「雨のあとに虹」　コミュニティコミュの雨のあとに虹・Part３　その４６

「早速ですが来月からお願い出来ますか？」
木暮はあすなろ会の玄関で会釈をしながら言った。
「解かりました。」
志乃は言った。
「私からもお願いします。」
未来が言うと
「吉田さんに木暮さんを紹介してもらって感謝しています。」
志乃は言った。
「近いうちにもっと収入に繋がる人を紹介するわ。」
未来がいうと
「本当ですか？」
志乃は言った。
「時期を見て紹介するわ。」
未来が言うと
「ありがとうございます。」
志乃は言った。木暮は背を向けて歩いて行く志乃を未来ふたりで見ていた。

「あらたまってどうしたの？」
若菜は久美子に言った。休憩室にいるのは久美子と若菜のふたりだけであった。
「私の杞憂かもしれません。」
久美子は言った。
「遠慮しないで言ってください。」
若菜が言うと
「先ほど隣の本屋さんからエスカレーターに向かって歩いて行く萩原さんを見ました。」
久美子は言った。
「親彦さんが来たのですか？」
若菜が言うと
「本屋さんに用事があっただけでしょうか？」
久美子は言った。
「親彦さんはあれから一度も私の前には現れていないですよ。」
若菜が言うと
「心配はないと思いますが気をつけてください。」
久美子は言った。
「ありがとう。」
若菜が言うと
「危険を感じたらすぐに言ってください。」
久美子は言った。

「お先に失礼します。」
久美子は大きな声で言った。
「お疲れ様です。」
小百合は言った。
「先ほどはありがとう。」
若菜は小声で言った。
「気をつけでくださいよ。」
久美子が言うと
「うん。」
若菜は言った。久美子は若菜たちに背を向けてエスカレーターに乗ると混雑した人混みの中に入って行った。久美子はエスカレーターで１階に降りると駅ビルの出口から駅の改札口の前に歩いて行き立ち止まった。ひとりで改札口の前に立っている久美子を少し離れた場所で萩原が凝視していた。行き交う人は萩原を見ることなく足早に歩いていて久美子が時計を見ると携帯電話が鳴った。久美子がすぐに携帯電話を耳に当てると電話の相手は俊之であった。
「久美ちゃん。」
俊之は言った。
「俊さん。」
久美子が言うと
「僕は急いでいたから社用車に乗って来たよ。」
俊之は言った。
「今はどこにいますか？」
久美子が言うと
「駅前の大通りで待っているよ。」
俊之は言った。
「はい。」
久美子が言うと
「ゆっくりでいいよ。」
俊之は言った。
「すぐに行きますよ。」
久美子は笑顔で言った。改札口から駅前広場に歩き出す久美子を追うように萩原が歩き出した時に誰かと身体がぶつかった。
「痛い。」
ぶつかられた女性は言った。萩原が女性を無視して歩こうとすると女性は萩原の腕を力強く掴んだ。
「何をする。」
萩原は言った。萩原が見るとその女性は泰子であった。
「黙っていないで謝ってください。」
泰子が言うと
「小さいことを気にするなよ。」
萩原は言った。関口がふたりの近くに来ても萩原は気づかなかった。泰子が合図をすると
「女性には横柄な態度だな。」
関口は言った。萩原は驚いて振り返って関口を見た。
「久美子さんに何の用件だったの？」
泰子は言った。
「あの女に用はないよ。」
萩原が言うと
「嘘を言ってもダメだぞ！」
関口は言った。
「本当だよ。」
萩原は大きな声で言った。

　ピーター・マクマホンと魯文仁は珈琲を飲んでいた先ほどから萩原を見ていたふたりが落胆の表情を見せると
「情けない男だな。」
ピーターは言った。
「あの男と組んだのは失敗だった。」
魯が言うと
「巽という男も簡単に失敗したのをあんたも見ただろう。」
ピーターは言った。
「巽ではなくもっと大きな暴力団組織と組まなければいけない。」
魯は珈琲を飲みながら言った。
「江紫組や裏道会は高村の味方だからあてに出来ないな。」
ピーターが言うと
「早く高村を脅迫する材料を得たいよ。」
魯は言った。
「急がせよう。」
ピーターが言うと
「北京警察の林が日本に来れば警視庁の桜田と連携するはずだ。」
魯は言った。
「桜田が出て来ると厄介だな。」
ピーターが言うと
「我々には不利だ。」
魯は言った。
「青い龍とマクマホンファミリーは世界で頂点を争うマフィアだぞ！」
ピーターが言うと
「あらたまって言うなよ。」
魯は言った。
「その青い龍のボスであるあんたが江紫組や裏道会を味方に出来ないばかりでなく桜田と林を恐れているのは情けない。」
ピーターが言うと
「李和平が高村に味方しているのだから慎重に行動をしないといけない。」
魯は言った。
「日本企業を攻略して利益を貪る計画を達成させるには急ぐ必要があるぞ。」
ピーターが言うと
「解かっている。」
魯は言った。
「すでに王大輪が日本に来ているのも気になるよ。」
ピーターは考えるように言った。