ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

草太郎クラブコミュの草太郎 第7章

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
アランは部屋で混乱していた。
お爺さんが無くなって
心細く感じている自分の心

それをスミエは恋だという。
アランは恋をしたことが無いから
この気持ちが恋なのかよくわからない。
ただ環境が変わっていくのがひたすら怖い。
お爺さんがいてお婆さんがいて、
愛くるしく我侭な草太郎がいて自分がいた。
ただ言われた仕事をして、
頼りにされて幸せだったのに。
平和で何も考えなくって良かった時が
去ろうとしている。
コンコンとドアを叩く音がした。
静寂を破る音。

アランはおどろいて蝋燭を倒した。
「アチっ アチ」
火がついたままの蝋燭を慌てて、
素手で叩き消す。
皮膚が焦げる臭いが仄かに鼻腔をくすぐった。

暗闇の中でスミエの声が聞こえた。
「皆いなくなったのに、
私たちの関係だけ変わらずにいることは無理なのよ」
アランは息を潜めた。
「世の中の人は、あの時は良かったと都合のいい時代にだけ
思いを馳せて生きようとする人が多いわ。
それって幸せな生き方かしら?
これからの可能性に賭けることが
なぜできないのかしら」
「お婆サン」
「私はアランのお婆さんではないわ。
そう呼ぶのは今夜まで許すことにするわ」
スミエは神の宣託のように告げた。
「あなたも私と共にこの外堀家に生きるか
外の世界で生きるか決めなさい 」
アランは選択を迫られていた。


一方、草太郎は川で洗濯をしていた。
生まれてはじめての洗濯。
和尚も居なくなり、山には草太郎一人きり。
一万円も和尚とともにミレコの胃袋に消えたので今後はクレジットカードで
過ごさねばなるまい。
「山でクレジットカードは使えねぇ」
「キッキ」
「ホヒホヒ」
秀吉とミレコは川での水遊びにご機嫌である。
今まで身の回りの世話は全部家の者に任せていた草太郎。
一人での旅は不便を極めたが可愛いペットたちが心を慰めてくれた。
「野宿を重ねて強い男になって、
外堀家の財産を食いつぶしてやる」
果たしてバックパッカーだけしていて
強い男になれるかは疑問だが
全てがはじめての体験で草太郎には新鮮だった。
川で遊んでいると川上で釣りをしている釣り人がいた。
こんな山奥になぜ一人で渓流釣りをしているのか。
草太郎は近づいて声をかけた。
「おい、何を釣っているんだ」
釣り人は陰気な冴えない顔をしており、
一瞬草太郎は声をかけなければ良かったと思った。
「このあたりの岩魚は普通の岩魚の数倍大きいんだ」
帽子で釣り人の顔は影になっており、ボソボソと話す姿はまるで妖怪の様である。
「釣れたのか?」
「岩魚は釣れない」
「他の魚は?」
「人間が釣れたことはあったよ。すごいのが」
釣り人は自分の言葉に興奮したのか、
鼻の穴を膨らませた。
(変態っぽいなー)
草太郎は思った。
今まで変態に関しては、
お爺さんから聞いた話や書斎の本でしかその生態を
知ることは無かったが、目の前の男は紛れもない変態であろう。
熱っぽく川の底を見つめている。
「この川には大きな岩魚が釣り人を川底の中へ沈めて、
養分にしているという伝説があるんだ。
ここの岩魚の姿はだからか紅く異様に美しい」
「他になにか伝説を知っているか?」
釣り人は眉をしかめた。
「僕は鬼を探しているんだ。
鬼の伝説を知っていたら教えてくれないか」
「俺は魚と死体が性的に好きだ!
けれど鬼の話は知らない」
心なしか胸を張って釣り人は言った。
威張って言うことだろうかと
問いただしたいが、怖いので辞めておく。
「だが姨捨山を南へ降りていくと、無人島がある。
そこに得体の知れない者どもが
住み着いたという話は聞いた事がある。
鬼と無関係じゃあ、ないだろう。
そこへ行くべきだ!」
釣り人は決め付けたような発言を好むようだ。
「フフッ・・・。お前はそこへいくか
魚の餌に餌になるかどっちか選ぶといい」
釣り人がブツブツ不気味なことを嬉しそうに言うので、
草太郎は足早にこの場を立ち去ることにした。
なんとも感じの悪い男だ。
ミレコも釣り人に関して、食べたいと感じないようであった。
ヒトなのか妖怪なのかわからぬ男だ。

こうして草太郎一行は姨捨山を南下することにしたのであった

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

草太郎クラブ 更新情報

草太郎クラブのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング