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「雨のあとに虹」 コミュニティコミュの雨のあとに虹 その111

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「立派な店舗だね。」
俊之は言った。俊之は矢島建設が新規事業に参入する第一歩として出店する雑貨屋を視察に来ていた。
「これでやっと開店が出来る目途がたちました。」
田崎は嬉しそうに言った。
「これで矢島も新規事業を展開出来たわけだね。」
俊之は言った。
「先代の事業を引き継いだのではなくて社長が始めた事業ですね。」
田崎が言うと
「それは立派なだけれど無理をすると利益を圧迫するから注意が必要だよ。」
俊之は言った。
「それは心配ないと思いますよ。」
田崎は微笑んで言った。
「矢島も解っているはずだね。」
俊之が言うと
「社長は高村さんから慎重にしろとアドバイスを受けたから無理な冒険はしないと言っています。」
田崎は言った。
「それが賢明だよ。」
俊之が言うと
「社長は高村さんのアドバイスを無視しないと思います。」
田崎は正直に言った。
「それなら僕も安心して見ていられるよ。」
俊之は微笑みながら言った。俊之は田崎がこの数ヶ月間でかなり成長しているのに気付いていた。噴水に落ちた夜からに比べると精神的に頼もしくなっていた。

「ただいま」
久美子は言った。ひとり暮らしの久美子であるが同居人がいるように部屋に入った。これは俊之と翔太から受けたアドバイスである。最近は凶悪な事件が多発している。少しでも防犯のために声を出してドアを開ける。部屋の中に入ったらすぐにドアを閉める。ドアを閉めたらすぐに鍵をロックする。久美子は確実のアドバイスを守った。翔太は被害に合いやすいタイミングと久美子に言った。少しでもそのタイミングをはずすように久美子も心がけていた。久美子が部屋で座るとに落ちつくと携帯電話が鳴った。見ると相手は育子からだった。
「久美ちゃん。」
携帯電話の向こうで育子は言った。
「はい。」
久美子は言った。久美子は今では育子にも純子のような近親間を持っていた。
「久美ちゃんは成人式に実家に帰るの?」
育子は言った。
「成人式が近いですね。」
久美子が言うと
「実家に帰らないと親不孝だよ。」
育子は言った。久美子がカレンダーを見ると来週の月曜日は成人の日である。
「私も実家に帰ります。」
久美子は言った。
「久美ちゃんも晴着姿になるのね?」
育子が言うと
「母が美容師なので髪をセットしてもらいますよ。」
育子は言った。
「高村さんにも見せてあげないとダメだよ。」
育子は言った。
「俊さんにも見てもらいたいですよ。」
久美子は言った。
「成人式が終わる頃に高村さんに実家の傍まで来てもらえばいいよ。」
育子はしっかり頭を働かせて言った。
「それはいいアイディアですね。」
久美子は言った。少し肌寒い夜である。冬の夜は時間が長いが感覚的には短く感じる時がある。今の久美子がまさにそれである。少しずつ春に向かう冬の夜であった。

 俊之は朝の日差しを浴びて空気を吸い込んでいた。俊之はマンションの出口まで来ると少しだけ緊張した。今日は総武総武企画へ初出勤である。俊之でなくても多少は緊張感を覚えるものだ。俊之はマンションの外に出て駅へ向かって歩こうとした。
「高村さん。」
運転手の田中は俊之に言った。俊之は田中を見た。
「田中さん。」
俊之が言うと
「お迎えに上がりました。」
田中は俊之に深々と頭を下げて言った。
「今日からよろしくお願い致します。」
俊之は田中に言った。
「こちらこそよろしくお願い致します。」
田中は言った。
「少し寒いね。」
俊之は優しく言った。
「こちらへどうぞ。」
田中は近くに止めてある社用車を見て言った。
「ありがとう。」
俊之は言った。俊之は田中に促されて社用車に乗った。田中は俊之が乗るの確認すると社用車は静かに動き出した。

 俊之を乗せた社用車は総武グループの司令塔である総武企画本社ビルに到着した。
「到着しました。」
田中が言うと
「ありがとう。」
俊之は言った。田中がドアを開けて俊之は外に出た。会社には歩いて出勤していた俊之にとって多少の違和感があるのは仕方がない。呼吸を整えて田中が案内する方向を見ると30歳前後の黒縁の眼鏡をかけてスーツを着こなした女性社員が立っていた。その女性社員をひと目見た俊之は頭脳明晰な社長秘書であると直感した。
「おはようございます。」
女性社員は言った。俊之の横に女性社員は素早く近づいて来た。
「おはようございます。」
俊之が言うと
「今日から秘書として高村さんをサポートさせていただく川嶋陽子です。」
川嶋陽子ははっきりとした口調で言った。
「高村俊之です。」
俊之は緊張を意識しながら言った。

 久美子はキャンパスを歩いていた。いつもなら寒さで身体が縮むような思いをするのだが今日の久美子は違っていた。
「おはよう。」
純子は後ろから久美子に言った。久美子は純子が追いついてくるまでのわずかな時間で心地よい空気を吸った。
「おはよう。」
久美子は言った。久美子は今日一日楽しく過ごせる予感がして幸福な気持ちになっていた。
「今日の講義は苦手だから嫌な気分だよ。」
純子はため息混じりに言った。
「大丈夫よ。」
久美子は短く言った。
「テストでも悪い点を取りそうな予感がする。」
純子が言うと
「私があとで教えてあげるよ。」
久美子は言った。大川教授の学科は久美子の得意分野である。

「今日から少しずつ力を発揮してくれればいいからね。」
広い社長室で正樹は俊之に言った。
「早く慣れて成果が出せるようにしたいと思います。」
俊之が言うと
「高村さんならすぐにみんなと親しくなるわよ。」
横にいた春香は言った。春香は俊之を信頼していた。
「当面は三友商事との提携交渉と総武鉄道の延長計画に携わってください。」
正樹は言った。
「はい。」
俊之が言うと
「少しずつ無理をしないで引き継いでください。」
正樹は言った。
「はい。」
俊之が言うと
「正式な社長就任は株主総会後の7月からになるからね。」
正樹は言った。
「半年間はしっかりと引き継ぎ事項を把握しようと思います。」
俊之が言うと
「今は次期社長の立場だと理解してください。」
正樹は言った
「僕も余裕があると仕事に反映できると思います。」
俊之が言うと
「中途半端な立場で申し訳ないと思っています。」
正樹は言った。
「僕は生え抜きではないですからその方が社員のみなさんも納得すると思います。」
俊之が言うと
「無理をしないでね。」
春香は言った。
「すべては川嶋くんがサポートしてくれるから大丈夫だよ。」
正樹は優しく俊之を見て言った。

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