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プロジェクトI@MAYOコミュの八神例大祭 後編

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「八神例大祭 後編」


例大祭当日の日。昨夜、作業の効率を考えて早雪の家に泊まった麻宵達は朝早くから最終確認や準備をしていた。夕方になり境内のあらゆるところに設置した提灯に明かりをつけ例大祭は幕を開けたのだった。

「最後に隠し味の生姜を入れて・・・かんせーい!それでは、いただきまーす!!」

なぜか、顔にペンでいろいろ描いてあり、巫女姿で、胸には「マヨえもん」と書かれたバッジ、腰に前掛けをかけ奇妙な姿の麻宵が、屋台で焼きそばをつくり、自分で食べようとしていた。それを発見したあやねは、麻宵が口に入れた瞬間に麻宵にチョップを叩きこんだ。

「イタッ!?・・・今の衝撃でへりゃ噛んじゃったよ〜あやねちゃ〜ん」

涙目になりながら麻宵があやねに訴えた。

「開始早々で、店員である麻宵が商品食べてどうするのよ」

あやねは、麻宵から焼きそばを取り上げて言った。

「あぅ!?やきそば〜。だって、お腹空いちゃって〜」

「はい?今さっき、みんなでご飯食べたばかりでしょ。しかも、あなた3杯もおかわりしていたじゃない」

「エへへ〜。そうなんだけど、焼きそばを焼いていたら、凄く美味しそうだったから、つい食べちゃった!」

そう言われて、あやねが、麻宵から取り上げたやきそばを見てみると、確かに見た目も香りも美味しそうであった。なので、さきほどみんなでご飯を食べた時に、いろいろ考えていてあまり食べなかったあやねのお腹を鳴らすには充分だった。

ぐぅ〜。

「・・・あ。」

あやねはその場に固まった。

「い、今のは!違うんだからね!!」

そう言って、必死に弁解するあやねに麻宵は笑顔で言った。

「あやねちゃん。それ食べなよ」

「えっ!?だからこれは商品だから私達が食べちゃダメっていっているでしょ」

「うーん・・・。あ!それじゃ、こうすればいいんだ!」

何かを思いついた麻宵は、小さなマイバックから財布を取り出して、焼きそば分の代金を店の収入箱へと入れた。

「これで、そのやきそばは私が買いました!だからそのやきそばは、私からあやねちゃんへプレゼントだよ!さぁ、食べて食べて!!」

「麻宵・・・あなた」

「うん?どうしたの??」

「ううんなんでないわ。ありがとう麻宵。いただくわ」

あやねは焼きそば口に入れた。その味は、いままで食べたどの味より美味しく、幸せになれる味だった。

「どう?美味しい??」

「えぇ。料理上手の麻宵が作ったんだからあたりまえじゃない」

「わーい!そう言ってもらえると凄ーく嬉しいよ!あやねちゃーん!!」

そう言って麻宵は、勢いよくあやねに飛びついた。

「ちょ!?麻宵??こぼれちゃうから、抱きついてこないでよ!」

そんな二人のやりとりを神社の境内の入り口付近で眺めている二人の姿があった。一人は、これまたなぜか、顔にいろいろ描いてあって胸に「カリえもん」と書いてある体だけネコの着ぐるみ姿という奇妙な花梨と、もう一人は巫女姿の藍理であった。

「いや〜二人とも微笑ましいねー」

「そうですね。麻宵が作った焼きそばは、私も食べてみたいですね」

「うーん・・・?注目点がちょっと違う気もするけど、確かに食べてみたいね。それよりお客さんあんまりこないね」

「前から、例大祭を知っている常連のお客来ているようですが、時間がなかったため、宣伝活動ができませんでしたからね。あまり人は望めないかもしれません」

すると突然、二人の後ろにある神社の階段から大きな声で女の子の声がした。

「ふっ、ふっ、ふぅ〜!それは心配ないよ!お二人さん!!」

「どうしてですか茅穂?」

藍理がそう答えると、階段で仁王立ちしていた茅穂はよろけた。

「ちょっと藍理!そこは二人で『だ、だれだ!』と言ってよ!せっかくのあたいの登場が台無しじゃんか。なので、もう一回ね!!」

(ベタだし、めんどくさいなー)

