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ふれんどハウスinニューヨーク コミュの■ニューヨーク徒然草(5)■

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徒然なるままに日暮らす私が、徒然なるままに綴った”ひとり言”です。
徒然なる時にでも、テキトーに読んでいただけたら幸いです。

『いい加減』


まだミッドタウンの学校に通っていた頃、尋常ではない数のパトカーと救急車のサイレンが鳴り響き、学校の直ぐ近くまで来て止まった。偶然に現場を通って来たというクラスメートが興奮気味に、しかし青ざめて入って来た。近くの建築現場で人が死んだのだという。
 地震のないニューヨークでは、かなりの高層ビルが鉄骨ではなく、鉄筋をコンクリートで固め、一階ずつ積み重ねていく昔ながらの工法で建てられていた。そのコンクリートを乾くまで支える材木が、二十階ほどの高さから落下し、反対側の歩道を歩いていた若者を直撃、命を奪ったのであった。
 首のあたりに角材が落下したらしく、「首は千切れていなかったけど、倍くらいの長さに伸びていた」というクラスメートの話を、私は鳥肌を立てて聞いていた。

 それから暫くの間、私は建築現場を避けて歩いた。だが、この街の実態を把握するのに、そう長い時間はかからなかった。
 何のことはない、気が付いてみれば、ここでは同様の事故が引きも切らずに起きていたのだ。 作業用のエレベーターが落下したり、巨大なクレーンが倒壊したりで、死者を出す事故は枚挙にいとまがないほどだったのである。
 古い建物が多いこの街では、人が住んでいるアパートが突然崩壊し、一瞬にして瓦礫の山と化し、住人が生き埋めになってしまうことも珍しくはない。水道管やガス管なども古いままで、マンハッタンの道路は爆発したり陥没したりと忙しい。
 もう十数年前になるが、ブルックリンブリッジを支えるワイヤーの一本が切れ、折悪しく撮影に来ていた日本人カメラマンの頭上に落下、死に至らしめるという悲惨な事故もあった。
 なんともはや、恐ろしい街ではある。その恐ろしい街で、その後何十年と暮らすことになってしまったが、果たして、それがこの街の、いや、この国のいい加減さを嫌というほど味わわせてくれることになる。
 
 私は日本でサラリーマンの経験がなく、通学も高校までは徒歩、大学も世田谷から神奈川方面へと逆方向だったので、東京では通勤ラッシュを経験したことがなかった。そんな私が、サラリーマンと通勤ラッシュを、一挙にこのニューヨークで初体験することになった。
 そして、ニューヨークの地下鉄が、およそ日本では考えられない、とんでもないことをすることを知って仰天した。
 
 通勤時の混雑は何処も同じ。ニューヨークの地下鉄も例外ではなく、東京ほどではないにしろ、朝夕はかなり混雑する。混雑は仕方ないのだが、ニューヨークでは東京のように駅のホームに駅員がいないので、閉まりかけたドアを無理にこじ開けての駆け込み乗車が非常に多い。
 乗客を引きずったまま発車するわけにはいかず、ドアは何回も開閉を繰り返す。従って、連日大きな遅れが生じる。
 この遅れを取り戻すために、ニューヨークの地下鉄は信じられない行動に打って出る。
「遅れていますので、次の停車駅は42丁目になります。途中駅で下車予定の人は、ここでで降りてください」、という車掌の声が車内に響く。そして、その後は停車予定駅をすっ飛ばしてしまうのだ。つまり、各駅停車”が突如、”急行”に変身してしまうのである。
  ニューヨーカーはこれに慣れているので、「あーあ!」などと溜め息をつきながらも、降りて次の電車を待つ。
 だが、遅刻寸前の日などは愕然とする。何しろ、この電車を逃したら完全に遅刻という時に、突然途中で降ろされたり、目の前を止まる筈の電車が通り過ぎて行くのだ。成す術もなく呆然と見送るしかない。
 ことほど左様に、ここでは一時が万事、何もかもが大雑把で、いい加減なのである。
 
 アメリカの空港で入国審査を経験した人なら誰でも思い当たるかもしれないが、あれは担当した審査官の、その日、その時の気分次第である。運悪く意地の悪い審査官に当たり、その審査官の虫の居所でも悪ければ、別室に連れ込まれて尋問、檻送ということにもなりかねない。
 実際、日本で永住権の審査に合格し、堂々と入国できるはずの知人が、ケネディー空港で手錠を掛けられ、拘束されたことがある。弁護士に連絡し事無きを得たが、危うく強制送還になるところだった。
 逆の例もある。この知人はアメリカの永住権を捨てて帰国、9年ほど日本で商売をしていたのだが倒産、イチかバチかの賭けで飛行機に乗り、アメリカに逃亡を試みた。そして、なんと、いとも簡単に再入国してしまったのだ。
 9年も留守にすれば、当然グリーンカード(永住権)の効力は自然消滅している。が、この知人は何のお咎めも無く入国できたばかりか、永住権の更新まで済ませてしまったのである。
 そして、彼は現在、家族四人を呼び寄せ、何の問題も無くアメリカで暮らしている。
 
