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BDについてもっと知りたい!コミュの2009年度第1回BD研究会実施報告

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日時:2009年2月22日 日曜日 14時00分〜17時00分

場所:新宿区・東京日仏学院 301号室

参加者: ceena さん、cu39さん、echo さん、Father Uさん、Freddo さん、Gurihiruさん、OEさん、takatakataさん、アキタさん、いけがわさん、キガリスープさん、アキタさん、韓リフさん、さえも。さん、シゲルさん、ショードヴァル、せのつくさん、仙の道さん、夏°さん、ぬゑさん、のさん、ぶた王子さん、璧(ぺき)さん、みっちぇるさん、みるくとおれんじさん、ユータさん、他(計39名、アルファベット順、続いて五十音順)

概要:
14:00〜
小田切博さんによる発表「英語圏のコミックスとネットの役割」。

本題に入る前の状況の整理
2008年現在、不況ということもあり、アメリカでは本の売上げが落ちている。しかし、コミックスに限れば、それほど下火になっていないというか、むしろ以前からの好調を維持している。2001年以降、マイナー・カルチャーだったものが一般化。日本の1970年代、単行本市場ができた頃と同じような状況。日本マンガ人気もこの好調の一要因とは言えそう。ただし、日本のマンガだけがそれを支えてきたわけではない。アメリカのコミックスはいくつかのコンテクストの並存からできていて、それぞれが一般に認められるようになったということ。

コミックスは一般カルチャー化したのではないか? 『ダークナイト』、『アイアンマン』、『300』など多くのコミックスが映画化し、しかもスーパーヒーローものに限らずジャンルが多様化。コミックスを原作にした文芸作品が登場したり、他ジャンルのライターが次々とコミックス業界に参入するなど、他カルチャーとの混交が見られる。また、2006年にホートンミフリン(Houghton Mifflin)の年次ベスト集『The Best American』叢書でComicsが創刊されたり、1990年代に『Raw(ロウ)』で活躍していたアート・スピーゲルマンがその後『New Yorker』のアートディレクターになったりと、コミックスの文芸化、保守本流化が起きている。

とりわけコミックスの文芸化をめぐってはアート・スピーゲルマンの役割が重要。オーソドックスであるところのコミックストリップと一種の実験であるアンダーグラウンド/オルタナティヴコミックスの交点のようなコミックスを『ロウ』で探求していたが、それが現在のグラフィックノヴェルにつながっている。

そもそもグラフィックノヴェルとは?
?文学的なコミックス
?本の出版形式。ハードカバー、ソフトカバーの単行本
?コミックスの貶下的なニュアンスに対する反動
?70年代頃から出ている挿絵+小説の出版物
以上、さまざまな意味で使われうる。

現在に至るまでのコミックスの歴史を確認しておくと、以下のようになる。
※単線的なものではなく、いくつもの分岐の繰り返し、様々なムーヴメントの間で相互影響が起こることがあることに注意。

■まず、エディトリアルイラストレーションの系譜上に『イエローキッド(Yellow Kid)』が登場、それ以降、カートゥーンとコマ表現に依存するコミックストリップが分岐
■1930年代、『ファニーズ・オン・パレード(Funnys on Parade)』が登場、以降コミックストリップからコミックブックが分岐
■1950年代のコミックコード以降、カウンターカルチャーの盛り上がりを背景にコミックブックからアンダーグラウンドコミックスが分岐
■アンダーグラウンドコミックスは当初、委託の形で、ヒッピーのたまり場であるヘッドショップなどで売られていたが、「73年の崩壊(Crash of ‘73)」以降、コミックショップ流通に乗るようになる(「73年の崩壊」とは1973年に起きたアンダーグラウンドコミックスの過剰供給のこと。販売者は返本のきかない売れない本を抱えなければならなかった)。コミックショップが登場したのは1950年代だと言われているが、80年代にダイレクトマーケットによるコミックショップ流通が本格的に確立。それ以降、アンダーグランドコミックスもストーリー・マンガを描くようになる。特に重要なのは、デイヴ・シム(Dave Sim)の『セレバス(Cerebus)』とケビン・イーストマン(Kevin Eastman)&ピーター・レアード(Peter Laird)の『ティーンエイジ・ミュータントニンジャタートルズ(Teenage Mutant Ninja Turtles)』。ここで、カウンターカルチャーではなく、ポップカルチャーとしての新たなアンダーグラウンドコミックスが成立した。

■『ティーンエイジ・ミュータントニンジャタートルズ』の二人の作者は別の文脈でもその後のコミックスの流れに影響を与えている。ピーター・レアードはゼリックファンド(Xeric Fund)というコミックスの自費出版を援助する基金を設立し、ケビン・イーストマンは、ナショナル・ランプーンが発行していた『ヘヴィメタル(Heavy Metal)』(フランスのSFマンガ誌『メタル・ユルラン(Metal Hurlant)』のアメリカ版)を1980年代に購入し、アメリカ式アート系コミックスの確立に寄与した。後のペイントコミックスや「エピックスコミックス(Epic Comics)」というマーヴルのレーベルにつながる流れを準備。また、『ヘヴィメタル』は、もともと『2000AD』や『ウォリアー(Warrior)』というイギリス国内のコミックス誌で活躍していたイギリスの作家たちをアメリカに紹介するきっかけとなり、彼らが後にDCの「ヴァーティゴ(Vertigo)」という大人向けのレーベルで活躍することになる。

■1991年、トッド・マクファーレン(Todd Mcfarlane)を中心とするマーヴルの人気作家が、作家の正当な権利を主張して、イメージコミックス(Image Comics)というアーティストの組合のようなものを設立。背景としては、1980年代後半のコミックス・ブームがある。1986年の『ウォッチメン(Watchmen)』、『ダークナイト(Dark Night)』、『マウス(Maus)』のヒットが既にその先触れだが、ダイレクトマーケットによるコミックショップ流通の普及でさらに推進される。しかし、当時のコミックス・ブームはコレクターズ・アイテムの販売に頼るものであり、コミックスは読書の対象ではなかった。1998年にマーヴルが倒産し、マーヴルから独立したイメージコミックスも分裂。コミックス・バブルが崩壊した。

■ただし、90年代の後半には、作画家ではなくコミックスラーターに対する関心が高まりつつあり、物語を読むための新たなコミックスに対する関心も見て取れる。それは、コミックショップにおける販売よりさらに一般読者に開かれた書店市場へのコミックスの進出と時を同じくしていた。ロバート・クラムやアート・スピーゲルマンを旗頭に洗練を続けてきたアンダーグラウンド/オルタナティヴコミックスの台頭も同じ時期である。

■一方で、1991年、いくつかのオルタナ系小出版社が集まり、「スモール・プレス・エキスポ」という合同イベントが開催された。このイベントからスモール・プレス・エキスポ世代とでも言うべき一群の作家が輩出。これらの作家が後のメインストリームとオルタナティヴコミックスを牽引。

■2001年9・11に際して大手出版社がチャリティー・コミックスを出版。コミックスの一般的な認知に貢献?

■これらの傾向と平行して、ドロウン・アンド・クォータリー(Drawn and Quarterly)やトップシェルフ(Top Shelf)が一般書店流通を推進。日本マンガの翻訳出版もこれらと同様に一般書店流通を推進。

本題
上記の複数の流れが一つの流れとして出る出口としてインターネットが機能しているのではないか?

アメリカのでは、「Live Journal」や「My Space」、「deviantART」といったSNSが活発に使われている。まず場があり、参加者が匿名で意見を交わす掲示板とは異なり、個人の存在まずありきというのがこれらのSNS。とりわけ、「deviantART」は画像を共有するSNS。ネット上で公開されるポートフォリオのようなもの。

2000年頃の『ポケモン』ブームとドットコム・バブル。コミックス、アニメーション志望の若者のアメリカ国内の仕事が減少し、彼らがウェブ業界に流れることで、デジタルを道具とする作家たちが叢生。これはあくまでコミックスを描く道具としてデジタルを使うと言うことであって、デジタルでしかできないような表現の探求ではない。

これらの作家の登場に関してまず重要なのが2004年にイメージ・コミックスから出版された『フライト(Flight)』。この作品以降、多くのアンソロジーが出版されるようになる。理論的な指導者としてのスコット・マクラウド(Scott McCloud)。
http://www.flightcomics.com/(公式ブログ)
http://en.wikipedia.org/wiki/Flight_comic

『ポップガン(Popgun)』
コミックスを音楽に見立てて、ミックステープを作るようにコミックスアンソロジーを編むというコンセプト。
http://hiddenrobot.com/POPGUN/(公式サイト)
http://en.wikipedia.org/wiki/Popgun_(comics)

『ミートハウス:SOS(MEATHAUS: S.O.S.)』
ゼリックファンド受賞作家たち中心のアンソロジー。
http://meathaus.com/(公式サイト)
http://en.wikipedia.org/wiki/Meathaus

『ザ・ベスト・アメリカン・コミックス(The Best american comics)』
2008年版:リンダ・バリー(Lynda Barry)編
http://bestamericancomics.com/2008/home.php
2007年版:クリス・ウェア(Chris Ware)編
http://bestamericancomics.com/2007/home.php
2006年版:ハーヴェイ・ピーカー(Harvey Pekar)編
http://bestamericancomics.com/2006/index.php

『ザ・マンモス・ブック・オブ・ベスト・ニュー・マンガ(The Mammoth book of best new manga)』
「マンガ」がクールなんだというノリ。実はコミックスでしかないものを「マンガ」と称して提示しているとのこと。
http://www.bestnewmanga.com/(公式サイト)