そう花梨は心の中で呟いた。藍理は目をパチクリした後に

「よくわかりませんが、とりあえずそのセリフを言えばいいのですね」

と茅穂に言った。

「そうそう!それじゃいっくよー!・・・ふっ、ふっ、ふぅ〜!それは心配ないよ!お二人さん!!」

『だ、だれだ』

二人は棒読みで同時に言った。

「あたいを誰だか知らないのかい?日本一を決める小学生アイドル世界選手権で、体、美、知、どの分野でも1位だった。藤枝茅穂様だよ!」

「なんか言っているよあの子・・・。どの分野でも下から1位の間違いじゃないの?」

「にゃんだと!!」

「そもそも、世界選手権なら決めるのは世界一です」

「はぅ!しまったーーー。間違えたーーーー!!

茅穂は頭を掻き毟りながら叫び声を上げた。

(はぁ・・・。あいかわらず茅穂は、お馬鹿ね)

「それで、人が来ない心配をしなくていいというのは、どうしてなのですか茅穂?」

そう藍理が聞くと、なにか気づいたように急に茅穂は冷静になった。

「そうだった、そうだった。ふっ、ふっ、ふぅ〜!それは心配ないよ!」

「それは、もういいから」

「ブー!わかったわよ。なんと昨日、友達の裕に頼まれて。あたい頑張って小学校のほとんどの生徒に、今日この祭りに来るように伝えたのさ!!」

「えっ?本当に??」

「本当だよ!これが証拠ー。みんな〜!もういいよ突撃ーーー!!」

茅穂が、そう叫ぶと神社の階段下からたくさんの子供達が全速力で階段を登ってきた。

「うわ!?凄い数!!」

「これはお手柄ですね茅穂」

「へへーん!まぁ、あたいが本気出せば、こんなの余裕だよ!!・・・それにしても、あたい今気づいたけど、花梨!なんて顔しているのよ!アハハ変なの〜!!」

「うっ・・・。気にしているんだから言わないでよ!」

「おーい!みんなー!ここに変なのがいるよーー!!

茅穂が、連れてきた仲間に手招きをしながら叫んだ。

「ちょっと!呼ばなくていいわよ!!って・・・きゃー!!」

花梨は一瞬で子供たちに囲まれて、注目も的になった。

「ひぇーん!藍理〜助けてー!」

「これもお仕事です花梨。頑張ってください」

「そんなぁ〜・・・。」

その後、花梨は30分間子供たちに揉みくちゃにされたのだった。

所かわって、八神神社の祭具殿の中では早雪が、これから行われる祭儀の準備をしていた。
八神神社で行われる祭儀というのは、弓を使ったものである。そもそも、八神神社は名前の通り八つの神を祀っている神社である。その昔、この地に天、地、雷、風、水、火、山、沢の八つの生き神が存在して暴れ回っていた。その神たちを、一人の巫女が弓で鎮め祀ったのが八神神社のはじまりという。なので、祭儀に弓を使うのである。

「ふぅ・・・やはりオーデション前と、この時が一番緊張しますね」

早雪は、手の汗を握り締めながら呟いた。

「よう早雪。今年もいよいよやってきたね」

やってきたのは、早雪の従姉である時依であった。

「あ、時依さん。はい、毎年緊張してしまいます。今年もやはり失敗すると思うと・・・。」

「早雪・・・。やる前からそんな事でどうするんだい?あんたは、唯一アレが出来るんだからそれだけで凄いってもんだよ。あたしなんて普通でも、たまに失敗するんだからねー」

時依は笑いながら早雪に言った。だが、早雪は微かに微笑むだけだった。

「今年こそは成功するさ。自分を信じな」

そう言って時依は早雪の頭をポンと叩いて部屋から出て行った。
入れ替わりに、早雪と茅穂の友達である小学生の裕が入ってきた。

「早雪おねーちゃん!」

「あらあら、裕くん。ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ」

「ごめんなさい。茅穂が、元気のない早雪お姉ちゃんを励ましてこいって」

「茅穂さんが・・・。そういえば、その茅穂さんがさきほど、言っていたのですが。例大祭の為に、学校のみんなに宣伝するように茅穂さん頼んでくださったそうですね。ありがとうございます!」

