ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

小津安二郎コミュの宗方姉妹

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1950年といいますから、昭和25年の映画ですね。

戦争の焼け野原から、お隣の国の戦争特需(朝鮮特需)で、日本経済が息を吹き返してきた頃のお話。

監督は、いわずと知れた小津安二郎。

主演の姉妹には、田中絹代と高峰秀子。田中の夫に山村聡。姉妹の父に、小津監督作品の顔・笠智衆。そして、上原謙という顔ぶれ。

まず、映画でこれをいうのは、ちとヤボかもしれませんが、この役者たちの映画製作当時の実年齢がこんな具合。

田中絹代 41歳
高峰秀子 26歳
笠智衆  46歳
山村聡  40歳
上原謙  41歳

小津安二郎 47歳

まず、姉妹の年齢差の17歳。
今の感覚で行けば、ちと無理があるかもしれませんが、実際、長男であった我が父と、末っ子のオジサンの年齢さも14歳ほどありましたから、この当時ならばギリギリありでしょうか。

驚くのは、親子を演じた、笠智衆と田中絹代の年齢差が5歳。
確かに、田中絹代も、若々しくはありますが、やはりここは、笠智衆の「老け」の芝居を賞賛するべきでしょう。
笠智衆は、帝釈天の御前さま(寅さん映画)で、人生を終えるまで、役者人生の大半を「老け役」で過ごした人。
日本のおじいちゃんの「顔」とでもいうべき俳優で、佇まいそのものが「いやし系」。とにかく好きだなあ。この人。

さて、田中絹代。

「煙突の見える場所」では、庶民のオバチャンぶりに目を見張りましたが、その3年前になるこの映画では、しっとりと落ち着いた演技で、別人のような美人女優ぶり。(全盛期はもっともっと美人)
派手なサングラスで帰国の際、羽田空港のタラップを降りながら、ハリウッドばりの「投げキッス」をやらかして、マスコミにたたかれ、顰蹙を買った直後の映画で、そのせいかどうか、この映画では、小津監督には、だいぶしごかれたようです。
この映画で、彼女が演じるのが、日本の「古い」タイプの女性でしたから、なおさらでしょう。

反対に、「新しい」タイプの女性を演じたのが高峰秀子。

小津監督作品は、子役の頃に「東京の合唱」に出演はしていますが、本格的に女優となってからは、この作品が初めての出演。
小津・高峰コンビの作品て、印象としては、ほかにもまだまだある気がしていましたが、実際は、意外にこの二本しかないんですね。

しかし、その理由は、この映画を見るとなんとなくわかるような気がします。

小津監督といえば、ローアングル撮影に代表される、その厳格なまでの様式と独特の映画文法で、ゆるぎない「小津ワールド」を構築した人。
この人の映画では、演じる俳優はたちは、その様式の中から、「はみ出る」ことはご法度。

しかしながら、この映画での高峰秀子の演技は、完全に、この小津ワールドから、はみ出しているんですね。

もっとも、天下の小津監督の映画に、彼女が、確信犯として反旗を翻すということはちょっと考えにくいですから、おそらくは、その演技をさせた(あるいは狙った)のは、小津監督自身だと思われます。

ある意味、自分の作品に対する「実験」だったかもしれません。

小津監督は、田中絹代には、きっちりと小津文法に沿った「静」の演技を要求(それゆえ、厳しい演出になった)し、高峰秀子には、あえて、自分の文法からは「はみ出した」、自由な演技を認め、その演技の違いで、この映画のテーマである、日本女性の「新旧」の差異を表現しようとした。そして同時に、自分の作品に、新しいテイストを加えてみようとした。

まあ、そんな気がするわけです。

とにかく、この映画での、高峰秀子のアドリブチックな「動」の演技は、とてもチャーミングで魅力的です。

口をへの字に曲げて、活弁士調に、姉の恋愛模様を茶化すシーン。

上原謙に、いきなりプロポーズするシーン。

「ほら出すぞ。」
「いまに出すぞ」
「今日は出ないかな」
「いや、出すぞ」
「ほら出た」

笠智衆のおとうさんにからかわれて、ペロリと出す舌。

上野の西郷さんの銅像をみながら、

「あっ、ハトがウンコした!」

(映画の中で、ウンコというセリフを聞いたことがなかったので、ちょっとビックリ)