『リキッド・シティ(Liquid City)』
東南アジアの作家を中核に。世界のマンガを大きく東アジア/英米/ヨーロッパと分けた時に、その境界上にあるのが東南アジアのマンガ。
http://www.liquidcitizen.net/liquidcity/?file=kop1.php(公式サイト)

ウェブコミックスをどう考えるかということについて。デジタルという特性を前面に打ち出すことでウェブコミックス固有の表現というのも可能だが、それを目指すことで汎用性は失われてしまうのでは? 『フライト』以降のアメリカの新しい世代は、あくまでマンガを配信する手段としてウェブを用いている。

現在の問題点と今後の見通し
「マンガ(Manga)」という用語の恣意的な使用。Tokyo Popのマンガ・パイロット・プログラム(Manga Pilot Program)。DCのズーダコミックス(Zuda Comics)をモデルにした新人育成プログラム。契約書を公開しているが、著作者人格権の放棄を公然と要求するなど問題あり。低年齢の作者を不当に搾取しかねないこのようなシステムを相対化するようなものとしてのアート・スクールの存在。The Center For Cartoon StudiesやSavannah College of Art and Designなど。描き方だけでなく、出版の補助、自費出版の仕方まで視野に。ただ、時間が経つにつれて、現在の過渡的な状況は整理されるはず。殊更にマンガ・スタイルみたいなものを前面に出す必要がなくなるのでは?

15 :30〜
休憩

16 :00〜
質疑
※かなり端折ってます。
■トーキョー・ポップのマンガ・パイロット・プログラムの問題点が話題に挙がったが、具体的にはどういうことか? デメリットを認めた上で、異議申し立てのコストがかかることを予防していると考えれば、むしろメリットの方が大きいのでは?
□ビジネス的には特に問題もないのかもしれないが、なんでわざわざ著作者人格権の放棄なんてことを要求しているのか疑問。ビジネス・モデルが先にあり、クリエイティヴに重きを置いていないのでは? 一方で、コミックス産業が成長しているという見方も可能。

■商業的なウェブコミックスは特に韓国で進んでいるようだが、アメリカではどうか?
□『フライト』世代はウェブ関係の仕事をしていることが多く、ウェブ構築の際にコミックスを導入し、それに対してペイがあるというようなことは当然ある。スモールプレスエキスポ世代のコチョールカはサイトの過去ログ閲覧に課金をするというシステムを導入。出版社が運営する有料サイトもある。

■新人の自己アピールの場として近年ではネットが機能しているという話だったかと思うが、それ以前は?
□まずコミック・コンヴェンション。それ以外では、アメリカのコミックス出版社は作家の不足に困ると海外の作家を招聘するということをよくする。イメージ・コミックス設立時に多くの作家がマーヴルから抜けたが、その時、マーヴルは南米の作家を多く登用した。ウォーレンコミックスなどは意図的にスカウティングをし、フィリピンの作家を招聘。

■日本の場合と比較した時に、WEB上で活躍している作家があまりビジネスに結びついていないような印象を受けるが、日米に何か違いがあるのか?
□それほどの違いはないような気がするが、コミケなどに典型的に示されているように、日本の場合はそれぞれの活動が他に広がらず完結してしまう傾向がある。いろいろな意味でつながりがなく、一般的なビジネスになりにくい。アメリカでは、ネットがコミュニケーションの単一のプラットフォームとして機能している印象がある。mixiとMy Spaceの違いに留意。後者のコミュニティはオープンなコンテンツである。

■マンガ・パイロット・プログラムについての補足。ズーダは本を出すことを明記していたが、パイロット・プログラムにはそれが欠けている。マルチコンテンツに使えるキャラクターがほしいだけで、言わばキャラクター・ファーム。

■『ザ・マンモス・ブック・オブ・ベスト・ニュー・マンガ』について、「マンガ」でないのに「マンガ」を名乗っているという意見があったが、中を見る限りでは十分マンガ的では?
□マンガ的な作品ももちろん含まれているが、非マンガをマンガと呼ぼうとしている乱暴な部分がある。とりわけ参考文献として紹介されているものはまったくマンガ的ではない。とは言え、これは過渡的な現象。

■人格権は放棄不可なもので、マンガ・パイロット・プログラムのそれを放棄しろという呼びかけは意味不明では?
□具体的にそこで放棄を提唱されているのは、同一性保持権と署名権。まずアメリカの著作権をきちんと検討する必要がある。

■オルタナティヴコミックスを話題にする時に保守本流という話があったが、保守的、革新的と言う場合の指標はどこに?
□オーソライズされたものが保守。オルタナティヴコミックスが保守なのは、それが文芸からオーソライズされているから。価値的な概念ではない。

17:30〜
終了。片付け。

コメント(1)

いつも報告ありがとうございます。
何故か第三日曜に限って用が重なり、参加できず残念なサイクルになってしまっております。
会の内容を伺い知ることができる報告を毎回楽しみにしております。
お忙しい中、大変かと思いますが、どうぞ宜しくお願いします。
感謝まで。

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