「お礼なんていいよ!せっかくのお祭りが寂しいのは嫌だし、それに、俺は早雪お姉ちゃんの事が大好きだしね!」

「裕くん・・・。フフフ。私も裕くんの事が大好きですよ♪」

「えぇ!?・・・あっ!?」

裕は、自分の口走ったセリフを思い出して、顔が真っ赤になった。

「えっと・・・。あ!この大きな弓、早雪お姉ちゃんが使うの?」

「そうですよ。この弓は、八神の大弓といいまして、先祖代々伝わる弓なんです。この弓を使って、矢を的に当てるのですが、毎年私は失敗をしていまして・・・」

「早雪お姉ちゃんで、失敗するなら誰でも無理なんじゃないの?」

「いえ、弓を普通に撃つのは、どなたにでも練習をすればできるのですが、私がやるのは少しといいますか、かなり特殊でして何回練習しても失敗してしまうんです」

そう説明する早雪の表情は暗かった。

「早雪お姉ちゃん・・・。あ、それなら!やり方を変えてみればいいんじゃないの?」

「やり方を変える?」

「うん。俺、勉強苦手で全然点数取れなかったんだけど、友達から勉強のやり方を聞いて変えてみたら、点数取れるようになったんだ。だから早雪お姉ちゃんも、やり方を変えてみたら?」

「やり方を変える・・・。何か掴めたような気がします!何から何まで本当にありがとうございます裕くん」

「エへへ。お役に立てて俺も嬉しいよ」

その時、外の方から『これより、八神例大祭祭儀を始めます。お客様方はぜひ社の前の祭儀会場にお集まりください』という放送が聞こえた。

「あ、そろそろ始まるね!それじゃ客席で応援しているからね!早雪お姉ちゃんがんばって!!」

「はい。頑張りますね」

裕が出て行ってすぐに、早雪の祖母である霜が迎えにきた。

「さぁ出番じゃ、早雪。準備はいいかのう?」
「はい。準備万端ですお婆様」

そう答える早雪の顔はやる気に満ちていた。
祭儀会場の客席では、仕事を社長が用意した謎の便利な男達に任せた麻宵達が始まるのを待っていた。客席の前には段差のある厚い木の板が横に並べられていて、その数十メートル先に八つ的が立っていた。

「ねぇねぇあやね。あの八個の的にダーツの矢が刺さったら、景品がもらえるのかな?」

「そんなわけないでしょ。たぶん弓を撃って、矢を的に当てるんじゃないかしら」

そんな二人の会話聞いた花梨が藍理に訪ねた。

「ねぇ藍理。藍理ならあそこから、的までダーツの矢を当てる事できる?」

「可能だと思いますが、場違いなのでやりません」

藍理はさらりと返答した。

「う、うん。そうだね」

(というか、やっぱり出来るんだ・・・)

その横では、麻宵と麻宵が誘った妹の千草がいた。

「お姉ちゃん、誘ってくれてありがとう。でも、私も屋台のお手伝いもやりたかったなー」

「いやいや、千草を働かせるなんてそんな事は、私にはできないよ!」

「もう。お姉ちゃん過保護すぎるよー」

「まさか麻宵。将来も千草ちゃんを働かせないで自分で面倒見るつもりなんじゃ・・・」

「うっ・・・ありえるわね。そうなった時は私達が全力で止めるのよ」

あやねと、花梨がそんな話をしていると檀上に、霜が現れて挨拶を言った後に、祭儀は始まったのだった。祭儀の最初は、先代の巫女の物語を唄や踊りなどで披露された。そしていよいよ最後の場面になり、巫女が八神に弓を撃つ場面になった。この場面の最初に、五人の巫女が出てきて、的に向かって一斉に矢を放ち命中させた。その後、時依が出てきて六個目の的の前に立ち、勢いよく矢を放った。すると矢は的の真ん中に命中し、的を粉砕し、そのさらに、数メートル後ろにある的の真ん中に命中し、場内を沸かせた。

