にはものすごい潜在能力があったみたいで…。


…彼の洞察力、ポジショニング力等は、


菫村やエロでさえも参考にするくらい、緻密に計算されているらしい。



…ま、オレは実際のところ、バレーの細かい部分は理解できていないから、清水谷のサインはすごく助かる。





「はじめいっ!」


ピッ!



審判のホイッスルが鳴り響き、まずは楠木がサーブを打つ。



「ケケケケ。

いくぜ!OL共!!!」



楠木は、沢村や小林と違い、強豪のOL学園だろうが物怖じしていない。


こういう時、最初にサーブを打つには持って来いの人材かもしれない。


さすが、清水谷采配。


キラーン。



ベンチで清水谷のメガネが光る。





シュッ!!!

バシッ!!!!!!




楠木のサーブが、OL学園のコートへ飛んで行く。




「プクク!しょぼ!」


「しょぼ!」


OL学園コートから、失笑が漏れる。


…やはり、楠木のサーブでは全国レベルのOL相手には通用しないんだろう…。




バシッ!



トスッ!




OL学園メンバーは、そつなくボールを拾い、そしてトスをあげる。



「OK!ナイストス!」



OL学園のエースと言われる、雑誌にもよく載る【川居】が、スパイクを打つ体制に入る。




…そして…。




シュッ!!




  バシッ!



バンッ!!!






「ピーーー!!!

一点!!!」






ワアアアアアアアアァ!!!




観客席から、割れんばかりの歓声が鳴り響く。




「やったな!マーガリン」



「さすがだ。馬上君」



「ハハ。ありがとう」



菫村やエロと、オレはハイタッチを交わす。




OL学園のエース川居は、何が起こったか解っていないような表情だ。




…それもそうか。


あのスパイクは、他の中学生ではブロックできないだろう。



エロの家での、【マリア様】の猛特訓で、


オレは長身を生かして、徹底的にブロックを鍛え上げられた。



そして練習のせいか遺伝子上の問題かはわからないが、

中三にして、身長も190センチを少し超えた。


 たしかに川居のスパイクは他の中学生と比べるとケタ違いの凄さだが、


あの死の特訓を乗り越えてきたオレにとっては、別に返せないレベルでは無い。




「ケケケ!さすが、オレのサーブ!

まずは1てーん!」



楠木の不快な笑い声。


さぞかしOL学園メンバーは不愉快な思いをしている事だろう…。




シュッ!

バシッ!!!



楠木が二本目のサーブを放つ。



「余裕!」



  「楽勝!!!」


またまた、OLメンバーは余裕でボールを拾う。


…そして、また川居がジャンプする!



「今度は決めるぜぇ!!!」



バシィ!!!



バンッ!!!





「ピーーー!!!


二点目!!」



ワアアアアアアアアアアアアアアアァ!!!



「な…なんで…完璧なコースだったはず…」



川居の顔色が真っ青になっているのがわかった。




「やったな馬上君!本日2ブロック目だな」



「…オイオイ、オレの見せ場も作ってくれよマーガリン」



エロや菫村と、またハイタッチをする。


…他のメンバーも含めて…皆の顔に笑みが見え始めてきた。



オレ達は行ける…全国へ。



その手ごたえを、きっと皆が感じているのだろう。





「三本目いくぜー!」


シュッ!

バンッ!!!




楠木の三本目のサーブ。




「ショボッ!!!」


「遅ッ!!!」



OLメンバーは、またもや完璧にトスを上げる。


そしてオレはジャンプする川居の正面へ…。



…しかし、トスは他の選手へと上げられる。



さすがに、オレのブロックを警戒してか、矛先を変えてきたようだ。






バシッ!!!




OL学園の準エース、【蓬野(よもぎの)】がものすごいスパイクを打ち込んできた。






ブロックする沢村の手はカスリもしない。



…ボールはコーナーギリギリに向って飛んでいく…。









  バンッ!!!





と、ボールの着地点にスっと、エロの手が伸びた。





エロはそのまま回転しながらコートの外へと転がっていく。



「ナイスレシーブ!!!エロ!!!」


エロが上げたボールの下に、スっと小林がもぐりこみ、そしてトスを上げた。




タッタッタッタ…。



そこに勢い良く駆け寄り、菫村が思いっきり全身を反らせて…。







 バシィ!!!



   バンッ!!!!







「は…はわわ…」





コロコロ…。



転がるボール。



「ピーーー!


三点目!!!」



ワアアアアアアアアア!






完璧な、菫村のスパイク。


ブロックも、野手も、


OLメンバーは、誰もボールに触れる事さえできなかった。



「ナイススパイク菫村!!!


…そしてエロ!


凄すぎるよレシーブ!!」



「…フン。

あのくらい普通だ!」



背のあまり高くないエロは、リベロとしてありえないボールまで拾う。


これもあの【死の特訓】のたまものだ。



…そして菫村。


コイツは死の特訓は受けていないが、やっぱり凄い。


センスもあるのだろうが、やはり【かならずバレーボールで突き進む】という強い意志が、彼をここまで上達させたのだろう。


エロのレシーブ力と、オレのブロック力には正直劣るが、他は全てに置いてかなりのレベルに達している。





「…マジ、強くない?」


「ここ、ほんとに無名校?」



OLメンバーの声がチョロチョロと聞えてくる。


…そう。オレたちは今日が公式戦初試合。


優勝候補の相手は、当然ノーマークだったに違いない。


…しかし、今さら焦っても遅い。


…この三点は…おそらく取り返しのつかない大きな三点のはずだ。








…その後も、オレとエロと菫村の活躍もあり、



オレ達は着実に点を重ねて行って…。









「ピーー!!

ゲームセット!!」



第一セットを25-15

第二セットを25-22

第三セットを30-28(ジュース)



で、


オレ達はストレートでOL学園を破ったのだ。


…さすがに、試合巧者の監督が居るだけあって、

セットを重ねるごとに弱点を巧みについてこられ、

三セット目を逃すと正直危なかったが、

何とか気合で勝ちきれた。



「うう…オレらの夏が…」

 「今までの苦労は何だったんだ…」


OL学園のメンバーは、皆ガックリと肩を落として泣いていた。


…それもそうだろう。



彼らはこの三年間、

バレーボールで全国優勝する事だけを考えて一生懸命練習してきたのだ。


…それが、こんな無名な学校に破れるとは、夢にも思っていなかっただろう…。




泣きながら、思い出に、会場の床板を剥がしてバレーシューズを入れる袋に入れるOL学園メンバー。


…彼らの夏は…今、終わりを告げたのだ…。




(つづく)

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