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BDについてもっと知りたい!コミュの2009年度第5回BD研究会実施報告

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日時:2009年8月23日 日曜日 14時00分〜17時30分

場所:新宿区・東京日仏学院 301号室

参加者:ceenaさん、cu39さん、echoさん、Freddoさん、Gurihiruさん、アキタさん、うりぼうさん、ショードヴァル、スカポン太さん、菫子さん、せのつくさん、だれっクスさん、ぬゑさん、ハニーさん、璧(ぺき)さん、ベンズーさん、ユータさん、眠り恐竜さん、他コミュニティ不参加者13名(計32名、アルファベット順、続いて五十音順)

概要:
フランスのアニメーター/イラストレーター/BD作家のアルチュール・ド・パンス(Arthur de Pins)さん、フランスの出版社ソレイユ・プロデュクション(Soleil Productions)のオリヴィア・パピーニ(Olivia Papini)さん、それから当日急遽ご参加いただくことになりましたが、フランスの出版社レ・ジュマノイド・アソシエ(Les Humanoïdes Associés)のショーグン(Shogun)コレクション編集長ギヨーム・ドリソン(Guillaume Dorison)さん、以上の三人にお話をうかがいました(写真の右からアルチュールさん、オリヴィアさん、ギヨームさんです)。

14:00〜
アルチュール・ド・パンスさんのお話。自己紹介を兼ねて、現在のお仕事にいたるまでの経歴を話してくださいました。彼の最新のアニメーション作品「カニ革命」(La Révolution des crabes)を鑑賞し、その後、質疑という流れ。

お話しいただいたことをかいつまんでご紹介すると、
■アニメーションからキャリアをスタートし、イラストレーション、BDという順番で仕事の幅を広げていった。
■現在の頭の大きなキャラクターを作るようになったきっかけとして、ゲームの仕事がある。32ピクセル×32ピクセルの小さな画像の中にキャラクターを収める必要があった。
■ゲームの仕事を通じて獲得した画風で雑誌にイラストレーションを発表。徐々に仕事が増え、最終的にはBDを描くことに。セックスをテーマにしているが、かわいらしいユーモアな絵柄を用いており、伝統的なポルノグラフィックなBDとはかなりかけ離れている。かわいさという点で言うと、むしろ日本マンガやアニメに近い。
■技法的にはイラストレーターというソフトを使用。ペン・タブレットを用いて絵を描いている。マックではなくウィンドウズ。
■劇場用長編アニメーションの企画が始まったところ。2004年の「カニ革命」を長編にする予定。タイトルは『カニの歩み』(La Marche du crabe)になる予定。長編用のティーザーをこちらで見ることができます。
http://www.lamarcheducrabe-lefilm.com/
※長編アニメーションに合わせてBD版も作成予定とのこと。複数巻のシリーズになる予定で、第1巻が来年出るようです。なお、短編「カニ革命」の方はかつて「CARTOON NETWORK」を通じて日本でも配信されたことがあるとか。

以下、質疑を通じて出た話題も挙げておきます。誰が質問したか特に明記しませんが、ご了承ください。
■2009年4月にアールリュディック(Arludik)というギャラリーで「アミューズ・ブッシュ」(Amuse-Bouche)というエロティックなBDの合同展が行なわれ、アルチュールさんも出品した。アールリュディックのHPはこちら。
http://arludik.com/
『Amuse Bouche』Fluide Glacial-Audie, 2009という形で本にもなっています。
http://livre.fnac.com/a2605165/Collectif-Amuse-bouche?Mn=-1&Mu=-13&Ra=-1&To=0&Nu=3&Fr=0

■日本でも放映されている『びっくりマジック・ファミリー』にはキャラクター・デザインにのみ関わっているとのこと。各キャラクターにつき30ほどの習作をものしているそうです。

■アニメーション、イラストレーション、BD、それぞれの仕事の比重については、バランスよくこなしたいと考えているそうです。とりわけエロティックなイラストレーションは描き手があまり多くないそうで、すぐに仕事が増えてしまうので、控えめにしているとのこと。BDに関しては、現在進行中の『かわいい罪』(Péchés mignons)の後、子ども向けのモンスターが出てくるようなものも描きたいと考えているとか。

■『かわいい罪』は第3巻から女の子の視点で物語が語られていることが多いのですが、これは意図的にそうしているとのこと。後で聞いたところ、第1巻から登場している主人公の男の子がアルチュールという名で、第2巻の途中から登場する女の子の主人公はクララというそうです。物語の平板化を避けるために女性主人公を導入したそうですが、女性が描いた方がいいのではないかという判断からマイア・マゾレット(Maïa Mazaurette)という女性の原作者を迎えたとのこと。マイアさんはベルリン在住だそうで、基本ネットを使ってコンタクトしているとのこと。シナリオは箱書きの形式。マイアさんとは『アンチ・カーマスートラ』でも一緒に仕事をしていますが、こちらは先にマイアさんが文章を完成させ、アルチュールさんが後から絵を入れているそうです。

■『かわいい罪』には文庫本サイズの『小さなかわいい罪』(Les Petits Péchés mignons)という別ヴァージョンがあるのですが、これは既刊3巻を再編集し、テクストを加えたもので、グッズのような位置づけになっているそうです。レジ前で売り、気楽に買えるように、小さな版型になっているとのこと。実売数は大きなサイズの『かわいい罪』の方がずっと多い模様。1巻につきおよそ3万5千部と言っていました。

■フランスではエッセイ的なBDが増えてきているが、アルチュールさんの認識ではそれはここ5〜6年の傾向で、ネット上のブログBDがその火付け役になったのではないかとのこと。従来の物語BDでは展開できなかった個人的な話題を描きやすいのでは。エッセイ風のBDの増加に付随して女性ファンも増えたのではという問いには、むしろ少女マンガの影響が大きいかもということでした。なお、アルチュールさんのBDには女性ファンが多いか聞いたところ、主人公に応じて変わるそうで、男の子が主人公の時は女性ファンが多く、女の子が主人公の時は男性ファンが増えるそうです。

■使用しているソフトはイラストレーターだそうですが、手描きで作品を作るということは基本的にないそうです。ムッシュー・ゼッド(Monsieur Z)というイラストレーターと個人的に親交があるそうですが、イラストレーターを用いるようになったのは彼の作品を目にしたのがきっかけだそうです。
http://www.monsieurz.com/

■日本マンガおよびアニメの影響については、とりわけかわいいキャラクターの造形という点が大きいとのこと。日本アニメのSD(スーパー・ディフォルメ)が非常に新鮮だったそうで、『ハイスクール!奇面組』などを例に挙げてくれました。なお、高校時代セガの「マスター・システム」というゲーム機に夢中になっていたそうで、そのキャラクターの影響も強いかもとのことでした。

■BDには日本マンガやアニメに類するかわいさはないのかという問いに対して、そういうものはほぼないのではという返事が返ってきました。男性読者向けのもっと露骨なエロ路線ばかりなのではということでした。

■フランスのアニメーションは劇場用にしろ、テレビ・アニメにしろほとんど見ないとのことでした。『トータリー・スパイズ』のような作品についても知ってはいるけどぐらいな感じでした。

■例えばカイル・ベーカー(Kyle Baker)のような作家とか、あるいはベティ・ブープ(Betty Boop)のようなキャラクターとか、アメコミのマガジン・ストリップの影響はないのかという問いに対して、アメリカの影響はあまり意識していないとのことでした。基本的には日本とヨーロッパ。ワールド・ディズニーの影響はあるかもとのこと。

15:30〜
休憩。

コメント(6)

とりあえずアルチュールさんの話までです。続きは後日。
当日ご参加いただいたスカポン太さんのレポートです。
http://ppgcom.blog12.fc2.com/blog-entry-2949.html#cm
続きです。

16 :30〜
オリヴィア・パピーニさんのお話。
■5年前からソレイユのマンガ部門で働いている。ソレイユから出ているマンガのタイトルで人気があるものは、『ゼルダ』、『バトルロワイアル』など。子どもの頃からマンガ、アニメが好きで、18歳から日本語を勉強し始める。
■最初は日本の中経出版(?)で1年間働き、ヨーロッパのマーケットに関する作業に従事した。その後、ソレイユ社へ。日本マンガの著作権を購入し、フランス語版を作成するのが主な仕事。
■ソレイユ社で働くかたわら、日仏米のイラストレーターやマンガ家/BD作家、アニメーターの作品を作る手伝いもしている。日本マンガは20年ほど前から本格的にフランスに入り始め、今ではかなりかなり定着している。マンガ的な作品を作るフランス人作家も増えてきた。
■日本マンガとフランスのBDでは編集作業が異なるが、日本マンガを出版については定着したと言っていい状況で、安定したマーケットになっている。
■アルチュールさんの話の時に、フランスのBDには女性ファンが少ないという話があったが、ソレイユは少女マンガを積極的に出版していて、その割合はソレイユで出版しているマンガの65%を占めるまでになった。

以下、質疑を通じて出た話題です。
■一番売れるタイトルはどれくらい売れるのか?
『ゼルダの伝説』2、3万部。『バトルロワイアル』4万部。『ウォークラフト』2、3万部(ただし、描き手は韓国人作家)。日本マンガの翻訳については、全翻訳の10%のタイトルが市場の売上げ全体の90%を占める。その他のタイトルは平均5千部ぐらいでは。なお、ソレイユが翻訳している少女マンガは、例えば、『僕等がいた』、『Lovey Dovey』、『箱庭エンジェル』、『僕は妹に恋をする』など(『僕等がいた』の小畑有紀は今年「ジャパン・エクスポ」に招待され、サイン会は大盛況だった)。主要読者は15歳から30歳までの女性。よく売れるタイトルで1万部弱。他者の翻訳も含めて日本の少女マンガでよく売れているものは『NANA』と『フルーツバスケット』。最近のブームはヴァンパイヤものか。

■インターネットや見本市、フェスティヴァル、コンヴェンションなどいろんなところで作品を見つけ、年に一度日本に来て交渉。

■BLは翻訳紹介されているのか?
ソレイユが出しているものでそれらしいものは『ラヴレス』しかないのでは? 編集部の好み、戦略などもあるかも。男性向けエロマンガは翻訳されている。

■『僕は妹に恋をする』は10代のためのBLとでも言うべきもので、性描写が激しいのだが、フランスで出すに当たって、ある種の制限は行なっているのか?
ファンの期待が多かったので出版をしたが、メディアの批判が予想以上に強かった。カヴァーに大人向けと明記して販売している。違法と判断されかねない表現についてはカットを行なったり、修正を加えたりしている。法律があまり整備されていないために、出版社が自らの判断に基づき自主規制をしなければならない。
17 :00〜
ギヨーム・ドリソンさんのお話
■レ・ジュマノイド・アソシエの原作部門のディレクターを務める。同出版社は35年続いているBD出版社で、メビウスやエンキ・ビラルの本の出版でよく知られている。
■レ・ジュマノイド・アソシエは3年前まで日本のマンガをまったく出版していない。これはマンガに関心がないということではなく、レ・ジュマノイド・アソシエの出版方針で、版権の管理を一元化できるように基本的にオリジナルな出版物しか出さないからである。
■もともと原作者だったために作画家の知り合いが多く、BD的なものではなく、マンガなども含めた国際的なスタイルで描きたい作画家たちのニーズを感じ、新しいメディアを立ち上げる必要があった。そこで生まれたのが『ショーグン』(Shogun)というコレクションである。著者の国籍は多様で、フランス人は全体の10%のみ。
■これらの作家たちにとって、BDよりはるかに多いページ数、小さな版型、章立てしながら物語を進める方式などがマンガのスタイルの利点であった。特にマンガのコピーをしたいということではなく、語りの可能性を探求するというのが、このようなスタイルを採用した理由である。BDが映画に近いとすれば、マンガのスタイルはテレビ・ドラマに近い。BDは原作者にとってあまり自由がない。マンガのスタイルは長い物語を書く欲求を満たしてくれる。ただ、この二つは共存可能なものである。
■多様な国籍に属する作家たちの国際的な交流も魅力の一つ。異文化の接触が新しい表現を生む。
■ギヨームさんが原作を担当する『オメガ・コンプレックス』(Omega Complex)の紹介。
http://www.humano.com/album/35542
以下、質疑を通じて出た話題です。
■『ショーグン』って雑誌?
コレクションの名前。コレクションとは複数のタイトルの総体だが、その中心に雑誌もある。かつて少年向け、青年向け、少女向けと三種類の雑誌があったが、昨年10月頃にオンラインに以降し、現在は一種類の無料オンライン・マガジンが刊行されている。
http://www.humano.com/catalogue/albumList/nom/shogun/page/0
※「Shogun Mag Online」というのがオンライン・マガジンで、それぞれのタイトルをクリックしすると、左上に「LIRE l’ALBUM」という文字があるのですが、その下のリンクをクリックすると、リーダーが起動して中を読むことができます。
当初は日本のマンガ誌と同じように、読者が雑誌も単行本も買ってくれることを期待していたが、フランスでは雑誌を買う読者は単行本を買わないことが多く、雑誌と単行本がお互いが競合相手になってしまう。雑誌を無料のオンライン・マガジンにしてからは販促効果が上がっている。

■『ショーグン』誌についてもう少し詳しく。
少女向けの『ショーグン』誌は『Shogun Shojo(ショーグン・ショージョ)』ではなく、『Shogun Life(ショーグン・ライフ)』というタイトルだったが、それは少女マンガだけでなく、読者のの年齢層が上の女性マンガも含まれていたため。1号だけ出て廃刊したが、お試し版という性格が強かった。オンラインに移行しようというアイディアも出始めており、時期的にも継続するにはあまりよくなかった。少年向け、青年向けを分化したのは、さまざまな作品を紹介し、読者を開拓すると同時に、増えつつあった作品に発表の場を与えるという二つの目的があった。結果的には読者の自分の好みに対する愛着が強く、前者の目的は果たせなかった。やはり少年マンガの方が受けがいい。『ショーグン』誌は、日本マンガの版権が高いために購入することができないような国に翻訳されて評判を得ている。その場合、翻訳権の管理は出版社が行なっていて、特に作者に許諾を取るというようなことはしていない。著作権および収益は出版社と作者で半分に分割している。著者への支払いは原稿料という形ではなく、印税のアドヴァンスという形でなされる。オンライン・マガジンに掲載するばあいにはその分のプラス・アルファも。

■『オメガ・コンプレックス』について。
日本マンガと同じく右開きだが、これはたぶんに日本マンガを意識している。フランス人は日本マンガの開きに慣れており、特に問題は生じない。作者名が記されていないという誤解をしばしば受けるが、作画家の名前がジャンル名と同じShonen(ショーネン)で、これはHenson(ヘンソン)のアナグラムである。
ものすごく密度の高い回だったのですね
うかがえなくて残念でした
>キガリスープさん
そうなんですよ。三人それぞれにもっと詳しくお話をうかがいたかったくらいで、ちょっと勿体なかったですね。通訳してくれたFreddoさんはクタクタだったんじゃないでしょうか(笑)。

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