などなど。

彼女のこの演技で、この映画は、小津作品としては、ちょいと異彩を放つ、色合いの違った作品になった感があります。

そういえば、高峰秀子のシーンではありませんでしたが、この映画には、通常の小津映画では、ちょっと考えられない衝撃のバイオレンスシーンもありました。

山村聡の、田中絹代に対するビンタ6連発。

彼以外の映画なら、なんということはないシーンですが、小津映画の中で、これが出てきますと、さすがにインパクトがあります。

というわけで、小津作品の中における、この「宗方姉妹」の位置づけは、どうなるか。

小津監督のこの映画での「狙い」は、、高峰秀子のキャスティングとその好演により、一応の成果は収めた。
しかし、監督は。この路線の継続は避け、以降は、再び、「小津ワールド」の完成と成熟路線に戻った。
ゆえに、高峰秀子の小津作品出演は、この映画のみ、

まあ、そんな感じでしょうか。

正直申せば、高峰秀子ファンの僕としては、他にもまだまだ、彼女の出演する小津映画というのは見てみたかったですね。

小津監督は、カラーに移行した晩年の作品の中で、同じような役回りを、岩下志麻に演じさせています。
しかし、作品の良し悪しは別として、彼女の演技は、小津監督の映画から、けっして「はみ出す」ということはありませんでした。

やはり、高峰秀子の、女優としての魅力は光ります。

いずれにしても、「はみ出す」「はみ出さない」を含めて、このあたりは、小津監督の計算といえましょうから、最終的な答えは、観る側の好みとご贔屓ということになります。

では、僕の答え。

僕としては、今は、高峰秀子に恋している状態ですので、「秋刀魚の味」より「宗方姉妹」ですね。

この映画での、田中絹代のセリフです。

「新しいというのは、古くならないということよ。」

コメント(14)

卒論で小津作品に触れたのですが、
この映画でのビンタシーンは
気持ち悪いくらい気分が悪くなりました。

不快なシーンでしたが唖然としていたのを覚えています。

小津監督が抱いていた理想の女性は
当たり前かもしれないけど
この姉妹両方の要素をかけもつヒトなんだと思います。

結局はこのフェミニズム論が行き交う時代で女性のあるべき姿が垣間見れる映画だったような気がします!

全体的にハイソな家族の映画ばかりだったから当時の女性はしっくりこないヒトも多かったと思いますが。

今の時代でもツウズル。

まさにあの台詞と同じですね☆
乙女座

宗方姉妹 はまだ未観です
このトビみて凄く気になりました

ゆるりさん
私も秋日和の岡田茉莉子さんすご〜く好きです
高峰秀子は小津監督の作品にはこれしか出ていないと思ってましたが、子役時代に出ていたのかぁ。

僕もこの映画で高峰秀子の虜になりましたよ。
成瀬巳喜男監督では、本当に色々な顔を見せてくれ、宗方姉妹の妹の役は彼女のほんの一面なんだと驚いたものです。

この時期、田中絹代は女優としてかなり行き詰まっていた時期で、マスコミのバッシングを受けたりして相当苦しんでいたようです。
高峰秀子は子役時代に、大スター田中絹代に妹のように可愛がられていたとか、この映画の舞台裏はなかなかに興味深いです。
「麦秋」に出ているのは、原節子と淡島千景ですね。
残念ながら、この映画には高峰秀子は出演していません。

ところで、この「麦秋」の英語タイトルというのが、「EARY SUMMER」なんですね。直訳すれば、「初夏」。どうしてでしょうか。

この映画、見てはいるはずなのですが、記憶が定かでありません。

「麦秋」には他に、杉村春子も出演ていますね。

最近になって、高峰秀子の「私の渡世日記」というのを読んだのですが、この本の中で、彼女はこの杉村春子を絶賛しておりました。

高峰は、「小島の春」という映画で、杉村と競演しているのですが、彼女は、この映画で、ライ病患者を演じた杉村春子の「背中」の演技に衝撃を受け、それまで「仕方なしにやってた」役者稼業に以後本気で取り組むようになったと書いていました。
麦秋で「うんこ」というセリフが出てきた、ということを書きたかったのですが、ちょいと恥じらい?もあり、絵文字にしたら、文字化けしちゃったみたいですみませんm(_ _)m
宗方姉妹はグラスワイングラスをパリンパリン割るシーンが印象的でした。「お茶漬の味」と混同してたらすみません
麦秋=初夏?は、DVDに英語でそう書いてあったので私も凄く気になりました。もしかして麦が実る時期って意味かな?
>「女が階段を上がる時」

