「雨のあとに虹」　コミュニティコミュの雨のあとに虹・Part３　その１２１

「私に任せてください。」
久美子は言った。
「助かるよ。」
大川教授が言うと
「奈穂さんはお辛い状態でしょうね？」
久美子は言った。
「私もそれが心配だよ。」
大川教授が言うと
「すぐにお願いしてみます。」
久美子は言った。
「堀川さんにはお世話をかけるね。」
大川教授が言うと
「お互い様ですよ。」
久美子は言った。
「うん。」
大川教授が言うと
「私は俊さんが危険な状態に合わないことを願うだけです。」
久美子は小さな声で言った。
「何か言ったかい？」
大川教授が言うと
「いいえ。」
久美子は言った。
「私も覚悟を決めるよ。」
大川教授は言った。
「この件は警察に知らせましたか？」
久美子は言った。
「まだ知らせていないよ。」
大川教授が言うと
「すべて俊さんに任せましょう。」
久美子は言った。
「私は堀川さんに任せるよ。」
大川教授は考えるように言った。久美子が言葉を捜していると教授室のドアが開いて純子が顔を出した。大川教授が少しだけ和んだ顔をすると
「失礼します。」
純子は会釈をしながら言った。
「椿さんが顔を見せてくれるのは珍しいね。」
大川教授が言うと
「久美子は来ていますか？」
純子は言った。
「堀川さんと話をしていたよ。」
大川教授が言うと
「私も話に入れてくださいよ。」
純子は言った。
「どうかしたの？」
久美子が言うと
「久美子に講義の内容を確認したかっただけよ。」
純子は言った。
「講義の内容なら私に質問してください。」
大川教授が言うと
「大川教授の説明は難し過ぎますよ。」
純子は言った。
「それは教授に失礼ですよ。」
久美子は純子に言った。

　湾岸沿いに建っている倉庫のひとつは人の出入りがないのがすぐに解かるほど廃屋のイメージがあった。人が近寄らない倉庫の中で奈穂が後手に縛られて口には言葉を発しないようにマスクをはめ込まれていた。
「これで高村が出て来るのか？」
深谷が言うと
「出て来るはずだ。」
巽は言った。
「高村は英雄気取りで出て来るよ。」
萩原が言うと
「私は誘拐しても意味がないと思うよ。」
ピーターは言った。
「今さらあとには戻れないよ。」
深谷が言うと
「仕方がないだろうな。」
坂上は言った。
「私はビジネスで利益が上げられないなら降りるよ。」
マイケルが言うと
「私も手荒な真似はしたくない。」
魯は言った。
「弱腰になったのか？」
巽が言うと
「誘拐はやりすぎだぞ。」
魯は言った。
「最初に手段を選ばないと決めたはずだ。」
巽が言うと
「状況が変わったのだ。」
魯は言った。
「いずれにしてもことが済むまではかってな行動はしないでほしい。」
坂上が言うと
「解かったよ。」
魯は言った。奈穂は口にマスクをされて言葉が出ない状態で不安を募らせていた。魯は奈穂と視線を合わせた。

「彼らは本当に何かを仕掛けてくるのかな？」
岸田は官房長室で桜田に言った。今回は菊池も桜田の横に立っていた。
「水面下では動いているはずです。」
桜田は言った。
「座って話そうよ。」
岸田が言うと
「失礼します。」
桜田は言った。
「緊張しますね。」
菊池が言うと
「坂上と深谷は捜査二課でも追うことになっているよ。」
岸田は言った。
「脱税と詐欺容疑ですね？」
桜田が言うと
「まだ何か仕掛けて来ると言うのかね？」
岸田は言った。
「その可能性が高いです。」
桜田が言うと
「それは困るよ。」
岸田は言った。
「青い龍とマクマホンファミリーは麻薬の市場を広げていると考えるのが自然です。」
桜田が言うと
「巽組と組んで売りさばいているかもしれないですね。」
菊池は遠慮しながら言った。
「組織対策課も動かした方がよさそうだね。」
岸田は言った。
「いずれ動かざるを得ないと思います。」
桜田が言うと
「今回はSITまで動かすのだからうまく処理をしてくれるよね？」
岸田は言った。
「任せてください。」
桜田が言うと
「総武の高村社長にも協力をお願いしました。」
菊池は言った。
「高村さんは一般人だよ。」
岸田が言うと
「解かっています。」
桜田は言った。
「迷惑をかけてはいけないよ。」
岸田が言うと
「はい。」
桜田は言った。
「高村さんが怪我をしたら警察の不祥事だよ」
岸田が言うと
「官房長に責任は押し付けませんよ。」
桜田は言った。
「それなら文句はないよ。」
岸田は笑みを浮かべて言った。