「雨のあとに虹」　コミュニティコミュの雨のあとに虹・Part３　その３６

「忙しいですか？」
深谷は言った。深谷が経営するウェブジャパンの社長室に坂上が大江を連れて訪れていた。対する深谷は大塚と一緒に坂上と対面していた。
「相変わらずだよ。」
坂上が言うと
「今度は私が名古屋に行きましょうか？」
深谷は言った。
「私が東京に出て来るから気にしなくていいよ。」
坂上は深谷を見て言った。
「それは助かります。」
大塚が言うと
「お互い出張はコストが高いですね。」
大江は言った。
「細かいことを気にするな。」
坂上は大江に言った。
「失礼しました。」
大江が言うと
「お前も小さいことを気にするなよ。」
深谷は大塚に言った。
「今期の決算では辛うじて黒字を確保しましたが経費を節減しないと株主から責めまれますよ。」
大塚は言った。
「そんな心配はいらないよ。」
坂上は大塚に言った。
「それはどういう意味でしょうか？」
大塚が言うと
「総武のスキャンダルを暴いて打撃を与えた隙に中国進出を失敗に終わらせれば我々中日本グループが総武に取って代われると思う。」
坂上は言った。
「中日本さんに我々もついて行きます。」
深谷が言うと
「そうですね。」
大江は言った。
「中日本さんが総武に変わって中国に進出とは大胆ですね。」
大塚が言うと
「そのために高村の周辺を調査してスキャンダルを暴こうとしているのは君も知っているね。」
坂上は言った。
「はい。」
大塚が言うと
「高村のスキャンダルは掴めましたか？」
坂上は言った。
「高村俊之は思ったよりまじめな男ですよ。」
深谷が言うと
「そうかね。」
坂上は言った。坂上が言い終わるのを待っていたようにドアがノックされると
「はい。」
大塚は大きな声で言った。
「失礼します。」
理佐はドアを開けると言った。理佐が珈琲を持って社長室に入って来ると
「新しく入った社員さんだね。」
坂上は言った。
「はい。」
理佐が言うと
「山口は無能だから解雇しましたよ。」
深谷は言った。
「そうかね。」
坂上が言うと
「無能な社員は使い捨てにしますよ。」
深谷は言った。理佐が全員に珈琲を置くと
「定時を過ぎたから帰っていいよ。」
大塚は理佐に言った。

「僕の方でも新しい治療方法がみつかりそうだよ。」
俊之は久美子に言った。
「私はなるべく早く育子さんを草鹿先生に診察してもらうつもりです。」
久美子は言った。ふたりは夜の公園を歩いていた。すれ違う人が数人いても人通りは少なかった。
「育子さんには絶対に完治してほしいと思っているよ。」
俊之が言うと
「最初は育子さんが落ち込んでいるのではと心配していました。」
久美子は言った。
「育子さんも精神的には辛いはずだね。」
俊之が言うと
「私たちの前では辛い顔を見せないから育子さんは精神が強いですね。」
久美子は言った。
「僕は絶対に育子さんを治して見せるよ。」
俊之は珍しく強い口調で言った。
「俊さん。」
久美子は俊之を見て言った。
「うん。」
俊之が言うと
「育子さんを助けてあげてください。」
久美子は言った。
「必ず助けるよ。」
俊之が言うと
「俊さん。」
久美子は短く言った。俊之が次の言葉を捜していると久美子は俊之に力任せに抱きついて来た。俊之は久美子の全体重を受け止めると久美子はさらに俊之にもたれかかった。
「久美ちゃん。」
俊之は言った。
「少しだけこのままでいてください。」
久美子が言うと
「うん。」
俊之は言った。俊之が久美子の首筋を優しく撫でると久美子は瞳から涙の粒を流した。

「お先に失礼します。」
理佐は言った。
「国見さんは遅くまで仕事をしているね。」
警備員の大沢小一郎は言った。
「私は人より努力をしないと追いつけないですから仕方がありません。」
理佐が言うと
「深谷社長も社員の地道な努力が理解出来る社長ならいいのに残念ですね。」
大沢は言った。
「深谷社長はとても素晴らしい方ですよ。」
理佐が言うと
「国見さんは偉いね。」
大沢は言った。
「大沢さんも遅くまでお疲れ様です。」
理佐が言うと
「私はシフト勤務だから国見さんが思っているほど疲れていないよ。」
大沢は言った。
「そうでしたか。」
理佐が言うと
「私はウェブジャパンの社員でなくて良かったよ。」
大沢は言った。
「それは知りませんでした。」
理佐が言うと
「私が深夜番の時には国見さんと世間話が出来るから楽しいですよ。」
大沢は言った。
「私も大沢さんとお話が出来るのを楽しみにしています。」
理佐が言うと
「国見さんは若いのに立派だね。」
大沢は言った。