 公の仕事に携わる人間がこうなのだから、民間レベルは言わずもがなである。
 デパートやスーパーはもちろん、役所関係や郵便局、銀行などに行っても、そこで働く人々の態度は横柄で、同僚との無駄話も甚だしく、あらぬ方向を見ながら客に対応する。長蛇の列などお構いなしで無駄話は続行、決して急いだり焦ったりはしない。文句でも言おうものなら睨みつけられ、一層粗雑に扱われるのがオチだ。
 従って、たった一つのささやかな用事のために、列に並んで待つこと30分、などということもしょっちゅうである。
 銀行がいい加減なのだからクレジットカードだって負けてはいない。
 知らぬ間に聞いたこともないプランに加入させられていたり、サインしていないものが契約済みにされ、謂れの無い借金を背負わされていたりする。そして、それが一回や二回では済まない。去年も、今年も、そして来年も‥‥果てしなく続く戦いなのである。
 電話や電気、ケーブルテレビなどの会社も然り。修理の予約などは平気ですっぽかす。謝罪は絶対に、無い。
 この、社会全体のいい加減さが、連日、さしたる罪の意識も無く繰り返されているのだ。日々の些細なことを含めれば、一年中、365日、一日欠かさず文句を言い続けていなければならないのである。 
 
 かつて、日本の自動車メーカーが、まだアメリカに工場を持っていない頃、他社に先駆けてドイツのメーカーが現地生産に踏み切った。結果、ドアがよく閉まらないなど、不具合満載のアメリカ製欠陥ドイツ車が続出したという。さもありなん。
 日本のメーカーにとって、この腐敗したアメリカ社会と堕落したアメリカ人に、どう対処するかが最大の課題だったようだ。
 そういえば、あの頃、逆に日本人の勤勉さを皮肉った、「ガン・ホー」というアメリカ映画があった。劇中の会社名は確か、「アッサン自動車」などという奇妙な名前だったと記憶している。どちらかというとドタバタ喜劇だったが、あれは日本人にとって、およそ笑えるようなものではなかった。
 
 著者の名前は忘れたが、航空関係の本にこんなことが書いてあった。
『設計図上は100%完璧で絶対に落ちるはずのないボーイングの旅客機が、何故、世界中であれほどまでに墜落してきたのか。理由は簡単である。他でもない、現場で働く人間達のいい加減さのせいなのである』
 正誤、賛否はさておき、この国で暮らしていると、この意見を素直に信じられようになる。

 余話だが、グリーンカード上、私は今、女性にされてしまっている。先の更新時に移民局が間違えたのである。訂正には、また相当な時間がかかるので、そのまま数回出入国をしたが問い詰められたことはない。
 これもまた、いい加減の成せる技であり、その恩恵(?)でもあるのか。

 私は今もまた、某大手銀行のクレジットカードと戦っている。聞いたこともない何とかクラブの年会費を不当に請求され続けているのだ。抗議し訂正されても、二ヵ月後には再び同じプランの請求が届く。そしてまた抗議、訂正。繰り返すこと五回、繋争一年、未だに終わらない。
 これが何十回目の戦いになるのか、多すぎてもう覚えていない。全く身に覚えの無いものに、何故これほどまでにエネルギーを費やさねばならないのか。
これはもう立派な詐欺行為であり、私の手には負えない。弁護士の仕事である。
 そして、多分、これがこの国を訴訟大国にした所以なのだろう。黙っていたら何をされるか分からない国なのだから。
 
  が、それにしても‥‥もう‥‥つ・か・れ・た‥‥


 

コメント(2)

小林さん
期待を裏切りませんね(笑
日本に暮らしている私としては実に楽しく読ませていただきました。
クレーンの事件、またあったんですってね。最悪だわ。前回は私が居るときですから、
ほんと多いのですね。こちらでもニュースでやってました。こういうことに繋がる「いい加減さ」は
どうにかならないものなのですかね・・・
そして最後の女性・・・・大丈夫なんですか??変更もまた大変なんでしょうけど。。。
次回も楽しみにしております。ご自愛くださいませ。
horiさん

コメント、ありがとうございます!
そうですよね。恐いですもんね。
この日は、全米では他にも二箇所(マイアミと、もう一箇所、確かシンシナチかどこか)で同様の事故があったそうです。

女性のほうは大丈夫だと思います。
ご想像の通り、訂正にまた時間がかかるし、完全にあちらのミスですから、次回の更新までこれで頑張ろうと思ってます。
でも、いつも古いほうのグリーンカードも携帯しています。

長いだけで、キョーレツな経験が無い僕です。そろそろ期待を裏切る頃だと思いますが、今一度、思い出をホジクリ出してみます。
horiさんも、お身体大切に。






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