「す、すごいね。的を壊すって、恐ろしい威力だよね」

「はい。しかも、力いっぱいではなく、力をセーブしてあの威力です。もし、あの人が、力いっぱい撃ったのなら、もう1、2枚いけるのでないでしょうか」

「・・・そこまでいくと、あの人が人間かどうかを疑うね」

時依の次に早雪の祖母である霜が出てきて、七枚目の的の前に立ち矢を撃ち、的の真ん中に命中させた。

「あれで終わり?」

「なに言っているのよ。あのお歳で、真ん中に命中させるのが凄いじゃない」

あやねが、そう言ったが、実は霜はこれだけではなかった。その後、もう一度矢を放ち、なんと的に刺さっている矢の後ろに今放った矢を命中させたのであった。それを見た、観客とあやねは驚きに声を上げた。

「・・・ばあちゃん、すげー!」

「凄いというか、凄すぎね・・・」

そして最後になり、いよいよ早雪が登場したのだった。

「あ、早雪だ!おーい早雪!!」

「早雪さーん!頑張ってくださいーい」

観客席で、茅穂と麻宵が早雪に向かって叫んだ。当然だが、すぐにあやねが、茅穂の頭を叩き、「大きな声出すんじゃないわよ。静かに見てなさい」と注意した。

「お姉ちゃんもね!!」

麻宵の方は、千草が串に刺さった唐揚げを麻宵の口の中に入れた。

(茅穂さん。麻宵さん応援ありがとうございます)

早雪は心の中で、二人にお礼を言った後、的を睨んで、大きく息を吐いた。
するとここで、放送が入り今から、早雪がする事の説明が入った。

『これから、皆様にお見せするのは、先代の八神の巫女ができたといわれます。三矢射撃、つまり三本の矢を同時に射るという高度な技です』

「えぇ!?三本の矢を同時に射る事なんてできるの?」

「可能だと思いますよ。私はダーツの矢を5本同時に投げる事できますから」

「凄ーい、藍理!あたいはね、エアーガンから発射された弾を連発じゃなきゃ、避けられるよ!!麻宵は??」

「えーと・・・私は、飛んでいるハエを箸でキャッチできるのと、リンゴを片手で潰せる事ぐらいかな」

「お姉ちゃんそれ、二度とやっちゃダメだからね」

千草が、笑顔で麻宵にいった

「ビクッ!?は、はい。わかってまーす・・・。」

「と、とりあえず3人共、アイドルじゃなくて違う事をしてもいいと思うよ・・・」

「しっ、みんな静かにそろそろ早雪さんが撃つわよ」

あやねの声で全員が、再び早雪の方に集中した。

(一昨年失敗して、撃ち方を考えたけど、私はどうせダメだと勝手に思い、去年試さないで失敗しました。けど、やり方を変えたり、環境を変えたりする事は良い事なんですね。E,T,Oプロに入って、素敵な人達と出会って学びました。今なら、失敗を恐れずに裕くんの教えてくれた通りに、私は、やり方を変えて撃つことができる)

そう、早雪は決心すると、弓を縦ではなく、横に構えた。その姿をみてその場にいた全員が驚いた。そして早雪は三本の矢を弦に引っかけ一気に的へ向かって放った。一瞬その場が、シーンと静まり返ったが、的に三本の弓が綺麗に横一列に命中しているのを確認すると拍手喝采と絶賛の声であふれ返った。

「うおー!早雪スゲー!カッコイイーー!!」

「うんうん!凄かったです早雪さん!!」

そう叫ぶ麻宵達の方を向いて撃ち終わった早雪はニッコリと頬笑んでこういった。

「みなさんのご声援のおかげですよ。ありがとうございます」

「アハハ。これで私達、アイドル目指しているのか、ますますわからなくなってきたね」

「いいんですよ花梨。全部ひっくるめて私達はE.T.Oプロのアイドル候補生であり仲間なのですから」

「それもそうだね♪」

そして一度みんなと別れて、神社の中に戻ろうとした早雪は、観客席にいる裕に気付いた。裕は最初から最後まで早雪を見ていたらしく、早雪が見た瞬間にニカッと笑ってピースをした。そんな早雪も裕に向かって笑顔で、ピースを返したのだった。こうして八神例大祭は大盛況の中、幕を閉じたのだが、その翌年の例大祭から屋台も復活し、毎年、大盛りになったのであった。


おわり

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