「雨のあとに虹」　コミュニティコミュの雨のあとに虹・もうひとつの物語Season２?・８月の花火

　立秋が過ぎると暑中から残暑に変わり秋になる。今日は少しだけ秋の気配を感じたが暑さが続いていた。私はいつものように駅ビルの中に入ってエスカレーターに乗った。外の暑い空気から冷房が効いた冷たい空気に変わると全身から汗が吹き出て来た。私がエスカレーターを降りるといつもの見慣れた珈琲ショップの入口が見えた。私が中に入ると
「いらっしゃいませ！」
男性の店員さんは元気よく言った。
「こんにちは！」
私は言った。
「何になさいますか？」
男性の店員さんが言うと
「ケーキとブレンドをお願いします。」
私は言った。
「かしこまりました。」
男性の店員さんは笑顔で言った。私が黙って見ていると男性の店員さんは珈琲をセットした。少しの時間だけ沈黙が流れると控室から店長さんが出て来た。私と視線が合うと
「こんにちは！」
店長さんは笑顔で言った。
「こんにちは！」
私が言うと
「彼は一昨日から入った新人です。」
店長さんは男性の店員さんを見て言った。
「好青年ですね？」
私は言った。
「お待たせしました。」
男性の店員さんが言うと
「丁寧にお出しするのよ。」
店長さんは言った。
「解りました。」
男性の店員さんが言うと
「少しずつ慣れてくれればいいと思うよ。」
私は店長さんに言った。
「そうですね?」
店長さんが言うと
「ゆっくり珈琲タイムを楽しむことにするよ。」
私は言った。

　私は空いている席に座った。空いている時間帯だから周囲に人はいなかった。私はいつものように店内を見回してから大きく深呼吸をして目を閉じてみた。特別に癒される時間がこれからはじまるのだ。私が珈琲を一口含むと
「いらっしゃいませ！」
女性の店員さんは笑顔で言った。私が横を見て視線を合わせると女性の店員さんは頷いた。
「先ほどは姿が見えなかったね？」
私は言った。
「休憩時間だったので控え室にしました。」
女性の店員さんが言うと
「君の姿が見えないと寂しいよ。」
私は言った。
「本当ですか？」
女性の店員さんが言うと
「本当だよ。」
私は言った。女性の店員さんは少し恥ずかしそうに私を見た。私が視線を外して珈琲を口にすると
「今日は花火があるのを知っていましたか？」
女性の店員さんが言うと
「今日は花火だったかな？」
私は言った。
「駅前商店会主催の花火大会があります。」
女性の店員さんは笑顔で言った。
「それは楽しそうだ！」
私が言うと
「私も店長と一緒に参加しますよ。」
女性の店員さんは言った。
「それで今日は通常より早く閉店するのだね？」
私が言うと
「はい。」
女性の店員さんは言った。

「彼は役者の卵で近日中に舞台をする予定があります。」
店長さんは言った。私が横を見ると店長さんが笑顔で立っていた。私は珈琲を口に含んでから頷いた。店長さんが無言でいると
「僕も時間があたったら芝居を見に行きますよ。」
私は少しだけ大きな声で言った。
「ぜひ見てあげてください。」
店長さんが言うと
「芝居を見るのは久しぶりですよ」
私は言った。店長さんが頷くと私は笑顔を向けた。静かでゆっくりとした時間が流れていくと
「店長！」
男性の店員さんは大きな声で店長さんを呼んだ。
「失礼します。」
店長さんが言うと
「花火も見に行きますよ。」
私は言った。店長さんが嬉しそうに私を見ると私は黙って珈琲を飲みほした。

「ご馳走様でした。」
私は言った。
「ありがとうございました。」
男性の店員さんが言うと
「僕も舞台を見に行くからパンプレットをください。」
私は言った。
「持って来ます。」
男性の店員さんは嬉しそうに言った。私は男性の店員さんが控え室に行く姿を目で追うと女性の店員さんと視線が合った。
「久しぶりに花火も見るよ。」
私が言うと
「お待ちしています。」
女性の店員さんは言った。
「うん。」
私が言うと
「一緒に夜空を見上げましょう。」
女性の店員さんは言った。私が頷くと男性の店員さんがパンフレットを持って歩いて来た。私はパンフレットを受け取り少しだけ嬉しい気持ちで出口からエスカレーターに向かって歩き出した。芝居や花火はどこかで日常の疲れを癒してくれるように思える。私が駅ビルの外に出ると赤い夕日が花火の鮮やかさに似てとても綺麗だった。私は公園に向かって足早に歩き出した・・・。