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真夜中、幽霊、シーツ、七階コミュの弟

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弟

可愛い弟。ずっとそう思っていた。本当は性を棄てたがっていたなんて、知らなかった。知ろうとしなかっただけかもしれない。今弟は女として、私の横にいる。
「女になる前ね、男として、一度だけセックスをしてみようと思ったんだ。最初で最後だしね。友人に頼んで、相手をしてもらった。でも駄目だった。吐いてしまった。男として本当に機能してないんだなって思い知ったよ。」
プールの更衣室。私たちは姉弟のはずなのに同じ更衣室にいる。二年前、突然いなくなった弟。そして突然現れた弟。弟は現れるなりプールに行こうと言った。私たちはもう浮かれてプールに行く年じゃない。でも何故か言われるがまま地元の施設に一緒に来て、そして弟は当たり前のように女性サイドに着いてきた。
「まだ、お姉ちゃんの前だと僕って言っちゃうな。」弟は髪を揺らし照れたように笑う。元々可愛らしい顔だ。髪が伸びればもっと女性らしくなるだろう。
「叔父さんが初恋のひとだったんだ。」
まだ幼い時、大人たちが宴会をしている中、つまらないなあと思いながら叔父の隣に座っていた。親戚のひとりが騒ぎだす。「料理にハチが入っているぞ!」「店の責任者は」「とんでもない侮辱だ」酒も入り頭に血が上っている大人たちを制したのは叔父だった。「ハチなんて、末広がりで良いじゃないか貴君」
手術後、初めて女としてのセックスは叔父さんが良かった。でも亡くなっていたんだね。二年の間にいろいろ変わっちゃったんだなあ。
二年。そりゃ変わるわよと思う。私は二十八になり娘は三歳になった。最近腹回りに付いた肉が気になって仕様がない。昔は何を食べても太らなかったのに。
現れた弟はまだ男性としての骨ぼねしさこそ残るものの、立派な女性の身体をしている。美しい。身内でさえそう思う。
「女のひとになるまで戻らないって決めてたの。心配かけちゃってごめんね。」
弟は微笑んだ。私は何故だか、どうしようもなく泣けてきた。

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