ぼくも大好きです。(⌒^⌒)b

「乱れる」も素晴らしい。ラストシーンはまぶたに焼き付いています。

高峰秀子は小津監督にも可愛がられたようです。
会社が違ったからあまり起用できなかったのかも知れませんが、小津作品にもっと出ていたらな、とふと思います。

高峰秀子については、昨年ものすごくハマっていて、自伝まで読みました。
感想を載せておきますので、よろしかったら読んでください。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=199927909&owner_id=718363

トピの主旨とは外れてしまい、申し訳ありません。。。
「私の渡世日記」は、確かに面白かったですね。

日本映画界のあの人この人、日本を代表するそうそうたる文化人の面々が、実名で登場し、高峰秀子というフィルターを通して、その素顔が魅力的に展開されて、飽きさせません。

背伸びもせず、構えもしない。実に自然体で、さわやかな文体に引き込まれてしまいました。

ちょっと間違えれば、かなりドロドロの愛憎劇にもなってしまうような義母との葛藤も、真正面から取り上げつつ、どこかで俯瞰している彼女のクールさが絶妙でしたね。

やはり、日本を代表する大女優。タダモノではありません。

このエッセイで彼女に語られた小津監督。

「芸術という言葉を嫌い、親分と呼ばれることを好んだ彼に、私は『キッチリ山の松五郎親分』というニックネームを進呈した。」



「私の渡世日記」は、小津ファンでなくでも往年の映画ファン全てに読んで頂きたい本ですね。

>『キッチリ山の松五郎親分』

僕もここで笑いました。まったく、小津をこんな風に評せるのも高峰秀子ならではです。
昨年ですが観てきました映画館


《高峰秀子没後10年 {デコちゃんの映画渡世 子役から少女スターそして女優へ}》

「宗方姉妹(むねかたきょうだい)」1950年/新東宝/白黒/112分
監督:小津安二郎 原作:大佛次郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 撮影:小原譲治 音楽:斎藤一郎
出演:田中絹代、高峰秀子、山村聰、上原謙、高杉早苗、笠智衆、堀雄二、千石規子

僕の自宅から電車で数分、歩いたら30分くらいかな🤔薬師寺でロケされているんです映画
劇中で薬師寺から「唐招提寺を抜けて帰ろう」という台詞があるんですが薬師寺のすぐ近くに唐招提寺もありますからそれはわかるにしても駅とは逆方向なんですよね。ただここまで来たのだから遠回りだけど唐招提寺も観光して帰ろうという意図ならそれはそれでわかります電球そっち側で車拾って西大寺に出る手もあるタクシーダッシュ(走り出す様)
この作品小津安二郎監督がいつもの松竹ではなくて新東宝で撮った作品なんです🎞
主演の田中絹代さんが"投げキッス事件"で世間からバッシングされていた時代。逆にかなり古風な女性として描かれ、現場ではかなり小津さんにしごかれたとかその対比として妹役のデコちゃんには舌をペロッと出す癖のある現代っ子として描かれますうまい!カチンコ
舌を出すタイミングなども小津監督がストップウォッチ片手に指導したそうです腕時計
仕事もしない甲斐性なしの夫と元恋人の間で揺れる女性を田中絹代さんが演じる訳ですが今観るとかなりストイックにも見える。でもそりゃそうなるわなとも感じる。逆に最近のラブストーリーなどはこのようなシチュエーションでも平気だったりするんで物語上に起きるあんなことやこんなことが心の陰影にならないことに驚愕するげっそり最近のラブストーリーの主人公に起きる出来事はただの記号のようだ🤔
演技を記号化しようと試みた小津監督のほうが人の心には寄り添っていたのだというこの逆転現象電球電球

※ちなみにこの作品で山村聰さんが第1回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞して、合わせて毎日映画コンクールで助演賞を受賞していますトロフィートロフィー主演男優賞と助演賞、
山村さんよかったけどこの映画の主演ではないと思うのだが🤔

京都文化博物館フィルムシアター

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

小津安二郎 更新情報

小津安二郎のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。