―現在も同じような状況が続いているのでしょうか。 この10年間ほどで改善した点もあります。実は、障害者自立支援法ができる前から、徐々に精神障害者の退院が進められるようになっているのです。精神保健法や95年の精神保健福祉法などによって、精神障害者のための社会福祉施設が徐々にできたこと、精神保健福祉手帳制度が整備されたことなども挙げられます。また、精神保健福祉士という国家資格ができ、退院などへの積極的なサポートが行われるようになったことも挙げられます。 けれども、やはり精神障害者支援の遅れは否めません。実は、欧米では精神疾患で入院する患者は10日か20日そこらで退院するのが普通なのです。現在日本には精神病床が35万床ほどあり、およそ32万、33万床くらいが常に稼働していますが、これは諸外国ではあり得ません。日本の精神医療や精神障害福祉施策は、やはりあるべき姿から逆行してきたと言わざるを得ません。 現在でも、「精神障害者の地域移行支援を進めなければならない」という大目標自体には皆さん賛成するのですが、NIMBY(not in my back yard=わたしの裏庭には来ないで)という言葉があるように、いざ自分の地域で受け入れるとなると、特に市民レベルでは難色を示されるのが実情です。