ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

次郎の携帯小説コミュのオラこんな異世界嫌だァ!!

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
男は走っていた。

鬱蒼と生い茂る身の丈よりも遥かに大きな草をかき分けて、男は森の中を必死に走っていた。何かに追われているように。

なぜ俺はこんな必死に走ってる?

男は思った。

記憶を手繰れば、ついさっきまで自室で寛いでいたはずなのに…それがなぜこんなジャングルみたいな森の中を走っているんだ?

ギャー……

誰かの叫び声が聞こえた気がした。
その声はまるで、カエルを踏み潰した時のような、ちょっと人間らしからぬ声に聞こえたが、何故かそれが自分の仲間の声だと、男には認識できた。
そして、その叫び声の主に何が起きたのかも。

こっちだ!!

すばしっこい奴め!!

妙にくぐもった感じに響く声が、背後から追って来る。
変なエコーがかかっているというか、朦朧とした意識の中で聞くような、言葉としては聞こえるけど、意味を十分理解出来ていないような、そんな変な感覚を男は覚えた。

「あうっ!」

木の根のようなものに足を取られ、男は派手に転んだ。

捕まってしまう!!

(誰に?)

必死に逃げる自分の思考と、妙に冷静な自分の思考とが奇妙な掛け合いをするが、男はそのことよりも、今転んで地面に着いた両の手の様子に目を奪われる。

枯れ枝のように細く、周りの草木に紛れられるようなくすんだ緑色の両手。

妙に節くれだっており、爪は悪魔か魔女のように鋭く尖っている。

グゲァ……!!

また仲間がやられたようだ。

男はその頼りないほどの細腕を踏ん張って必死に体を起こそうとするが、どういうわけか身体が鉛のように重く感じ、なかなか起き上がれない。
起き上がれたと思うとまた倒れて、前に進もうにも足がうまく動かない。

そうこうしているうちに、茂みを掻き分け追っ手が追いついて来た。

「ゴブリンの癖にずいぶんすばしっこい奴め。だがもう終わりだ」

そこには中世世界をモチーフにしたような、兵士と言うよりは簡素な、しかし野盗と言うには立派とも思える武装した“人間”がいた。

男は成すすべなく、武装した人間の振りかざした剣を、脳天から食らった。

そして……



ピッピピ、ピッピピ、ピッピピ

「うわぁああ!!!!」

タカシは、ベッドの上で跳ねるように飛び起きた。

寝癖でボサボサの頭に触れ、その掌を見つめる。

「………血ィ、出てねぇ?」

抜け毛が一本絡みついた掌を見つめ、ぼそりと呟いた。



「そんでよう、そっから確変来て30連チャンの大当たりよ!!」

淡い薄緑色の作業服を着た、痩せた年配の男が休日の武勇伝を語ると、

「マジっすか!!じゃあ今日は山サンの奢りっすね!!」

すかさずらデザインの違う濃紺色の作業服を着た、中年に差し掛かった頃合いの男が、お決まりの返しをする。

「バァーカ野郎!!そんなもん全部母ちゃんに取られちまったわ」

「は?山サン、パチンコの金嫁さんに渡してんスか!?」

「しゃあねーわ、負けた時の分の借りがまだ篦棒にあるからよゥ」

ここは都内から少し離れたところのとある工場…といっても従業員数数千人規模の大きな工場だが…
毎日毎日機械相手に単純作業の彼らにはこれといった娯楽はない。
若者であればスマホやパソコンでYouTubeやゲームもあるが、年配者にはテレビかパチンコぐらいしか休日の過ごし方がない者も多い。

仕事の話は愚痴が7割。残りは2割が「俺だったらこうするけどなァ」という出来もしない理想論と、1割がパートの女の品評会。
毎日毎日変わらぬ話題に飽きもせず、男たちは過ごしている。

ジリリリリリリリリ

巨きな工場に、始業を知らせるベルの音が鳴り響くと、作業服の従業員達は持ち場へ散って行く。
淡い薄緑色の作業服を着た者たちは製造ラインへ、濃紺の作業服の者たちはそのラインの周囲へ立つ。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

次郎の携帯小説 更新情報

次郎の携帯小説のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング