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「雨のあとに虹」 コミュニティコミュの雨のあとに虹 その143

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「波の音は静なのに動きは力強いね。」
俊之は言った。久美子も耳をすませて打ち寄せる波の音を聞いていた。周囲にはふたり以外に誰もいなかった。北風が冷たく俊之も久美子も身体を少し振るわせていた。太陽が傾き日中の輝きから夕日へと変わっていくのが微妙なコントラストを描いた。ふたりだけで借り切ったような海であり波であり空であった。その海が静かで力強くふたりを迎えているような錯覚を覚えるのは俊之も久美子も一緒である。
「俊さんに話があるから聞いてください。」
久美子は決心したように言った。波が静かであるが力強く押し寄せて来た。
「うん。」
俊之は言った。久美子は一呼吸して辛い表情を浮かべた。俊之は久美子を見た。
「私は春になったら1年間だけ国際協力隊に参加します。」
久美子は言った。
「久美ちゃんが海外に行くの?」
俊之が言うと
「カナダで活動する予定です。」
久美子は言った。その瞬間に波は大きな音を立てて言葉と共振していた。

「久美ちゃんがカナダへ行ってしまう。」
俊之は言った。俊之の耳に久美子の言葉と押し寄せる波の音が響き共振が高くなった。俊之は自分の耳を疑った。
「トレンドカフェの経営母体であるワールドコミュニケーションズが海外で国際交流などの活動を展開していています。」
久美子が言うと
「世界40カ国に展開していると聞いたよ。」
俊之は言った。
「ワールドコミュニケーションズの社長からカナダへ行って活動をしてはどうかと勧められました。」
久美子は俊之に言った。久美子の言葉は俊之の耳を通過するだけだった。
「どうしても行かなくてはいけないのかい?」
俊之は短く言った。
「断るのも可能です。」
久美子は言った。
「それは久美ちゃんの意思で決めたことだね?」
俊之が言うと
「私もカナダで国際交流活動を経験して俊さんのように少しでも広い価値観を持った人間になりたいです。」
久美子は言った。
「僕も広い世界を見るのをすすめるよ。」
俊之が言うと
「そのためには1年間海外へ行くが自分の見聞を広めると思いました。」
久美子は言った。久美子の言葉が音楽を奏でるように響いた。波の音や沈む夕日が形容しきれない美しさを映し出した。俊之は水平線に輝く光と久美子の顔を交互に見つめていた。
「それは今しか出来ないことだと思うよ。」
俊之が言うと
「私も今しか出来ないと思います。」
久美子は言った。
「久美ちゃんは若いからいろいろと挑戦した方がキャリアアップに繋がるね。」
俊之は小さな声で言った。冬の海は美しく寒かった。海は冬独特の夏には感じない大人の憂いを映し出していた。俊之と久美子の心にメッセージを送るようにいつまでも空は赤く輝いて海の青さを変えていた。今の季節には珍しく鳥が一羽だけ飛んでいた。

「OKです。」
監督の黒岩は言った。黒岩の声は大きく響いた。
「今日の撮影はこれで終わりです。」
ADの小松は言った。
「みなさんお疲れ様でした。」
黒岩は珍しく優しい声で言った。直子を少し離れた所で時計を見た。
「少し長引いたね。」
小松は直子に言った。
「でもこのくらいは仕方がありませんよ。」
直子は言った。視線を移した直子は知っている顔を見つけた。翔太が直子を見て軽く会釈をした。
「笹川さん。」
直子は言った。翔太が右手を上げると直子は翔太の近くに歩いて行った。

純一はビデオが入った鞄を持って歩いていた。オリジナルは家に置いてコピーを持って来たのだ。純一は弘子にオリジナルではなくコピーを渡そうと考えていた。待合わせの時間まではまだ余裕がありファーストフォード店で飲んでゆっくりしようと純一は考えていた。ファーストフード店の入口に立った純一は大きくため息をついた。
「今だ。」
関口は言った。関口の支持を受けた3人の若者が純一に体当たりをした。
「何をする。」
純一大きな声で言った。3人は純一からビデオが入った鞄を奪うと走り出した。
「必ず逃げ切れよ。」
関口は小さい声で言った。
「泥棒だ。」
純一は大声で言った。純一は3人を追いかけた。周囲の人が純一に気付いた時には3人の姿は見えなくなっていた。純一は必死に走った。純一が疲れて立ち止まると道端に鞄が落ちていた。。純一は急いで鞄の中を見るとビデオだけが抜かれていた。

俊之は駅の改札口から出て来た。坂本は俊之の姿を見ると懐かしそうに微笑んだ。俊之が赤信号を待っていると
「高村先生。」
坂本は俊之に言った。俊之は駅の改札口から出て来て坂本を見た。
「坂本さん。」
俊之は坂本を見て言った。俊之は坂本を見て懐かしかった。
「経営アカデミー学院の講習ではお世話になりました。」
坂本が言うと
「坂本さんと塩野さんは積極的に私の講習を聞いてくれましたね、」
俊之は言った。
「経営者として大切なノウハウを高村先生に教えていただいて感謝しています。」
坂本が言うと
「以前に前に塩野さんに会いましたよ。」
俊之は言った。
「それは塩野さんから聞きました。」
坂本が言うと
「坂本さんと塩野さんはビジネスでも取引があるみたいですね。」
俊之は言った。
「おかげさまで塩野さんの会社は提携企業のひとつです。」
坂本が言うと
「それは何よりです。」
俊之は言った。俊之が時計を見たときに
「高村さん。」
はつみは俊之を見て言った。
「吉沢さん。」
俊之ははつみに言った。俊之ははつみの顔を見た。
「あなたは吉沢さんですね。」
坂本ははつみに言った。
「受講生の方でしたね?」
はつみは言った。
「吉沢さんに会えて嬉しいですよ。」
俊之が言うと
「来年度は高村先生が来られないので残念ですよ。」
はつみは言った。
「高村先生は経営アカデミー学院を辞められたのですか?」
坂本が言うと
「友人の会社の顧問になりましたので辞めました。」
俊之は言った。
「それは残念です。」
坂本が言うと
「時間的に無理をすると悪影響が出ますので決心しました。」
俊之は言った。
「高村先生は変わられましたね。」
はつみが言うと
「そうかい?」
俊之は言った。
「今はオーラが出ていますよ。」
はつみが言うと
「オーラが出ていますか?」
俊之が言うと
「高村先生がご自分で解らないだけですよ。」
坂本は言った。

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