ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

真夜中、幽霊、シーツ、七階コミュのなつの、さつじんしゃ

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 

子供の頭を砕きたい、妊婦の腹を殴りたい、老人を思い切り突き飛ばしたい。誰かの、限りなく大事ないのちを奪いたいと僕は常々思っていた。なので夏期休暇に入ると町に出ては、よさそうな人物を漁っていた。
別に、此の世に腹をたてているだとかそんな大層な理由は無く、只、目の前で誰かのいのちが消える瞬間を見たかったのだ。いのちとは目に見えないというのに、確かに在り、そしてほんの些細な事で失えてしまう。其処に美しさを感じていた。

いつも通りふらふらしていて、なんとなく目についた公園に入った。 大した遊具も無く、子供もいない。ブランコに腰掛け、公園の前の道を通り過ぎる人々を眺める。散歩をしている老人や、日傘を射した綺麗な女性。同級生等は、隣の教室の○○さんがどうだとか、社会学の女教師からいい香りがするだとか、そんな頭の悪い会話ばかりしている。一度、そんなことを考えている暇があったら勉学に勤しんではどうかと遠回しに言った結果、袋叩きに遭った。

ふと目をやると、道ばたで野良猫が蝉をばりばりと食べている。その日、僕はその猫を連れて帰り、頭部を切断した。


次の日も、同じ公園の同じブランコに腰掛け、よさそうな人物を物色していた。


「お兄さん、」
突然の声に振り向くと、生成のワンピースを着た少女が立っている。
「お兄さん、何しているの。公園は子供が遊ぶ場所だわ。」
「十五歳も社会的には立派な子供だよ。」
僕のこういう言い回しを、同級生等は好かなかった。何しろ僕は頭が良かった。十歳の時には自覚していた。中等部の頃には、大学生がやるような計算式を解いてみせた。両親は僕が誇りだ。
少女は目を細めて「それもそうね。」と言った。
「ねえ、暇ならお相手して頂戴。」
黙っていると少女は、「喉が渇いたわ」とすり寄ってくる。結局、僕は少女を連れて喫茶店に入った。




「メロンソーダ。」
向かいに座った少女は遠慮無しに注文する。
「僕は紅茶をお願いします。」
ウエイトレスが去った後、少女はくっく、と笑った。鼻につく厭な笑い方だ。
「お願いします、ですって。思ってもない癖に。」
僕が応えないでも、少女は続ける。
「お兄さんはひとを殺したいのよね。分かるわ。そういう顔しているもの。」
「何の事だい。君、病院か何かに掛かっているのかな。」
「ほら、今、わたしに決めた。お兄さんはわたしを殺す。今日中に。何処かに連れて行って、わたしを殺すわ。」
少女は組んだ指越しにじっと僕を見ている。飲み物が運ばれてきた。






「僕は君みたいな、物分かりの良い子はとても好きだよ。」
少女はその後ずっと黙っていて、メロンソーダを飲み終わると「行きましょう。」とだけ言い、僕の家に着くまで、一言も口をきかなかった。





「お兄さんはずいぶんと大きなお家に住んでいるのね。」
「此処らじゃ一番の学校に通わせて貰っている。両親とも働いているんだ。夜まで帰ってこない。」
「なら安心だわ。」
少女は皮肉で無く、ごく普通にそう言った。鍵を開けて入る前に僕は振り向いて訊ねる。

「君、名前は。」
「もう、知らなくてもいい事よ。」
少女は無表情だった。恐怖や悲しみの類を、生まれた時から持っていないような、そんな目だった。


コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

真夜中、幽霊、シーツ、七階 更新情報

真夜中、幽霊、シーツ、七階のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング