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「雨のあとに虹」 コミュニティコミュの雨のあとに虹 その142

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 純一が帰宅しても静江はまだ帰っていなかった。千晴の姿は見えないが自分の部屋にいるのかもしれないと純一は思っていた。純一は疲れた顔でリビングのソファーに座った。
「疲れたな。」
純一は言った。純一が珈琲を飲もうとすると玄関のドアが開いて静江と千晴が帰って来た。
「ただいま。」
静江は静かに言った。無言の千晴に純一は視線を向けた。千晴も純一を見た。
「今日も帰りが遅かったな?」
純一は言った。静江も千晴も純一の言葉には無言であり純一にとって長い一日が終わろうとしていた。

 俊之と久美子を乗せた電車は静かに歴史の玄関口に滑り込んでいた。関東では武家政権が確立した時に政治の中心地となったこの土地には歴史を肌で感じる寺がたくさんあった。大仏をはじめ有名人の墓もあり観光名所以外にも仏閣が多く点在していた。海岸線はどこまでも続いているように長かった。少し足を延ばすと若者が集まる海岸線が近かった。シーズン中に賑わっていた余韻が今でも残っていた。今は一年中で一番寒い季節であり訪れる人も少なかった。俊之は久美子とゆっくりとこの地を見て回ろうと考えていた。駅の改札口を出て大きな通りを歩くふたりを冬の北風が出迎えた。久美子の右手が俊之の左手を強く握り締めている。ふたりの指と指が絡み合い今日は特別な何かを予感させていた。
「この池は歴史的にも有名なものだよ。」
俊之が言うと
「この池は以前に一度来ましたよ。」
久美子は言った。
「久美ちゃんがいくつの時に来たの?」
俊之が言うと
「中学生です。」
久美子は言った。
「この池は小さいね。」
俊之は言った。
「あの時には池がもっと大きく見えました。」
久美子は正直な気持ちを言った。

「気分はどうですか?」
多恵子は榊原に言った。
「最近は体調が回復してきたよ。」
榊原は穏やかな表情で言った。榊原は入院してからくゆっくり身体を休めたおかげで以前のような不調はなかった。静かな病室は榊原に精神的な安らぎを与えたのかも知れない。
「それはよかったですね。」
多恵子が言うと
「不思議だな。」
榊原は言った。
「何が不思議なのですか?」
多恵子が言うと
「高村に会ってから精神が落ち着いたよ。」
榊原は言った。
「主治医の先生もあなたの回復には驚いていましたよ。」
多恵子は正直に言った。

「このお寺は梅雨時に来ると紫陽花がとても綺麗だよ。」
俊之が言うと
「次は梅雨になったら来たいですね。」
久美子は言った。
「梅雨になったらまた一緒に来ようか?」
俊之は久美子の目を見て言った。
「梅雨の紫陽花を見たいです。」
久美子は言った。久美子は北風で寒さを感じると俊之に自分の身体を寄せた。

「お待たせしました。」
ひとみはお客に言った。今日は久美子がいなため小百合とカウンターに入っていた。
「ご注文は何になさいますか・」
小百合は明るい声で言った。いつまでも久美子だけに頼るわけにはいかなかった。早く久美子に変わる人材を育てなければいけないとひとみは考えていた。

「この大仏はかつて仏殿の中にあったのだね。」
俊之が言うと
「ここに大仏殿があったのですか?」
久美子は言った。
「津波で神殿が流されてそのままになっているみたいだね。」
俊之が言うと
「津波がここまで来るとは大きな台風だったのですね?」
久美子は驚いたように言った。
「大きかったと伝えられているよ。」
俊之は言った。
「当時の被害は大きかったのかしら?」
久美子が言うと
「あとで調べてみるよ。」
俊之は微笑みながら久美子に言った。久美子は海岸からかなりの距離があるこの位置に津波が来たのに違和感があった。

「これであと戻りは出来ないわね。」
育子は翔太に言った。ふたりは珍しく都心のショッピングモールをふたりで歩いた。ショッピングモールで催されたイベントも楽しんでいた。
「始めてしまったから答えを出すまで戻れないよ。」
翔太は育子に言った。
「高村さんの心にある傷が早く言えるといいね。」
育子が言うと
「それは大丈夫だよ。」
翔太は言った。
「時間がかかりそうだよ。」
育子が言うと
「何とかなるよ。」
翔太は言った。
「みんなが協力するからうまくいってほしいね?」
育子は心配そうな顔で言った。

「この海岸線は電車に沿っているからゆっくり歩こうよ。」
俊之は久美子に言った。小さな店で軽食と珈琲を注文したあとである。時々見かける店で焼きそばやソーセージなどを食べているからふたりには空腹感がなかった。
「この海岸をゆっくり歩いたことはあとで素晴らしい思い出になりそうです。」
久美子は意味を含ませて俊之に言った。俊之は久美子の目を見て次の言葉を捜していた。
「寒いけれどふたりで海岸を歩いた思い出は忘れられないよ。」
俊之は珈琲を口にして言った。
「私も忘れられないです。」
久美子は俊之を見て言った。

「この新しいデザインは前のよりセンスが優れているよ。」
大介は春香に言った。
「これは落ち着いたデザインでしょう?」
春香が言うと
「落ち着いて大人の女性をうまく表現が出来ているね。」
大介は言った。春香は大介に褒められて嬉しかった。
「もうひとつデザインが出来たらはじめるわよ。」
春香が言うと
「いよいよHARUKAーSHIRANIの設立だね。」
大介が言うと
「総武とは別の事業を開始するが私の夢だったわ。」
春香は何かを決心するように言った。

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